21日、東京・有明コロシアムで「共に乗り越えよう」をスローガンに掲げ、東日本大震災復興ゲームとしてbjリーグ2010−2011ファイナル4が行なわれた。イースタンでは浜松・東三河フェニックスが新潟アルビレックスBBを、またウエスタンでは琉球ゴールデンキングス(沖縄)が大阪エヴェッサをそれぞれカンファレンスファイナルで破り、明日のファイナル進出を決めた。敗者の新潟と大阪は3位決定戦に臨む。
(チーム最多の25得点を挙げたニクソン。4Qでは豪快なダンクを決めた)
◇イースタン・カンファレンス ファイナル
 浜松、V2へ向けて快勝
浜松・東三河フェニックス 88−74 新潟アルビレックスBB
【第1Q】21−14【第2Q】17−14【第3Q】28−21【第4Q】22−25

 レギュラーシーズンを首位で通過した浜松・東三河フェニックスが、一度もリードを奪われることなく、昨年に続いて新潟アルビレックスBBを破ってファイナル進出を決めた。明暗を分けたのは日本人選手だった。両者ともに外国人選手がファーストアタックを外した後、最初に得点を決めたのは浜松のG友利健哉だった。スリーポイントを決め、チームに勢いをもたらす。その後はレギュラーシーズンMVPのFジェフリー・パーマーがドライブシュートやスリーポイントを決めるなど、得点を重ね、リードを広げていった。

 新潟は前日のヘッドコーチ(HC)会見で「日本人が爆発してほしい」という廣瀬昌也HCの言葉とは裏腹に、アウトからのシュートはほとんど見られず、C/PFジュリアス・アシュビーを中心にインサイドにボールを集めた。中盤以降、PG澤岻直人が攻めの姿勢を見せて得点を奪い、追い上げを図った。しかし14−17と3点差に迫り、残り1分を切ったところで、新潟は立て続けにフリースローを外す。逆に浜松はそれをリバウンドから速攻につなげて得点につなげ、7点差に広げた。

 2QはFイッサ・コナーレの連続得点でスタートし、新潟が流れをつかみかけた。だが、これを阻止したのが浜松のFレイ・ニクソンだった。フリースローなどを確実に決め、得点差を縮めることを許さなかった。中盤以降はG岡田慎吾のシュートが決まり出し、浜松ペースで試合は進む。新潟は1Qで1本もアタックのなかったスリーポイントをチーム一の成長株・G小松秀平がようやくトライし始める。しかしその確率は低く、4本中1本を決めるのが精一杯だった。

 序場から激しい点の取り合いとなった3Qでも、目立ったのは浜松のニクソンだった。ミドルシュート、スリーポイント、フリースローと次々と決め、チーム最多の12得点を挙げる。なんとか一矢報いたい新潟は4Q、ようやくエンジンがかったかのようにアグレッシブなプレーで猛追した。特に残り2分を切り、崖っぷちに立たされると、池田雄一がスリーポイントを決めるなど5連続ポイントを奪い、最後まで戦う姿勢を見せた。しかし、時すでに遅し。結局、浜松が14点差で勝利し、2年連続でファイナルへの切符をつかみとった。

「こういう大舞台では強いメンタリティが必要。日本人選手には『思い切って、やってきたことを出し切りなさい』と言って送り出したが、澤岻以外は外から攻めていなかった。逆に浜松の日本人選手は最初から思い切ってアタックしていた。試合の入り方がうちとは違った。最後は攻めていたが、既にゲームが決まっていた」
 勝敗のカギを握ると考えていた日本人選手にリングに向かっていく姿勢が見られなかったことを、最大の敗因に挙げた廣瀬HC。「明日は最初からガンガンいってほしい」と、3位決定戦での奮起を促した。

 一方、浜松の中村和雄HCにも笑顔は見られなかった。その理由はこれまで自分が指導してきたことが完璧にはチームには伝わっていなかったことへの不満だった。
「今日のテーマは『美しさ』だった。それは記録にあらわれない、一生懸命さのこと。リバウンドに懸命にとんでいく、ルーズボールに飛びついていく……そんな泥臭さを指導してきたつもりだが、しっかりと全員には伝わっていない」
 明日の決勝では中村HCがいう『美しいバスケットボール』でV2を狙う。

