今夏の五輪で金メダル獲得を目指すなでしこジャパン。カギを握るのが司令塔の宮間あや(岡山湯郷)だ。両足から繰り出されるキックの精度は男子顔負け。昨年はアジアサッカー連盟が選定するアジア年間女子最優秀選手に選ばれた。日本が世界に誇るゲームメーカーに、二宮清純がプレーの極意を訊いた。
二宮: 少年少女にフリーキックのコツを教えるとしたら?
宮間: もちろん、ボールをどういうふうに蹴るかはすごく大切です。ただ、私が常に意識していることは、チームが取ったFKを代表して蹴る気持ちを忘れないことです。PKにおいても同じことが言えますね。

二宮: セットプレーはチームの宝物という意識ですね。
宮間: そうですね。自分勝手に蹴ってはいけないものなので、キッカーとしての責任感を忘れてはいけないと思います。もちろん、セットプレーは毎回、うまくいくわけではありません。でも、たった1本のキックで試合の流れが変わることもありますからね。

二宮: 南アフリカW杯では公式球の「ジャブラニ」が不規則な変化をすると話題になりました。昨夏の女子W杯では改良を加えた「スピードセル」に変わりました。ボールの違いは感じましたか?
宮間: ジャブラニの方がインパクトした時に、無回転になったりするので、ボールの軌道はひどかったですね。

二宮: スピードセルはそれほどボールの軌道がブレないと?
宮間: 狙って蹴れば無回転になりますが、ジャブラニのほうがブレ球になりやすかったかなと感じますね。

二宮: 無回転のシュートはゴールキーパーが嫌がるとよく聞きます。当然、宮間さんはそれを意識して、ブレ球のようないやらしいシュートを打っているわけですね?
宮間: 状況によりますが、できる時は狙っています(笑)。

二宮: 点は取れるし、ゲームも組み立てられる。今がサッカーをしていて一番面白いのでは?
宮間: ……そんなことはないです(笑)。小さい頃の方が、上手だったんじゃないかなと思う時もあります。あまり戦術を知らなかったということもあると思うんですけど、自由にプレーしていた。もちろん、理屈ではめていく今のサッカーも楽しいです。ただ、そうじゃなかったサッカーもすごく好きでしたね。

二宮: 小さい頃に憧れていた選手は?
宮間: この人にずっと憧れていたということはないんですけど、ディエゴ・マラドーナには衝撃を受けましたね。さすがに5人抜きを見た時は、あんなのできるわけないと思いましたが(笑)。

二宮: 確かに。マラドーナは別格ですね。
宮間: 今はリオネル・メッシ選手が、マラドーナの再来と言われていますけど、ちょっと違うかなと思います。

二宮: マラドーナがボールを持つと、ボールも楽しそうですよね(笑)。
宮間: そうですね。ボールと仲良くなければ、あんなに上手に手でゴールを決められないですよ(笑)。

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