4日、キリンチャレンジカップが横浜・日産スタジアムで行なわれ、日本代表はパラグアイ代表と対戦した。日本は4−2−3−1の布陣で試合に臨むも、前半は得点なく0対0で折り返す。後半に入ると日本のパスが回り始め、19分に中村憲剛(川崎F)のスルーパスを受けた香川真司(ドルトムント)が右足でシュートを流し込み先制点をあげる。その後はお互いチャンスを作るもののスコアは動かず、1対0で日本が勝利した。

 ホームゲームで南アW杯の雪辱を果たす(日産ス)
日本代表 1−0 パラグアイ代表
【得点】
[日] 香川真司(64分)
 南アフリカW杯から2カ月、アルベルト・ザッケローニ監督の就任が決まった日本代表はW杯決勝トーナメント1回戦でPK戦の末敗れたパラグアイと対戦した。今日と7日のグアテマラ戦は就労ビザ申請の関係で新監督がベンチで指揮を執ることは叶わず、原博実強化担当技術委員長が代行監督としてベンチに入る。

 ザッケローニ監督はこの2試合について、原代行監督に指揮を一任しており戦術、フォーメーションについても指示を出していない。原代行監督は岡田武史前監督がW杯前まで採用してきた4−2−3−1の布陣で試合に臨んだ。長谷部誠(ヴォルフスブルク)や遠藤保仁(G大阪)と負傷者続出の中盤では2ボランチで中村と細貝萌(浦和)が先発出場し、W杯では1トップに入った本田圭佑(CSKAモスクワ)がトップ下に、ワントップには森本貴幸(カターニャ)が入った。

 日本は前半からボランチの中村にボールを集め攻撃を組み立てる。ほとんどのパスが彼を経由して前線に送られた。ゴール前で得点の可能性を感じさせたのは香川の動きだ。35分には本田が中盤でパスを受けると、右サイドに開いた森本へ大きな展開。森本がヘッドでゴール前に落とすと、そこへ走りこんだのは香川だった。シュート体勢に入るも、ここはパラグアイDFがクリアしゴールならず。しかし、積極的な飛び出しで度々パラグアイゴールへと迫っていく。

 後半に入ると中盤にスペースが出来始め、互いに前半より多くチャンスを作る。開始早々の1分、パラグアイはPA付近のルーカス・バリオス(ドルトムント)へくさびのパスを出すと、落としたボールに走りこんだホナタン・サンタナ(カイセリスポル)が右足で強烈なシュートを放つ。ボールはわずかにゴール右に逸れるが、いきなりの先制攻撃を仕掛けた。

 対して日本も3分、本田がPA内に侵入し香川へラストパス。ここはシュートまで至らなかったものの、6万を超えるサポーターが集まったスタンドを一気に沸かせる。9分にもピッチ中央から香川が大きな展開で右サイドを駆け上がった内田篤人(シャルケ04)へスルーパスを出す。前半は全く見られなかった内田のオーバーラップが攻撃にリズムをつけた。

 先制点が生まれたのは19分だ。両サイドで数本のパスを通しながら機をうかがう日本は、ピッチ中央にポジションをとる中村へボールを戻す。ゆったりとした動きで間合いをとりタイミングを見計らった中村は、パラグアイDFラインの裏へ走りこむ香川へと絶妙のタイミングでスルーパスを通す。後ろからの難しいボールを香川が右足でうまくトラップし、ゴール前へ持ち込みシュート。W杯でも日本の前に立ちはだかったGKフスト・ビジャール(バリャドリード)の左を抜け、シュートはパラグアイゴールに突き刺さった。中村のパスを最高のポジションに香川がトラップした時点でこの得点は決まったようなものだった。見事なホットラインで日本が先制に成功する。

 日本に絶体絶命のピンチが訪れたのは得点の3分後。カウンターでゴール前に抜け出したバリオスがキーパーと1対1になる。PA内でシュートを狙ったバリオスの前に立ちはだかった川島永嗣(リールセ)は、ここで冷静な動きをみせシュートを弾き返しゴールは許さない。W杯で好セーブを連発した川島が横浜でも素晴らしいプレーを披露し、同点のピンチを脱した。

 その後もパラグアイが必死に同点ゴールを狙うものの、日本が堅い守りで因縁の相手を完封し1対0ままタイムアップの笛が鳴った。W杯では延長戦を含み120分でスコアレスだった両者の戦いは、香川のファインゴールで1点差の決着をみた。

 新生日本の攻撃を司ったのは中村だった。「斜めのポジションで横並びにならないように」意識したボランチの細貝とのコンビもよく、トップ下に入った本田とも絶妙の距離をとりながら本田のよさを引き出すことを心がけていた。先制ゴールを奪った香川にも「常にねらっておけ」と言葉をかけ、香川を生かすパスを供給し続けた。長谷部、遠藤というW杯の先発メンバーが離脱している現在、若い選手が多い中盤の精神的な支柱としても大きな役割を果たしている。

「(パラグアイは)前半から(前へ)来ていたから、0対0で折り返しても不安はなかった。後半は思い通り(運動量が)落ちたから」と冷静に試合の流れを読みきった中村。「欧州のことは知っている。できるだけ日本国内を見たい」と話すザッケローニへ大きなアピールになったはずだ。7日のグアテマラ戦でもピッチの中央に君臨する。中村俊輔(横浜F・マリノス)が代表引退を表明し、代表では陰に隠れがちだったもうひとりの“中村”はザックジャパンの中核を担うことになりそうだ。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
中澤佑二
栗原勇蔵
→岩政大樹(68分)
長友佑都
内田篤人
→槙野智章(89分)
MF
中村憲剛
細貝萌
松井大輔
→藤本淳吾(64分)
香川真司
→駒野友一(90分)
本田圭佑
→橋本英郎(78分)
FW
森本貴幸
→岡崎慎司(60分)