日本サッカー協会は17日、記者会見を開き、7月にアルゼンチンで開催されるコパ・アメリカ(南米選手権)の出場辞退を正式に発表した。東日本大震災の影響を受け、Jリーグの日程は大幅な変更を余儀なくされた。そのため、代表編成が困難になったことから協会は4月に、辞退の意を示した。しかし、開催国のアルゼンチン協会などからの説得を受け、出場の可能性を探ってきた。日本代表アルベルト・ザッケローニ監督との話し合いで、必須条件とされたのは海外組からの過半数以上の招集だった。だが、日本人選手の所属する欧州各クラブとの交渉は難航を極めた。交渉にあたった原博実強化担当技術委員長が16日に帰国。その結果報告を受けた小倉純二日本サッカー協会会長が「大会にふさわしい日本代表は編成困難となった」と最終決断をした。
(写真:参加辞退の手紙を読み上げる小倉会長<左>と会見に同席した原委員長)
 一度は辞退を決めながら、強い要請を受けて模索してきたコパ・アメリカの出場はやはり、叶わなかった。小倉会長は「1人でも多くの日本人選手が出場して欲しかった。ただ、今回の震災が大きすぎた。Jリーグ側も、再開したばかりで、ようやく戦いが始まったばかりですから、海外組が揃わないからといって、“(Jリーグから)もっと出してほしい”なんてことを、我々が言える状態にはない。コパ・アメリカというレベルの高い大会に出て、経験を積むということが重要だとは重々承知している。私もサポーターの皆さんと同じ気持ちです。非常に残念に思っています」と、苦渋の決断だったことを明かした。

 欧州各クラブとの交渉の経緯について原委員長は、次のように説明した。「11クラブの強化担当者、監督、会長と話ができました。それ以外のクラブはどうしてもスケジュールが合わないためレターを送って事情を説明しました。“正式な返答を15日(現地時間)迄に出してほしい”という期限を区切って、南米連盟を協力して交渉してきました」。しかし、希望していた人数を揃えることができないまま、帰国の途に着いた。

 それでも原委員長は「さまざまなクラブとコミュニケーションがとれた。今後、日本サッカーとうまくやれるという実感しました」と、この先につながる手応えを口にした。また、各クラブから、「日本のために手伝いたいが、それだけの期間、選手を離すことはできない」との返答を受けたことで、各選手がクラブで主力として扱われていることに喜びを感じたという。それだけ海外での日本人選手の存在価値が高まっている証だからだ。

 とはいえ、9月にはブラジルW杯アジア3次予選が控えている。7月のコパ・アメリカの参加は、その強化試合の1つとされていただけに、今後の強化策が気になるところだ。それについて原委員長は「(コパ・アメリカの代替試合を)7月にうめることはない」とし、次のように述べた。「海外組はしっかり休んで、クラブでコンディションをあげて、新シーズンのいいスタートを切って欲しい。国内組はJリーグでしっかりとパフォーマンスをすることが、今後の強化になる。集まってやることだけが、強化というふうには考えていません。選手がコンディションをあげていけるように、クラブでしっかりやって欲しい。それが一番大事なことだと思います」

 今回、コパ・アメリカ欠場により、日本代表の強化に遅れが生じたことは間違いない。出場していれば、南米の強豪とアウェーで対戦する絶好の機会となったはず。ただ、過ぎたことを悔いても仕方がない。現状は、各選手がそれぞれクラブでレベルアップをし、6月のキリンカップや8月の韓国との親善試合を経て、アジア予選を戦い抜くしかない。逆境を乗り越えた末に、真の“ザックジャパン”の強さが見えてくる。