◇ウエスタン・カンファレンス ファイナル
 沖縄、昨年の雪辱を果たす
 琉球ゴールデンキングス 82−76 大阪エヴェッサ
【第1Q】16−11【第2Q】23−21【第3Q】25−17【第4Q】18−27

(自らドライブでインサイドを攻める小菅)
 3年連続で同じカードとなったウエスタン・カンファレンス ファイナルは、沖縄が猛追する大阪を振り切って、2年ぶりのファイナル進出を決めた。
 はじめに主導権を握ったのは大阪だった。G高田紘久が自らドライブで切り込んで先制となるシュートを決めると、Cウェイン・マーシャルが続き、連続得点を奪った。対する沖縄は得意の速いパス回しでシュートチャンスをつくるも、ことごとくリングに嫌われ、約2分間は得点を奪うことができなかった。しかし、2分を過ぎると、シュートが決まり出す。4−6と2点差に迫ると、Fカルロス・ディクソンが相手ファウルで得たフリースローを確実に2本決めて同点とする。さらにG小菅直人、Fデイビッド・パルマーが連続得点を奪って、逆転に成功した。その後、堅実なゾーンディフェンスで大阪の攻撃を抑えた沖縄は、攻撃でもパルマーのシュートが立て続けに決まり、16−11と5点のリードを奪った。

 2Qも序盤は大阪が主導権を握り、17−18と1点差にまで迫った。ここで沖縄の桶谷大HCがタイムアウトをとる。すると、沖縄が息を吹き返した。パルマーがスリーポイントを決めると、Fアンソニー・マクヘンリーがバスケットカウントとなる豪快なダンクを披露した。これに沖縄のブースターが沸き上がり、会場が歓喜の渦に包まれた。「最大の強みはブースター」と前日の会見で桶谷HCが語った通り、ブースターの歓声が選手たちを鼓舞したのだろう。その後、沖縄は最大12点までその差を広げた。中盤以降は大阪が猛追を見せ、怒涛の7連続得点で2点差にまで追い上げた。一気に逆転といきたいところだったが、あと一歩、詰め切ることができない。逆に不要なファウルで沖縄にフリースローのチャンスを与え、再びその差を広げられてしまった。前半、フリースローのアタック数はともに13本。9本を決めた大阪に対し、沖縄は全てを成功させる。これが後々に大きく響くこととなる。

 続く3Qは互いに華麗なプレーで観客を魅了した。特に沖縄は、前日の会見で大阪のライアン・ブラックウェルHCが「タレント揃い」と評した通り、ケガの影響で万全ではないエースのジェフ・ニュートンがほとんど機能しなかったにもかかわらず、それを全く感じさせない多彩な攻撃を披露。この試合最多となる25得点を叩きだした。しかし、3度の優勝を誇る大阪もこのまま黙ってはいなかった。4Qに入ると、それまで11点に抑えられていた大黒柱のFリン・ワシントンが鬱憤を晴らすかのように、激しく沖縄のゴールを攻め立てた。相手ファウルを誘い、フリースローを決めたかと思えば、スリーポイントでその差を縮めていった。だが、最後は残り20秒で5点差にまで詰め寄るも、結局追いつくことができず、大阪の3年ぶりとなる王座奪還の夢は潰えた。

 昨年の雪辱を果たし、2年ぶりにファイナルに進出した沖縄だが、試合後の会見場に現れた桶谷HCの表情に喜びは全く見られなかった。
「20点差までつけ、ヒヤヒヤさせられるようなゲームではなかったにもかかわらず、最後は大阪をよみがえらせてしまった。単にバスケットボールを遊びでやっているようにしか思えなかった。選手には勝つ気があるのかと疑いたくなるほどだった。このままでは明日の浜松戦で恥をかくことになる。40分間、執念をもって戦うことができるかどうか。優勝は選手次第だ」

 浜松、沖縄ともにファイナルへと勝ち進んだものの、試合内容は決してHCが納得のいくものではなかった。それだけに、明日にかける思いは両チームともに強いはずだ。また、今回は単なる頂上決戦ではなく、東日本大震災の復興支援ゲームと銘打っている。それだけに、ファイナルへと進んだ両チームへの責務は決して小さくない。勝っても負けても、今シーズンは明日で最後となる。6代目のチャンピオンにふさわしい、そして被災地へのエールとなるような熱戦が繰り広げられることを期待したい。


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