bjリーグは21、22日に有明コロシアムで「ファイナル4」が開催され、いよいよ今シーズンのチャンピオンが決定する。20日に行なわれた会見では、決戦を控えた4チームのヘッドコーチ(HC)がそれぞれ意気込みを語り、本番を直前にして互いに火花を散らした。
(写真:ファイナル4進出チームのHCらと河内コミッショナー<中央>)
「このたびの大震災でお亡くなりになられた方へのご冥福と、被災地の皆様のお見舞いを心より申し上げます」
 会見の冒頭、河内敏光コミッショナーは東日本大震災の被災地・被災者への思いを述べた。今シーズンのbjリーグは秋田ノーザンハピネッツ、島根スサノオマジック、宮崎シャイニングサンズの3チームが新規加入し、16チームで6シーズン目がスタートした。しかし、未曾有の被害をもたらした大震災の影響で、本拠地が被災した仙台89ERSに加え、東京電力の原発問題で電力不足が懸念されたことから東京アパッチ、埼玉ブロンコスがシーズン途中で活動休止を余儀なくされた。また、他チームでも原発の影響を不安視した外国人選手が次々と帰国する事態が起きた。それでも河内敏光コミッショナーは「復興への勇気を与えたい」と約1週間後のリーグ戦再開を決意。救済措置として仙台、東京、埼玉の選手の他チームへのレンタル移籍を認め、順位については各チームの試合数が異なるために勝率で決めることとした。

 自らも被災地に足を運んだという河内コミッショナーは想像以上の惨状に言葉が出なかったという。だが、その中で「自分たちができることはバスケットボールを通じて笑顔と勇気を届けることだ」と痛感。今回の「ファイナル4」は、「共に乗り越えよう」をスローガンに掲げ、東日本大震災復興支援ゲームとして開催される。その頂上決戦に進出したのは、イースタン・カンファレンスからは浜松・東三河フェニックスと新潟アルビレックスBB、ウエスタン・カンファレンスからは琉球ゴールデンキングス(沖縄)と大阪エヴェッサの4チームで、奇しくも昨年と同じ顔触れとなった。

 PG不在の浜松、新潟の“ツインタワー”を警戒

 昨シーズン、チーム設立2年目で優勝を果たし、大阪以来の連覇を目指す浜松は、今シーズンのレギュラーシーズンも最大15連勝を記録するなど、40勝6敗と首位を独走。8割7分とリーグ史上最高の勝率をマークし、ディフェンディングチャンピオンらしい圧倒的な強さを見せてきた。しかし、チームの大黒柱だったGジャメイン・ディクソンが震災の影響で帰国したまま契約解除となったことで中村和雄HCは「彼がいなくなってから、相当弱くなった。いろんな選手をポイントガードで試しているが、フィットしていない。チームとしてはいい状態ではない」と苦しい胸の内を明かした。それでも「人間は苦しい状況でこそ成長する」と述べ、「ここで踏ん張れるかが正念場。何がなんでも頑張っていこうと思っている」と意気込みを語った。

(写真:連覇を狙う浜松・中村HC<左>と10周年に花を添える初優勝に挑む新潟・廣瀬HC>
 明日のカンファレンス ファイナルで浜松と対戦する新潟は、プロチームとして発足して今年で10周年を迎えた。河内コミッショナーからも「4チームの中で唯一、優勝していないのが新潟。区切りのいい今年こそはと、他のチーム以上に優勝への思いは強いはず」と発破をかけられた。これに対して廣瀬昌也HCは「プレッシャーをかけられると弱い方なので、あまり思わないようにしている」としながらも、ファイナル4への熱い思いを次のように語った。
「勝負はやってみないとわからないというのが正直なところ。ただ、いい準備はできた。大きなケガもなく、いいコンディショニングで臨めるのではないかと思っている。これまで幾度となく、中村HCと戦わせてもらってきた。そのたびに多くのことを勉強させもらってきたからこそ、自分自身が成長してこれたのだと思っている。昨年も(新潟の戦術が)前半はうまくハマったが、後半にうまく対応されて『さすが』だと思った。今年も有明の舞台で中村HCと戦えることに感謝している。明日はまた、自分も含めてチームが成長できるような試合をしたい」

