21日(現地時間)、アジアカップ2011準々決勝がカタール・ドーハで行われ、日本はカタールと対戦した。前半12分に先制されたものの、28分に香川真司(ドルトムント)のゴールで同点に追いつく。後半に入ると、吉田麻也(VVVフェンロ)がこの日2枚目のイエローカードを受け10人での戦いを余儀なくされ、さらにこのプレーで与えたフリーキックを直接決められ、カタールに勝ち越しを許す。一人少ない日本は苦しい時間帯が続いたが、25分に香川がこの日2点目を決め、再び試合を振り出しに戻す。このまま延長戦に突入するかと思われた後半45分、長谷部誠(ヴォルフスブルク)からのパスを受けた香川が抜け出し、一旦はDFにつぶされたもののそこへ伊野波雅彦(鹿島)がつめてシュートをゴールへ流し込んだ。日本はロスタイム4分でもカタールの猛攻を凌ぎきり、3−2で準決勝進出を決めた。

 10人になってから2ゴール 4大会連続の4強入り(アル・ガラファ)
日本 3−2 カタール
【得点】
[日] 香川真司(28分、70分)、伊野波雅彦(90分)
[カ] セバスチャン・スリヤ(12分)、ファビオ・セザール(62分)
 グループBを首位で通過した日本は、グループA2位の地元カタールと対戦した。カタールの監督は日本のサッカーファンにもお馴染みのブルーノ・メツ。同国を率いて3年目となるフランス人は、日本の攻守の起点を抑える指示を出していた。前半立ち上がりから遠藤保仁(G大阪)、長谷部の二人に高い位置からプレッシャーをかけ攻撃の組み立てを阻止する。激しいプレスに苦しんだ日本がはじめてのシュートを放ったのは前半25分。それまでは、全くと言っていいほど日本は仕事をさせてもらえなかった。

 逆に、地元の大声援に後押しされたカタールは素早い攻撃で日本を翻弄する。彼らの攻めが結実したのは前半12分。オフサイドラインぎりぎりのところから抜け出したセバスチャン・スリヤ(カタールSC)がゴール前に攻め上がり、守備に入った吉田を冷静に切り返してかわすと左足で強烈なシュート。ボールは川島永嗣(リールセ)の脇を抜け、先制点をあげた。

 一方、カタールにほぼ完璧に抑えこまれていた日本は、なかなかボールの触れなかった香川と本田圭佑(CSKAモスクワ)のコンビで活路を見出した。28分、中盤に下がった香川がボールを受け中央にはたくと、本田がダイレクトで右サイドへ浮き玉のパス。そこへ走りこんだ岡崎慎司(清水)がサウジアラビア戦の先制弾と同じようにGKをかわすループシュートを狙う。ボールはそのままゴールへ吸い込まれそうだったが、香川がそのボールに体ごとぶつかっていき、泥臭いゴールで同点とする。今大会、期待されながらゴールを生むことができなかった香川の初ゴールで日本が一気に主導権を握り、前半の残り時間は試合を完全に支配してハーフタイムに入った。

 前半を1−1で折り返した日本が、一気に追いつめられたのは後半16分だった。自陣のペナルティエリア付近で吉田がユセフ・アーメド(アル・サッド)と交錯すると、主審は吉田にこの日2枚目のイエローカードを提示し、吉田は退場処分となる。完全アウェーの中で一人少なくなっただけでも厳しい状況だったが、さらにこのピンチでファビオ・セザール(アル・ラーヤン)が放ったフリーキックが直接ゴールへと吸い込まれていった。再びリードを許したザックジャパンは絶体絶命の状況に追い込まれてしまう。

 吉田の退場を受け、アルベルト・ザッケローニ監督は最前線の前田遼一(磐田)をベンチに下げ、最終ラインに岩政大樹(鹿島)を投入する。前田のいなくなった前線では岡崎や本田らが果敢に相手陣内へ入り、ゴールへと迫った。10人の戦いでも日本は攻めの形になると人数をかけてカタール陣内へと進入し、少しずつチャンスを作っていった。

 そして迎えた25分。ピッチ中央付近の遠藤が本田へとパスを送る。ここでも本田はダイレクトで前線の岡崎へボールを預ける。DFに囲まれながらも粘り強くボールをキープした岡崎の横を上がってきたのは香川だった。岡崎が左サイドへ流したボールを香川がうまくコントロールしGKと1対1になると、最後は相手の動きを冷静にみて左足でやや浮かせたシュートを放ち再び同点に追いつく。この日2点目のシーンは、所属するドルトムントで香川がみせる得意の形だった。これまでの不出来の憂さを晴らすかのような香川の2ゴールで試合を2−2とし、満員のサポーターで埋まるスタジアムを沈黙させた。

 その後は数的優位なカタールが猛攻にでて、幾度となく日本ゴールへと迫った。38分、39分、40分と立て続けに決定機を与えたものの、最後は川島を中心とした守備陣が踏ん張りゴールを割らせない。

 そして、日本に歓喜の時が訪れたのはロスタイム突入間際の45分だった。長谷部からグラウンダーの低いボールが最前線に供給されると、香川がうまくトラップしDFラインの裏へ抜け出す。カタールDFも必死の守備をみせ、一旦はシュートチャンスをつぶしたものの、そこへ走りこんだのは右サイドバックに入っていた伊野波だった。内田篤人(シャルケ04)の出場停止を受け先発出場していた伊野波の代表初得点が、日本にとって値千金の決勝ゴールとなった。その後は、人数に勝るカタールが猛反撃を見せたものの、最後まで集中していた日本がリードを守りきり、3−2で試合終了。日本は4大会連続となる準決勝へ駒を進めた。

 完全アウェーの中で行われた準々決勝は、審判のジャッジにも恵まれず非常にタフな試合となった。それでも日本は最後に決勝ゴールをあげベスト4進出を果たした。日本を知り尽くすメツ監督が中盤を抑えにかかっても、ボールが回らないとみるや香川や本田がやや下がり目にポジションをとり、遠藤と長谷部へのプレッシャーを軽減させた。ひとつの形に拘らず柔軟な対応を選手たちがみせ、3ゴールを奪えたのは大きな収穫だ。

「チーム一丸となって、誰が出ても勝てるチームになりたい」。試合後、決勝点をあげた伊野波はこう語った。吉田の退場処分を受け、準決勝でも今度はセンターバックとして出場機会が与えられるかもしれない。伊野波が口にした「チーム一丸」という言葉が、今大会のキーワードになりそうだ。グループリーグのヨルダン戦、シリア戦と今日の準々決勝で、日本は強さを見せ付けたというよりも、チームとしての総合力で勝ちあがってきた。準決勝は韓国−イラン戦の勝者との戦いになる。どちらが勝ちあがってくるにせよ、これまでの相手よりもランクの高い相手との対戦と言える。25日に行われる準決勝ではチームがさらにまとまって、これまで以上の出来を見せなければ決勝への扉は開かない。アジアの頂点まであと2勝と迫ったザックジャパンが真価をみせる戦いはここから始まる。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
今野泰幸
吉田麻也
伊野波雅彦
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
香川真司
→永田充(90+2分)
岡崎慎司
本田圭佑
FW
前田遼一
→岩政大樹(63分)