11日、ブラジルW杯アジア3次予選第3戦が大阪長居スタジアムで行われ、日本代表はタジキスタン代表と対戦した。日本は試合開始から圧倒的にボールを支配し、前半11分、ハーフナー・マイク(甲府)の代表初ゴールで先制する。その後も7ゴールを挙げ、終わってみれば8−0と圧勝。予選スタート時から続いた得点力不足の懸念を一蹴する結果となった。

 香川、復活の2ゴール(長居)
日本代表 8−0 タジキスタン代表
【得点】
[日] ハーフナー・マイク(11分、47分)、岡崎慎司(19分、74分)、駒野友一(35分)、香川真司(41分、68分)、中村憲剛(56分)
 初顔合わせの未知なる相手を歯牙にもかけなかった。W杯予選では日本史上3位タイとなる大量8ゴール。圧勝劇の立役者となったのは、スタメンに抜擢されたワントップのハーフナー・マイク(甲府)と、本田圭佑(CSKA)の代役として注目された中村憲剛(川崎F)だった。

 トップ下の中村を中心に日本は試合開始から流動的なパスワークを見せる。そして11分、早くも先制点が生まれた。決めたのはハーフナーだ。右SBの駒野友一(広島)が中村とのパス交換からダイレクトで上げたクロスを頭でゴールネットに突き刺した。ハーフナーにとっては嬉しい代表初得点。まずは指揮官のスタメン起用にしっかりと応えた。

 早い時間帯にリードを奪った日本は、その後も圧倒的なボールポゼッションから追加点を狙う。本田が不在になって以降、日本はトップ下にボールが収まらない点が課題だったが、この日は中村がしっかりボールをキープし、両SBや香川真司(ドルトムント)らの動き出すスペースと時間を生み出していた。加えて大きかったのはハーフナーの存在だ。最前線で相手のマークを引きつけることで、他の選手が動きやすい状況をつくりだした。

 猛攻を続ける日本は19分、中村のスルーパスに反応した岡崎が追加点を挙げる。さらに35分、駒野からのクロスをPA内右でハーフナーが胸で中村に落とす。中村のシュートがこぼれたところを駒野が押し込み3−0。この時点で勝利はほぼ確実になった。

 さらに41分、中村が悩めるエースのゴールを演出する。左サイドに開いてボールを受けると、PA内に動き出した香川へ低く速いスルーパス。香川はこれを右足ダイレクトでゴールにねじ込み、8月の韓国戦以来の代表ゴールを挙げた。ドイツ・ブンデスリーガでは現在7試合で1得点と不調にあえぎ、代表でも3試合連続で得点に絡めずにいた中での、復調を予感させるゴールだった。

 後半に入っても日本の攻撃は止まなかった。2分、駒野からのクロスをハーフナーが打点の高いヘッドで合わせ、この試合2点目を決める。DF2人のマークがつきながらも、194cmの長身から生まれる絶対的な高さで相手を圧倒した。従来の日本にはない高さという武器を示せた点は、今後の戦いへ好材料だ。

 5−0となっても日本のゴールラッシュは終わる気配がない。11分には、ここまで攻撃のタクトを振るっていた中村に得点が生まれる。左サイドを攻めあがった長友佑都(インテル)の低いクロスを受け、左足を振り抜いた。7日のベトナム戦で1年ぶりに代表復帰した中村にとって実に約2年ぶりの代表ゴールだった。

 さらに23分には、香川のこの試合2ゴール目で7−0。29分には中村からのクロスを岡崎が頭で叩き込んだ。その後も長友がクロスバー直撃のシュートを放つなど、試合終了まで攻め続け、8−0という一方的な大勝。守備に関しても大量リードに気を緩めてミスを犯す場面もなく、タジキスタンの攻撃を後半のシュート1本に抑えた。

「自分の高さを活かすことができた。これを続けていくことが大事」
 代表初ゴールを含む2ゴールの活躍を見せたハーフナーは、持ち味を出せたことに充実した表情を見せた。1ゴール3アシストとMVP級の働きを見せた中村は、「結果は出たが、もっともっと上のレベルでもこれくらいやれるように精進したい」と、浮かれることなく次を見据えた。

 11月にはタジキスタンと北朝鮮でのアウェー2連戦が控えている。今日の勝利で勝ち点を7とした日本は得失点差でも2位以下を離してグループ首位に立った。今後の結果次第では11月11日のタジキスタン戦で3次予選突破が決まる可能性もある。ザッケローニ監督も試合後「2月の最終節まで遅らせず、(11月の)2連戦で決める」と意気込みを見せた。
 ベトナム戦も含めた今回の2試合、ザッケローニ監督は“確認”と“成長”をテーマに掲げていた。その中で課題とされていた本田の穴は中村が代役を担えることが“確認”できた。さらに絶対的な高さを持つ新戦力のハーフナーが結果を残し、“成長”も感じさせた。テーマをクリアし、新たなオプションも手に入れたザックジャパン。8−0という結果よりも、こちらのほうが大きな収穫だったと言えるかもしれない。

<日本代表出場メンバー>
GK
川島永嗣
DF
駒野友一
吉田麻也
今野泰幸
長友佑都
MF
長谷部誠
→細貝萌(62分)
遠藤保仁
岡崎慎司
→藤本淳吾(77分)
中村憲剛
香川真司
FW
ハーフナー・マイク
→李忠成(49分)