UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝1stレグが現地時間5日、6日に行なわれる。前年優勝のインテル・ミラノ(イタリア)はシャルケ04(ドイツ)と対戦。両チームにはインテルに長友佑都、シャルケに内田篤人が所属するため、日本代表サイドバックのマッチアップが世界最高峰の舞台で実現する可能性もある。その他にも、イングランド・プレミアリーグ勢の直接対決、チェルシー対マンチェスター・ユナイテッドなど、注目のカードが目白押しだ。
 日本のサッカーファンにとって楽しみなのは長友と内田の対決だ。長友は当初、ベンチからのスタートが濃厚と見られていたが、公式戦4試合ぶりのスタメン出場が現実味を帯びてきた。インテルは先日のACミランとのミラノダービーに0−3と完敗したため、守備陣の入れ替えも考えられる。コンスタントにベンチ入りしている長友に、先発のチャンスが巡ってくる可能性は、大いにある。一方の内田は欧州CLでは7試合連続のスタメン出場中だ。指揮官はこの3月にフェリックス・マガトからラルフ・ラングニックに代わったものの、新監督から「攻撃も守備もでき、素晴らしい」と高い評価を受けている。長友が左サイドバックで起用されれば、右サイドバックの内田と対峙することとなる。欧州CL準々決勝という大舞台で、初めて日本人選手が雌雄を決する。ザックジャパンの両翼を担う2人のサイドの攻防から目が離せない。

 前回王者のインテルは、昨年12月に指揮官がラファエル・ベニテスからレオナルドに代わってから、上昇気流に乗っている。国内リーグでは、首位ACミランに勝ち点差5の3位につけており、コパ・イタリアでも準決勝進出を果たしている。シャルケとの一戦で、エースのサミュエル・エトーと得点力のあるMFウェズレイ・スナイデルが持ち前の決定力の高さを発揮できれば、順当に勝ち上がれるだろう。ただ、気になるのは失点の多さ。ここまで14失点を喫しているのは、ベスト8に進出したチームの中でワーストだ。脆弱な守備陣を経験豊富なシャルケのFW、ラウール・ゴンザレスが狙わないはずはない。守備のほころびが目立つようだと、インテルの連覇も苦しくなる。

 そして、世界的に注目の一戦が、3季前の決勝カードの再現となるチェルシー対マンチェスター・ユナイテッドだ。国内リーグでは、過去6年間、両クラブが優勝を3度ずつ分け合っている。実力の伯仲したクラブの対戦だけに、1点を争う展開が予想され、最終的にはストライカーの決定力が勝敗のカギを握るだろう。

 初のビッグイヤー獲得を目指すチェルシーは、3季前に決勝で敗れた雪辱に燃えている。3月に行なわれた国内リーグの直接対決では、マンチェスターUを2対1で下した。しかし、国内リーグの順位では、首位マンチェスターUに勝ち点差11をつけられ4位にとどまっている現状だ。欧州CLでもライバルに差をつけられるわけにはいかない。攻撃陣では、FWニコラ・アネルカの好調が目立つ。元フランス代表のストライカーは今季の欧州CLで7試合7得点と抜群の決定力を誇っている。ただ、1月に獲得したFWフェルナンド・トーレスが、移籍後未だノーゴールなのが不安材料だ。スペイン代表の点取り屋の覚醒が待たれる。

 対するマンチェスターUは、エースのウェイン・ルーニーが好調だ。欧州CLでは1得点にとどまっているが、2日に行なわれた国内リーグのウェストハム戦ではハットトリックを達成するなど、勢いに乗っている。他のFW陣もディミタル・ベルバトフが国内リーグで20ゴールをあげ、得点ランクトップ。控えのハビエル・エルナンデスもここ5試合で3ゴールと安定した数字を残し、層は厚い。3季ぶりの欧州CL制覇に向けて、視界は良好だ。好調な攻撃陣をどの組み合わせで起用するか、経験豊富なアレックス・ファーガソン監督の采配にも注目が集まる。

 この2チームに代表されるように今季はイングランド・プレミアリーグ勢が改めて実力を証明する形となっている。昨季は2クラブがベスト8で敗退しているが、それまでの3シーズンはベスト4のうち3クラブをイングランド勢が占めていた。今季もベスト8には5カ国のクラブがひしめき合う中、イングランド勢は3クラブがベスト8入りを果たしている。また、今季の決勝はイングランドにとっての聖地ウェンブリ―・スタジアムで行なわれる。イングランド勢として3年ぶりのビッグイヤーを奪回したいところだろう。

 もう1つのイングランド勢は、快進撃が続くトッテナムだ。決勝トーナメント1回戦では、欧州制覇7度のACミランを撃破し、準々決勝へと駒を進めた。今回の相手は、最多9度の欧州制覇を誇る名門レアル・マドリッド。命運をわけるのは、ウェールズ代表のガレス・ベイルとイングランド代表のアーノン・レノンからなる両サイドハーフだ。前線に長身のピーター・クラウチが控えているだけに、サイドでの主導権を握ることが“白い巨人”を倒すために必要不可欠になる。

 一方のレアル・マドリッドは、10度目の欧州CL優勝に向けて暗雲が立ち込めている。クリスティアーノ・ロナウド、マルセロ、カリム・ベンゼマのケガだ。3人が欠場した先日の国内リーグ戦では、スポルティング・ヒホンに敗れ、今季ホーム初黒星を喫している。C・ロナウドとマルセロは、前日練習には参加し、なんとか最悪の事態は免れそうだが、コンディションは万全ではないだろう。ここ5試合で7ゴールと、絶好調だったベンゼマに関しては、ケガの回復が間に合わず欠場が濃厚だ。そ主力の穴をどう埋めるのか、欧州CLを2度制覇している名将ジョゼ・モウリーニョの選手起用がポイントとなる。

 一昨季の王者バルセロナは、初のベスト8入りを果たしたシャフタールを迎え撃つ。下馬評はバルセロナの圧倒的優位。ご存じリオネル・メッシと、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャら昨年の南アフリカW杯を制したスペイン代表メンバーが繰り出す攻撃はそう容易くは防ぎきれない。そのずば抜けた攻撃力によって、第1戦でほぼ勝敗が決してしまう可能性もゼロではない。逆にシャフタールは、その攻撃陣を第1戦で封じ、第2戦を得意のホームで迎えることができるか。ジャイアント・キリングを起こす“秘策”に期待したい。

【UEFAチャンピオンズリーグ準々決勝1stレグ】(※左側がホーム)
◇4月5日(火)
インテル・ミラノ(イタリア) × シャルケ04(ドイツ)
レアル・マドリッド(スペイン) × トッテナム(イングランド)

◇4月6日(水)
チェルシー(イングランド) × マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
バルセロナ(スペイン) × シャフタール(ウクライナ)