29日、東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチが大阪・長居スタジアムで行われ、日本代表がJリーグ選抜と対戦した。日本代表は前半15分に遠藤保仁(ガンバ大阪)が直接FKを決めて、先制点をあげると、19分にも岡崎慎司(シュツットガルト)が加点し2対0で前半を折り返す。Jリーグ選抜は後半37分に三浦知良(横浜FC)のゴールで1点を返し反撃を見せたが、スコアはそのまま動かず試合終了。日本代表が2対1で勝利した。

 本田圭、2得点に絡む活躍(長居)
日本代表 2−1 Jリーグ選抜

【得点】
[日] 遠藤保仁(15分)、岡崎慎司(19分)
[J] 三浦知良(82分)
 チャリティーマッチとして開催されたこの試合、まずキックオフを前にして両チームのキャプテンがピッチ上でマイクを通じてメッセージを送った。日本代表主将の長谷部誠(ヴォルフスブルク)は「僕たちをいつもグラウンドで力を与えてくれたのは皆さんの応援。今度は僕たちが応援する番です」と気持ちを込めてプレーすることを誓った。対するJリーグ選抜のキャプテン中澤佑二(横浜F・マリノス)も全力で戦うことを宣言し、「信じています。乗り越えられない困難などない」と被災地へ熱いエールを送った。

 ただ、日本代表にとってこの一戦は重要なテストの場でもあった。昨年の南アフリカW杯、1月のアジアカップを戦った従来の4−2−3−1ではなく、3−4−3のフォーメーションで試合に臨んだ。3−4−3はアルベルト・ザッケローニ監督にとって代名詞とも言えるシステム。イタリア・セリエAのウディネーゼ時代には、このシステムで下位に沈んでいたクラブを変貌させた。中盤の両サイドに入った左の長友佑都(インテル・ミラノ)と右の内田篤人(シャルケ04)の攻撃力をどれだけ活かせるかがポイントだった。

 対するJリーグ選抜は4−3−3のフォーメーションで田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)、中澤佑二(横浜F・マリノス)の元日本代表コンビがセンターバックを組み、中盤にも小笠原満男(鹿島アントラーズ)、小野伸二(清水エスパルス)起用されるなどスタメンの多くが日本代表経験者となった。

 まず存在感をアピールしたのはJリーグ選抜の佐藤寿人(サンフレッチェ広島)だ。前半7分に相手DFのパスミスでボールを奪うと、ゴール正面PAの少し外からミドルシュートを放つ。これは日本代表の守護神川島永嗣(リールセ)に左手一本で阻まれたが、被災地・仙台に本拠を置くベガルタ仙台に1年間、所属していたストライカーが、この試合最初のシュートで場内を沸かせた。

 対する日本代表も本田圭佑(CSKAモスクワ)を中心に徐々に攻勢をみせる。
 先制点が生まれたのは前半15分だ。本田圭がドリブル突破で敵陣に攻め込むと、ゴールまで約20メートルの位置で倒され、フリーキックを得る。キッカーは本田圭ではなく、遠藤保仁だった。右足から放たれたシュートは壁の外側を巻き、ゴール右隅に吸い込まれる。鮮やかな直接フリーキック弾が決まり、日本代表が1点のリードを奪った。遠藤が試合後、「みんなで決めたゴールです」と話した通り、ゴール後はベンチに選手が集まり喪章を天に掲げるパフォーマンスを見せて、震災で亡くなった方々への哀悼の意を示した。

 日本代表はその4分後、再び本田圭から追加点を奪う。高い位置でボールを奪った本田圭がPA内へとスルーパスを送る。そこへDFの裏を突いて走りこんだ岡崎がボールを受けて、GKと1対1に。岡崎は冷静にGKを見て、ループ気味のシュートを打ちネットを揺らす。日本代表がさらにリードを奪い、試合を支配した。

