7日にキューバの優勝で閉幕したパナソニック第5回世界大学野球選手権大会。地元開催で悲願の初優勝を狙った日本代表は地元開催ながら王者・米国に準決勝で敗れ、3位に終わった。だが、過去の日本代表メンバーをみても和田毅(当時早大、現福岡ソフトバンク)、村田修一(当時日大、現横浜)など、この大会に出場した多くの選手がプロ入りを果たし、活躍している。未来のスター候補生がきらめいた今大会の代表の中から気になった選手をピックアップしてみたい。
(写真:大学球界の顔、斎藤以外にも素材は豊富だ)
 まず日本のエースとして予選ラウンドの初戦(韓国戦)と準決勝(米国戦)に先発した斎藤佑樹(早大)には触れないわけにいかないだろう。1年時から日の丸のユニホームを着続けてきた斎藤だが、今春の六大学リーグ戦では自己最低の2勝止まり。伸び悩みが指摘されている。代表の指揮を執った榎本保監督(近大)は大会前、「(前回大会の)2年前には近づいているが、どうかなと思う」と漏らしていた。確かに大学1、2年の頃と比較しても全体的に直球のキレがなく相手をねじ伏せる感はない。

 しかし、それでも今大会は韓国打線を6回無失点に封じ、敗れた米国戦でも初回の満塁弾以降は外野へのヒットを1本も許さなかった。その投球術は大学入学当初よりも着実にレベルアップしている。決して完璧な内容でなくとも、試合をつくる技術はプロには必要不可欠。そう考えると実力面だけでもドラフト1位指名する価値のある選手だろう。だが、総合力で勝負するタイプだけに制球を乱せば、米国戦のような大量失点も覚悟しなくてはいけない。ドラフトでは複数球団による競合が確実視されているが、少なくともプロのリリーフタイプではない。今後、指名を迷うところも出てくるのではないか。

 むしろ斎藤より今大会でさらに株をあげたのが同じく早大の大石達也(写真)だろう。代表のクローザーとして4試合に登板し、打者14人と対戦してなんと10個の三振を奪った。特に準決勝の米国戦では、三者連続の空振り三振。しかもすべて決め球は直球だった。狙っていても打てないストレートの伸びは魅力的だ。ここにフォーク、スライダーなどの変化球もあるのだから、連打は容易ではない。彼は斎藤とは対照的にプロでリリーフ、クローザーを務められる存在だ。既に阪神などが1位指名を予定しているが、終盤の継投に不安のあるチームは是が非でも欲しい右腕だろう。

 球の速さだけなら大石に引けをとっていなかったのは3年生の菅野智之だ。予選ラウンドではキューバ相手に神宮球場で大学生最速タイの157キロをマーク。先発した準々決勝の台湾戦でも150キロのボールを連発した。ただ、大石との違いはせっかくの豪速球もコースが甘く入って痛打を浴びてしまうところだろう。キューバ戦でも2本塁打を浴び、台湾戦でも連打を浴びる場面があった。「力勝負に行くと、真ん中にストレートが甘くなる」。本人も課題は自覚している。セットポジションで明らかに球威が落ちる点も改善の余地がある。また、中国戦で先発した右腕の野村祐輔(明大)、3位決定戦で先発した左腕の藤岡貴裕(東洋大)はいずれも3年生。彼らが来秋のドラフトまでにどこまで進化するか楽しみだ。

 野手では主将を務めた東海大の伊志嶺翔大(写真)が光った。トップバッターを務めた準々決勝の台湾戦では5打数5安打。すべてがセンターから右方向へのヒットだった。しかも単に流すのではなく、しっかり振り切ったライトへの長打もあった。高い打撃技術がうかがえる内容だ。加えて俊足、好守。「彼が塁に出ればいろんな野球ができる」と榎本監督も全幅の信頼を寄せていた。身長178センチと決して大きな体ではないが、外野手として1年目から活躍した千葉ロッテの荻野貴司とプレースタイルが似ている。野手が最優先の補強ポイントなら、彼を1位で一本釣りする手もありだ。

 今回の野手陣には各学年に逸材がそろっていた。3年では代表の4番を任された伊藤隼太(慶大)はパンチ力のある好打者だ。この大会では2試合連続を含むチームトップの3本塁打を放った。慶大の野手では巨人の高橋由伸以来のスラッガーとの評価もある。また同じくクリーンナップを任された鈴木大地(東洋大)もキューバ戦でスライダーをしっかりためてライトスタンドに運んだ。こちらも来秋のドラフト上位候補だろう。

 2年生では立教大の松本幸一郎(写真)に今後も注目したい。今大会は林崎遼(東洋大)の代役として代表入りしたものの、決勝トーナメントでは5番も任された。榎本監督が「将来性をものすごく感じる」と語るように、スイングはシャープで上級生にも見劣りしない。1年時から法大でショートのレギュラーを奪った多木裕史も打撃には非凡なものがある。大会では本職のショートではなく一塁を守る形になったものの、内野守備も悪くない。順調に伸びれば大型内野手として、多くの球団が獲得に走るはずだ。

(石田洋之)