 その新潟に対して、中村HCは「とにかく(センターが)デカイ。それと、日本人選手が急速に良くなったように感じている」と警戒心を募らせた。実は新潟は震災の影響を受け、所属していた5人の外国人選手のうちC/PFジュリアス・アシュビー以外の4人が帰国するという危機的状態に陥った。その後、活動を休止した埼玉からCジョージ・リーチがレンタル移籍で加入したことで、高さを生かしたバスケットを展開。富山グラウジーズとのセミファイナルを制し、ファイナル4進出を決めた。しかし、廣瀬HCは一時はアシュビーの“オン・ザ・コート・ワン”(コート上に外国人選手が1人の状態)での戦いを覚悟したという。だからこそ、指揮官の日本人選手に寄せる期待は大きい。
「日本人選手には『全てはオマエたちにかかっている。これからはオマエたちの成長のためにやっていこう』と言って、震災後はやってきた。今回、その成果を試すことができる場を与えられたことに感謝している。日本人選手が暴れまくってくれたら嬉しい」と今回のポイントに日本人選手の活躍を挙げた。

 大阪は万全! 沖縄はエースのケガが不安材料に

 一方、ウエスタン・カンファレンスは3年連続で同じカードとなった。今やリーグ最大のライバルと言っても過言ではない沖縄と大阪だ。カンファレンス ファイナルでの過去2度の対戦成績は1勝1敗となっている。
今シーズンは序盤、ケガに泣かされた沖縄だが、終わってみれば2シーズンぶりとなる首位の座を守ってのプレイオフ進出となった。昨年の「ファイナル4」では3位に終わった沖縄は、「大きな忘れ物をしてきた」(河内コミッショナー)有明の地でリベンジを狙う。だが、チームのエース的存在であるFジェフ・ニュートンがセミファイナルの直前にケガをし、未だに万全な調子ではないという。それだけにチーム力が勝敗のカギを握っている。

「各々の選手が自分たちの役割をしっかりとこなし、試合に臨めればと思っている。ジェフ・ニュートン以外の選手はコンディションも上がってきている。試合の中で、誰がどういうふうに台頭してくるかが楽しみ。その人数が多ければ多いほど、力を発揮できると思うので、それを期待している」と桶谷HCは勝利へのポイントを語った。大阪に対しては、3ポイントが7本(アタック数)に対して、フリースローを44本(同)を計上したライジング福岡とのセミファイナル第2戦を例に挙げ、「Fリン・ワシントンを中心にフィジカルが非常に強くてアグレッシブなチーム。なるべくアウトサイドに逃がしていきたい」と対策を述べた。

 指揮官として初めて「ファイナル4」に臨む大阪のライアン・ブラックウェルHCは、「チームのコンディションは非常にいい」と自信をのぞかせた。特に埼玉からレンタル移籍したPGケニー・サターフィールドの加入がチームに大きな影響をもたらしたとし、次のように述べた。
「Gケビン・タイナーがケガをした時に入ってきてくれたのはラッキーだった。大阪に対して、対戦相手はゾーンをしいてくることが多いが、確実なワイドオープンのショットを打てる選手を探したりと、チームをいい方向に導いてくれた」
 今シーズンは1勝3敗と負け越している沖縄に対しては「タレントが揃っていて、Fデイビッド・パルマ―、Fカルロス・ディクソンと20得点挙げられる選手が多く、どこからでも得点できる」と警戒心を募らせたうえで、「明日は間違いなく激しいバトルになる」とライバルに真っ向から挑む姿勢を見せた。
(写真:「ファイナル4」初采配の大阪・ブラックウェルHC<左>と3年連続の沖縄・桶谷HC)

 昨年はレギュラーシーズンの対戦成績通りの結果となったカンファレンス ファイナルだが、過去には大番狂わせを演じたチームもある。代表的なのは08−09シーズンの東京だ。レギュラーシーズンでは2勝6敗と大きく負け越していた浜松に対し、僅差ではあったものの、一度もリードを奪われずに勝利している。レギュラーシーズンでは採用しなかった “トライアングルツー”をプレイオフでの奇策としたことがピタリとハマったのだ。会見では4チームの指揮官ともに具体的な戦略は述べてはいない。果たしてどんな戦いを見せてくれるのか。被災者へのエールとなるような熱戦を期待したい。


〜2010−2011シーズン ファイナル4(有明コロシアム)〜

21日(土)
<イースタン・カンファレンス ファイナル>(14:05〜)
 浜松・東三河フェニックスvs.新潟アルビレックスBB
<ウエスタン・カンファレンス ファイナル>(18:05〜)
 琉球ゴールデンキングスvs. 大阪エヴェッサ

22日(日)
<3位決定戦>(13:05〜)
<ファイナル>(17:05〜)

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