 前半で、もう1人存在感を放ったのが、長友佑都だ。イタリアから帰国後、代表に合流した日に風邪でダウンし、この日も決して体調は万全ではなかった。だが、いつものように左サイドを幾度も駆け上がった。20分には、左サイドから自ら切り込んでシュートを放ち、積極的にゴールを狙う姿勢も見せた。世界最強クラブでプレーする選手らしく、サイドを懸命に疾走する姿は、観る者の多くを元気づけたはずだ。

 後半に入ると、両チームの監督が試合前に「全員を使う」と話していた通り、大幅に選手を入れ替えた。Jリーグ選抜では後半から出場した中村俊輔(横浜F・マリノス)が中盤の底から長いパスを供給し、攻撃をリードする。しかし、決定機を作るまでにはいたらない。

 さらにJリーグ選抜は若い力がチームを活性化させる。途中出場の原口元気(浦和レッズ)が平井将生(ガンバ大阪)とのワンツーでPA前まで侵入すると、関口訓充(ベガルタ仙台)にスルーパスを送る。ゴール左で抜け出した関口は逆サイドを狙ってシュートを放つが、右に逸れた。震災に遭い、避難生活を送ったという関口は持ち味のスピードを生かしたプレーでチャンスを演出したが、惜しくも得点は奪えなかった。

 この試合の最大の見せ場が訪れたのは後半37分だ。敵陣深い位置に上がっていたJリーグ選抜の闘莉王が相手DFと競り合いながら頭で落としたボールに走りこんだのは、途中出場の三浦。GKと1対1になると、ゴール右隅にシュートを突き刺した。日本サッカー界の“キング”のゴールに会場からはカズコールがこだまする。ゴール後の “カズ・ダンス”もしっかり決めて、千両役者がチャリティーマッチに華やかな彩りをつけた。カズ自身も「みんなの気持ちがひとつになったゴール」と振り返ったように会場がひとつになった瞬間だった。

 日本代表、Jリーグ選抜合わせて44名の選手が出場。Jリーグ選抜は、全20選手がピッチに立ち、全力プレーをみせた。試合後、日本代表ザッケローニ監督は「サッカー界全体が一丸となることが大切。みんなで協力していきましょう」と激励のメッセージを送った。対戦相手のドラガン・ストイコビッチ監督も「皆様は1人じゃないってことを証明できた」と語り、被災地を勇気づける試合をできたことを評価した。

 被災地では今もなお、震災の爪痕は大きく、復興の兆しはなかなか見えてこない。その中で日本代表に招集された海外組全員が帰国し、Jリーグ選抜でも元日本代表から被災地のクラブの選手までオールスターメンバーが集結した。そこに今回の大きな意義があった。この試合が再び日本全体が立ち上がるきっかけになることを願ってやまない。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
→西川周作(31分)
→東口順昭(61分)
DF
今野泰幸
→岩政大樹(62分)
吉田麻也
→栗原勇蔵(46分)
伊野波雅彦
→森脇良太(78分)
MF
遠藤保仁
→柏木陽介(46分)
長谷部誠
→阿部勇樹(46分)
内田篤人
→松井大輔(46分)
長友佑都
→槙野智章(46分)
FW
岡崎慎司
→乾貴士(46分)
→家長昭博(72分)
本田圭佑
→藤本淳吾(46分)
前田遼一
→李忠成(46分)

<Jリーグ選抜メンバー>

GK
楢崎正剛
→川口能活(46分)
DF
中澤佑二
→茂庭照幸(46分)
田中マルクス闘莉王
駒野友一
→小宮山尊信(62分)
新井場徹
MF
小笠原満男
→中村俊輔(46分)
中村憲剛
→三浦知良(62分)
小野伸二
→関口訓充(62分)
FW
大久保嘉人
→原口元気(46分)
梁勇基
→平井将生(62分)
佐藤寿人
→ハーフナー・マイク(62分)