「ため~いきの出るような~、あな~たのく~ちづけに……」
 ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」。取材中、この名曲を突如として口ずさみ始めた人がいます。何を隠そう我らが編集長です。

 あるアスリートにインタビュー中、ひょんなことからアイドルの話になり、編集長が「僕たちの時代はね」と持ち出したのがザ・ピーナッツでした。

「知ってる? 恋のバカンスって?」
 なぜかノリノリの編集長。メモ用のペンをマイク代わりに歌い出してしまいました。取材相手が「その曲、知っています」と楽しそうに聞いているのを見て、どうやら編集長のサービス精神に火がついてしまったようです。

「じゃあ、園まりは知っているかな? 夢は夜ひらく~」
「それって藤圭子じゃないんですか? 宇多田ヒカルのお母さんですよね」

 そう僕が横からツッコミを入れると、編集長は「違うよ」と言いたげに、ペンならぬマイクを横に振りながら語ります。

「園まりが先にヒットさせたんだよ。その後で藤圭子が“圭子の夢は夜開く”ってタイトルでレコードを出したんだな。藤圭子も良かったな~」

 80年代生まれの僕も、取材相手のアスリートも、若干、話についていけないレベルです……。でも編集長は構わず、続けます。

「青江三奈はどう? チャラチャ、チャララチャチャ(伊勢佐木町ブルースのイントロ)、アッ、ア~ン」
「アハハハ。聞いたことあります」

「でも、僕が個人的に好きなのは“池袋の夜”なんだな~。夜の池袋~。僕はこの歌を聞いて、上京したら真っ先に池袋に行きたいと思ったんだよなぁ」
「そ、そうなんですか……」
 
 暴走し始めた編集長はもう誰にも止められません。ここからはしばらくオンステージ状態です。

「男性歌手で好きだったのは“おミズ”こと水原弘。黒~い花びら~。静かに~散った。でも、お酒の飲み過ぎもあって借金を抱えて、それからしばらくは不遇の時代を過ごしたんだよ。でもね、この歌で復活したんだよ」
 そう言うとペンを握って、スッと立ち上がります。
「けれども、ようやく、虹を見た~、あなたの、ひとみに、虹を見た~、君こそ~命、君こ~そ命、わが~命~」

 1967年のヒット曲「君こそわが命」。編集長は一節を歌いきると、当時を懐かしむようにつぶやきました。
「いや~、おふくろが大好きでね。テレビの前で一緒に拍手したんだよね~」
 

 語りながら歌い、歌いながら語る……まるで松山千春のような(?)編集長の姿には自然と拍手が生まれました。

 こうやって時々、人前でも歌声を披露される編集長ですが、講演やテレビでのキレ味鋭いトークとは異なり、歌は甘く、ソフトムード。今後は歌って語れる“シンガージャーナリスト”を目指すのもいいかもしれません。

 デビュー曲は“恋のバカンス”にひっかけて、“鯉のブランク”。歌詞も勝手に考えました。
「ため~いきの出るような~、カ~プの攻撃に、甘い球も打てない、鯉のブランク~」

 長い間、優勝から見放されたカープファンの哀愁を歌った1曲で、まずはスポーツ関係から火をつけてヒットを狙えれば……。

(これを読んだ編集長から即座に「そんなくだらない歌詞考えている暇があったら仕事しろ!」とキツく叱られました(苦笑)……スタッフI)


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