現地時間28日、欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝が、ロンドン・ウェンブリースタジアムで行なわれる。欧州クラブ最強を決める一戦は、バルセロナ(スペイン)とマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)の顔合わせ。2シーズン前の決勝の再戦となった。いずれも勝てば、4度目の戴冠になる。攻撃のバルセロナ、守備のマンチェスターUという互いの持ち味が激突する戦いになりそうだ。
 欧州サッカーの2010−11シーズンが、いよいよクライマックスを迎える。CLのファイナルは、今シーズンの締め括りにふさわしい豪華なカードとなった。今シーズン、リーガ・エスパニョーラの3連覇を達成したバルセロナと、プレミア・リーグ最多の19度目の優勝を果たしたマンチェスターU。08-09シーズンの決勝では、バルセロナがサミュエル・エトーとリオネル・メッシのゴールで、2対0とマンチェスターUに完勝しているが、対戦成績は、3勝3敗4分けと五分である。

 両者の決勝までの勝ち上がりを見ると、攻めのバルセロナ、守りのマンチェスターUという特徴が見えてくる。バルセロナは圧倒的な攻撃力を見せ、積み上げた得点は32チーム中最多の27にのぼる。一方のマンチェスターUは、12試合中、8試合を無失点に抑え、許した総失点は最小の4。ボールポゼッションを重視し、試合を支配しにかかるバルセロナの攻撃を、マンチェスターUが組織的な守備で、耐え凌ぐ試合展開となるだろう。

 マンチェスターU自慢のディフェンスを支えるのは、セルビア代表のネマニャ・ビディッチとイングランド代表のリオ・ファーディナンドのコンビだ。欧州を代表するセンターバックの2人が、守護神エドウィン・ファン・デルサールとともに強固な砦となり、相手攻撃陣を弾き返す。

 もちろん、守っているだけでは得点は奪えない。“赤い悪魔”が勝機を見出すためには、攻撃陣の出来もポイントとなる。当然、エースのウェイン・ルーニーには、バルセロナ守備陣からの厳しいマークがつくだろう。そこで、メキシコ代表のハビエル・エルナンデスに注目したい。22歳の若手ストライカーは、準々決勝チェルシーとの1stレグで貴重な先制点を決めるなど、大事な場面でのゴールが目立つ。また、エルナンデスはDFの裏をつく動きを得意としており、高いラインを形成するバルセロナ守備陣の穴を突ける。彼がゴール前に何度も顔を出せれば、3季ぶりの王座奪還が見えてくる。

 対するバルセロナは、オフェンス陣に尽きるだろう。メッシ、アンドレアス・イニエスタ、シャビ・エルナンデスらを中心としたパスサッカーは、観る者を魅了し、対戦する者たちを恐怖に陥れる。特にメッシは、南アフリカW杯を制したスペイン代表がずらりと顔を揃えるメンバーの中でも、一際輝きを放っている。ドリブル、パス、シュート、そのすべてが高水準で、今季もCLで11ゴールをあげ3季連続の得点王はほぼ確実だ。バルセロナの背番号10が、自由にピッチを動き回る姿を見られれば、その勝利は約束されたも同然だ。

 もちろん世界最高のドリームチームとも評されるバルセロナにも弱点はある。実力差がある相手には圧倒的な力を見せるが、準々決勝のアーセナル、準決勝のレアル・マドリッドと、強豪相手には、苦戦を強いられた。退場者を出した相手の自滅に救われた感もある。チーム全体としてボールポゼッションを重視するため、DFにもつなぎの役割が求められる上、両サイドバックが攻撃的ということもあって、自然とラインは高くなる。そこを前述したマンチェスターUのストライカー2人に加え、経験豊富なライアン・ギグスやパク・チソンなどに突かれると、脆さが出る可能性が大いにある。

 また両クラブともに各国代表選手を多く揃えており、選手層は豊富だ。両監督がその駒をいかに配し、タクトを振るうのか。25年もの長期政権を築いている名伯楽アレックス・ファーガソン(マンチェスターU)と、クラブのスタープレーヤーだったジョゼップ・グアルディオラ(バルセロナ)による頭脳戦も見ものだ。

 マンチェスターUが2季前のリベンジを果たすのか、バルセロナがそれを返り討ちにするのか。栄冠をかけた争いは、ハイレベルな熱戦となること間違いない。そして、この試合の勝者が、12月のクラブW杯で日本にやってくる。果たしてビッグイヤーを手にし、欧州王者として来日するのは、どちらのクラブになるのか。日本のみならず、世界中のサッカーファンが固唾を飲んで見守るフィナーレまで、時は刻一刻と迫っている。