キリンチャレンジカップ2011が10日、札幌ドームで行われ、日本代表は韓国代表と対戦した。日本は前半からボールを支配し、34分、PA内で李忠成(広島)が落としたパスを香川真司(ドルトムント)が冷静にゴールへ流し込んで先制する。後半はさらに攻撃が嚙み合い、8分に本田圭佑(CSKAモスクワ)、10分には再び香川がゴールネットを揺らした。韓国から3ゴールを奪ったのは実に37年ぶり。守備でも相手の攻撃を無失点に封じ、因縁のライバルに3−0の完勝を収めた。また代表初選出で注目された清武弘嗣(C大阪)は、前半途中から出場し、2点目と3点目をアシストする活躍を見せた。

 香川が2ゴール 初出場清武は2アシスト(札幌ド)
日本代表 3−0 韓国代表
【得点】
[日] 香川真司(35分、55分)、本田圭佑(53分)
 宿敵相手に圧巻の3得点。初戦まで1カ月を切ったW杯予選に向けて大きな弾みがつく1勝だ。

 ザッケローニ体制になって早くも3度目となった日韓戦、日本は香川、本田、内田ら海外組が順当にスタメンに名を連ねた。長友佑都(インテル)が右肩脱臼のため空席になった左サイドバックには、昨年10月の韓国戦以来に代表に戻った駒野友一(磐田)が入った。対する韓国もキ・ソンヨン(セルティック)や今年のアジア杯得点王のク・ジャチョルらが先発。両国ともに現時点でのベストメンバーで試合が始まった。

 直近2戦はいずれも引き分け(アジア杯準決勝はPK戦勝利)。激しく緊迫した展開になると予想された試合は、前半開始から日本が攻めかかる。まずキックオフ直後、岡崎慎司(シュツットガルト)がPA外右からエリア内へ切れ込んでシュートを打った。4分には、右サイド高い位置まで上がっていた内田篤人(シャルケ)から本田、岡崎へとボールが回り、最期は再び本田が受けてPA手前中央で左足を振り抜く。いずれも得点にはならなかったが、立ち上がりから主導権を握ろうとする姿勢が強くみえた。

 ザックジャパンのテーマである縦への速い展開も多く見られた。DFやボランチがトップ下の本田へ早めにボールを預け、連動して周囲の選手が動き出す。その教えがチームに浸透していることを示したのは22分だ。PA前右でボールを受けた本田が中央へ横パス、これを香川がダイレクトに右足で狙った。シュートはGKにセーブされたが、速攻で韓国守備陣を翻弄した。

 しかし、この試合、日本が良かったのは縦への展開だけではない。各自がワンタッチ、ツータッチと少ないタッチ数でボールをつなぐ意識を持ち、なおかつ、それが実践できていた。韓国は日本の速いボール廻しに体をしっかり寄せて守ることができない。

 35分に香川が決めた先制点も、このワンタッチパスから生まれた。右サイド高い位置でボールを奪った遠藤保仁(G大阪)が、少しタメを作ってPA内へボールを入れる。これを中央にいた李がワンタッチのヒールで落とし、香川が拾って冷静にコントロールしながらゴール左へ流し込んだ。李が一度ボールをトラップしていれば、相手の守備網に引っ掛かっていたと思われるだけに好判断だった。香川にとって韓国戦といえば、先のアジア杯で右足の小指を骨折した因縁がある。それ以来、約7カ月ぶりにジャパンブルーのユニホームに袖を通した10番は「代表でのゴールはすごく気持ちいい」と会心のゴールを振り返った。

 日本は守備面でもいい内容をみせた。ボールを保持している相手へ無理には行かず、しっかりと組織を形成して対応する。前半は韓国に効果的なパスを出させず、徐々にサイドへ追い込んでボールを奪う場面が目立った。試合は1点リードでハーフタイムを迎える。

 後半に入ると日本の攻撃がさらに噛み合う。待望の2点目は8分に訪れた。左サイドを攻め上がった駒野がPA内に進入してシュート。GKが弾いたボールを前半途中から出場していた清武がワンタッチで中央へ折り返す。フリーで受けたのは本田だ。左足で落ち着いてゴールに流し込む。先制点同様、追加点を生み出したのもワンタッチプレーだった。

 さらに2分後、香川がこの日2点目となるゴールを決めてダメを押す。アシストしたのは、またもやAマッチ初出場となる清武だ。香川からのパスに右サイドで追いつき、中を見てPA中央へボールを供給。走り込んできたのは再び香川だ。右足で合わせ、ゴールネットを揺らす。これで3−0。韓国から3得点を奪うのは、1974年の日韓定期戦に4−1で勝利して以来、実に37年ぶりのことだ。

 その後も得点こそならなかったものの、内田、李が惜しいシュートを放ち、日本は韓国ゴールを脅かし続けた。守りも終始、粘り強く韓国の反撃を跳ね返し、無失点で試合を終えた。

「韓国相手に最初からいいプレーを見せた。それを90分続けたことはアジア3次予選に向けて自信になる」
 試合後のザッケローニ監督は充実した表情をみせた。
 この試合で日本は、縦への速い展開に加え、ボールのタッチ数を少なくして、うまく自分たちの時間とスペースを作り出していた。こうすることで相手に体を寄せられるリスクも少なくなる。フィジカルで勝る外国のチームと対戦する際には、有効な戦術だ。2点目を決めた本田も「今日は内容にこだわった。これを続けて日本のサッカーが確立されていけばいい」と手応えを感じている様子だった。

 格下が相手となるアジア3次予選では、引いた状態で対応される場面が増えることが予想される。その時にも、この試合のような戦い方をすれば恐れることはない。素早い展開でボールを回せば、いくら相手が殻にこもっても90分間耐え続けることは難しいだろう。

 ライバルに完勝し、確かな成長をみせたザックジャパン。次は9月2日、アジア3次予選の初戦で北朝鮮と対戦する。


<日本代表出場メンバー>
GK
川島永嗣
DF
駒野友一
→槙野智章(56分)
吉田麻也
今野泰幸
内田篤人
MF
遠藤保仁
→家長昭博(73分)
長谷部誠
→阿部勇樹(66分)
香川真司
→細貝萌(85分)
本田圭佑
岡崎慎司
→清武弘嗣(36分)
FW
李忠成