28日、翌日に控えたヤマザキナビスコ杯決勝に出場する鹿島アントラーズのオズワルド・オリヴェイラ監督とキャプテン小笠原満男、浦和レッズの堀孝史監督とキャプテン鈴木啓太が都内ホテルで記者会見を行なった。ナビスコ杯決勝で、両者が顔を合わせるのは今回で3回目。過去2回は2002年は鹿島、03年は浦和がタイトルを手にしている。今大会では鹿島は9年ぶり大会史上最多4度目、浦和は8年ぶり2度目の優勝を狙う。両者のクラブカラーである赤に染まる国立競技場で、優勝カップを掲げるのは果たしてどちらのクラブか――。
(写真:左から浦和・鈴木キャプテン、堀監督、鹿島・オリヴェイラ監督、小笠原キャプテン)
 ヤマザキナビスコ杯は今回で19回目を迎えた。明日、国立のピッチに立つのは5年ぶり7回目の決勝進出を果たした鹿島と、7年ぶり4回目のファイナリストとなった浦和だ。

 両監督は会見で、超満員が予想される舞台で戦えることへの喜びを口にした。
「レッズとして久しぶりにタイトルのかかったゲームとういうことで、チームの全員が非常に楽しみにしている。また、決勝戦ということで多くのサポーターの方がたくさんスタジアムに訪れると思う。決勝としてふさわしいゲームになるように全力で戦いたい」
 まず、堀監督が就任2試合目で迎える大一番への意気込みをこう語ると、対するオリヴェイラ監督も「レッズとともにファイナルの舞台に立てることを光栄に思う。明日は多くのサッカーファンが足を運んでくれるだろう。それにふさわしい高いレベルの試合を見せられればと思っている」と健闘を誓った。

 実際にピッチで火花を散らすことになる両キャプテンは、それぞれ相手の印象を述べた。鹿島について浦和・鈴木は「歴史がある、ずっとタイトルを獲ってきた選手たちのいる“大人のチーム”。間違いなく浦和にとって難しい試合になる。(鹿島に勝つために)若い選手が躍動してくれることを望む」と語った。鹿島・小笠原も「今まで何度もレッズと対戦してきた。タイトルを獲るうえで避けられない相手であり、すばらしい選手、スタッフ、サポーターのいるチーム」と浦和への高い評価を口にした。

 ともにJリーグ創設時から日本サッカー界をけん引してきた名門である。しかし、今季はリーグ戦での成績は両者ともに芳しくない。鹿島は、昨季、前人未到のリーグ4連覇に挑んだが、結果は4位。今季もすでに優勝の可能性はない。浦和は現在15位と、残留争いを演じてしまっている。それだけに、両者とも今大会での栄冠は是が非でも手にしたいところだ。

「ただの1勝ではない。タイトルのかかった試合。明日は1つのタイトルを獲れるチャンス」
 明日の勝利の意義を問われた小笠原はこう話し、今季初のタイトル獲得に強い意欲を見せた。対する鈴木の答えは現在、不振に陥るチーム状況を懸念したものだった。
「(勝てば)勢いに乗れると思う。タイトルを獲ることも大事だが、今の浦和には自信が必要」
「浦和レッズ」という名称になって初のタイトルを獲得した大会が03年のナビスコ杯だ。そこから浦和はリーグ戦、アジアチャンピオンズリーグ、天皇杯の主要大会で優勝し、日本を代表するクラブへと飛躍した。鈴木は03年の優勝を経験しているだけに、再び、今回の優勝がチーム浮上につながるとの思いは強い。

 キャプテンはさらにこう付け加えた。
「ナビスコ杯は、レッズがもう一度強いチームに変わるために必要なタイトル」
 両者の今季の対戦成績は2分(2−2、0−0)と全くの五分。明日の試合もワンサイドゲームになる可能性は低い。小笠原、中田浩二、曽ヶ端準ら黄金期をつくってきた経験ある選手を擁する”大人”の鹿島が、巧みな試合運びで15個目の星をエンブレムの上に加えるのか。それとも、山田直輝、高橋峻希、濱田水輝といった五輪世代が主力を担う“若い”浦和が、勢いでクラブ浮上のきっかけをつくることができるのか。いずれにしても、真っ赤に染まる聖地・国立競技場で、全国を熱くさせてくれる試合を期待したい。

 また記者会見後にはヤマザキナビスコ杯決勝前夜祭が開かれ、その中で今年度のニューヒーロー賞が発表された。この賞は1回戦から準決勝までを通じて活躍が顕著だった23歳以下の選手に贈られる。過去には名波浩(96年、磐田)、高原直泰(98年、磐田)、長谷部誠(04年、浦和)など、後の日本代表で中心となる選手が受賞してきた。

 今年、この賞に輝いたのは浦和の20歳、FW原口元気だ。ロンドン五輪を目指す世代だが、すでにA代表に選出され、9月から始まったブラジルW杯アジア3次予選にも帯同している将来有望なドリブラーだ。今年のナビスコ杯では3試合と少ない出場数の中で2得点と結果を残した。原口は受賞インタビューで「僕は(日本代表に帯同していたため)準々決勝、準決勝と出ていない。受賞できたのはチームメイトが決勝に進んでくれたおかげ」と、まず仲間への感謝の気持ちを口にし、「選ばれたからには責任感を持ってプレーしなければいけない」と気を引き締めた。03年に浦和がナビスコ杯を制した時はまだ小学生だったという原口だが、当時の印象は今も頭に焼きついている。
「(03年は田中)達也さんがニューヒーロー賞だった。決勝でもゴールを決めてMVPを獲得した。僕も偉大な先輩に追いつきたい。賞はもらったけど、内容にはまだまだ満足していないので、これからもっとうまくなっていきたいと思う」
(写真:決勝で勝利につながるゴールを決めたいと語った原口)

 均衡したゲームで勝負の行方を大きく左右するのが、一瞬の個の力。原口には、流れを変えるドリブルがある。彼が多くボールに触れ、ドリブルを仕掛ける場面が増えるほど、浦和はタイトルへ近付くはずだ。MVPとのダブル受賞も含め、ニューヒーロー・原口が、国立でどんなプレーを見せるのか。注目の一戦は13時5分、東京・国立競技場でキックオフされる。