当HP編集長の二宮清純がインタビュアーを務めるBS朝日の番組『勝負の瞬間(とき)』が4月30日(土)、20:00より放送されます。この番組では毎回、各競技から一流たちをお招きし、トップを極めた技術と、その思考法に迫ります。これまでのスポーツ番組とは一味違ったインタビュードキュメントです。今回は女子走幅跳で6m86cmの日本記録を持つ井村久美子選手をお招きします。
(写真:三重県鈴鹿市にある井村選手の練習拠点で収録)
 当サイトでは番組に先駆けて、井村選手とのインタビューの一部を紹介します。

二宮: 今日は風が強いのですが、このくらいの追い風だと参考記録になってしまいますか?
井村: いえ、2.0m/sくらいで、公認ギリギリのちょうどいい風ですね。絶好の跳躍日和です。

二宮: 幅跳は風の影響を受けますから、やっぱり朝起きると気になりますか?
井村: そうですね。手を広げて追い風か向かい風か確認しています。小さい頃からやってきたので、だいたい風速も分かりますね。

二宮: 練習しない日でも、それがクセになって、風を確認したりすることは?
井村: ありますね。歩いていて、手を広げていると、「何しているの?」って訊かれますね(笑)。

二宮: でもスタジアムの中では、風が舞ったり、いろいろ変化します。その読み方は難しいでしょう?
井村: 踏切板の横にこいのぼりと呼ばれる吹き流しかあるので、あれでどのぐらいの感じで風が吹いているかを確認します。たとえば一定の風速で吹いているのか、突風みたいに時折、強風が吹くのかとか。

二宮: 絶えず吹き流しに目配りしながら、競技に臨むわけですね。
井村: しかも、トラックで短距離の競技をしていると、その風の影響も受けますから。

二宮: えっ! 走っている選手が風を起こすと?
井村: そうなんです。日本のトップレベルの選手が8人とか一気に走ると、その走り終わった後には風がビューと吹き抜ける。だから、トラック競技の状況も見ながら、吹き流しも見ながら跳んでいます。

二宮: じゃあ、その風にうまく乗ることができれば最高ですね。
井村: でも、なかなか自分のタイミングではいい風が吹くとは限らない。いきなり突風が吹いて追い風参考になることもありますから。
>>この続きは番組をお楽しみ下さい。

 井村選手の持つ日本記録6m86cm。これは大人が普通に歩けば、10歩ほどかかる長さです。実際にその距離を目の前にすると、記録の偉大さを実感できます。番組では、砂場を目の前に助走や踏み切り、跳躍のイメージや、遠くへ跳ぶコツを本人からたっぷり聞いていきます。
「幅跳で大事にしているのはチーターが獲物を追いかけて、最後にグワッと捕まえにいく感覚です」
 彼女の言葉には、この競技の概念を一変させるような刺激的な内容がたくさん詰まっています。

 中学1年生の時から全国大会で優勝し、天才少女と呼ばれた井村選手も、これまでの陸上人生は決して順風満帆とは言えないものでした。高校時代の過食症による低迷、あと3cmで出場を逃したアテネ五輪、最後の最後まで出場権を得られず、自殺まで考えた北京五輪……。しかし、彼女は「スランプチックなほうが、逆に自分を奮い立たせてくれる」と考えています。インタビューからはそんな度重なる試練が、天才少女を芯の強いジャンパーへと育てたことが伺えます。

 目標に掲げていた7mジャンプまでは、あと14cm。これは、わずかペン1本分の長さです。30歳を迎え、身体的にもピークを過ぎる年齢にさしかかる中、今年は五輪出場へ勝負をかける1年になります。ここ2年、記録が伸び悩んではいますが、井村選手は「今年は跳ぶ自分がいる」と確信を持っています。
「“復活”というのはあまり好きではない。“新しい自分”を見せていきたい」
 そう前を向く彼女は、この先、どんなロングジャンプを見せてくれるのか。これまで陸上にあまり興味のなかった方でも、その魅力に引き込まれてしまう55分間です。

 この『勝負の瞬間』は月1回ペースでお届けしています。今後もボクシングの世界王者、陸上短距離界の第一人者など、一流のアスリートたちが続々と登場予定です。どうぞお楽しみに!

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