5日、ロンドン五輪アジア最終予選第4戦がヨルダンのアンマンで行われ、U-23日本代表はU-23シリア代表と対戦した。先制された日本は前半ロスタイム、MF永井謙佑(名古屋)の得点で同点に追いつく。しかし、後半45分、シリアのDFアルサリフに勝ち越しゴールを許す。日本は残り時間で追いつくことができず、1−2で試合終了。勝ち点、得失点差はシリアと並ぶものの、総得点で上回られ、グループ首位の座を明け渡すことになった。

 永井、最終予選初ゴール実らず(アンマン)
U-23シリア代表 2−1 U-23日本代表
【得点】
[シ] オウンゴール(18分)、アルサリフ(90分)
[日] 永井謙佑(45分+1)
「日本らしさが全然出せなかった。それでも結果を出せればいいと思っていたが、それも伴わなかった」
 試合後、MF山田直輝(浦和)は痛い敗戦をこう振り返った。勝てば五輪出場に王手をかける大事な一戦。日本の本来の持ち味はパスサッカーだ。しかし、この試合はデコボコした上に滑りやすいピッチを考慮し、ロングボール主体の攻めを展開する。慣れないサッカーではゲームを支配することができなかった。

 予期せぬアクシデントもあった。前半15分、今予選初のスタメン出場を果たしたMF山崎亮平(磐田)が空中で相手と競り合い、左腕から落下。山崎はこのプレーで左ヒジを痛めて続行不可能となり、代わりにFW大迫勇也(鹿島)が投入された。
 さらに不運は続き、18分、日本はオウンゴールで先制を許す。失点に絡んだのは交代直後の大迫だった。大迫はシリアがゴール前へ放り込んだFKを頭で触る。これが後ろに逸れた上にGK権田修一(FC東京)がボールをファンブルし、ゴールへ吸い込まれた。

 嫌なかたちで先制された日本は、シリアの素早いプレッシャーに攻めのかたちをつくれない。前線にロングボールを入れても、セカンドボールを拾えない場面が目立った。
 だが、前半ロスタイム、そのロングボールから同点弾が生まれる。DFラインからのボールを大迫がピッチ中央付近で相手と競り合いながらトラップ。前を向き、右前方にスルーパスを送る。反応した永井が快足を飛ばしてこれに追いつき、右足でゴール左に流し込んだ。大迫の持ち味であるポストプレー、永井の抜群のスピードが噛み合ったゴールだった。

 後半、主導権を握りたい日本は、ボールを奪い、パスをつないで攻撃を組み立てようとする。だが、コンディションの悪いピッチに加え、気持ちばかりが焦ってパスミスを連発。ボールを奪っては奪い返され、キープすることができない。何とか攻撃を活性化したい日本は、30分、MF山村和也(鹿島)に代えてMF扇原貴宏(C大阪)を投入。昨年11月の2試合(バーレーン戦、シリア戦)で効果的なパスを供給していたボランチに状況の打開を託す。

 この交替策が功を奏し、攻撃に徐々にリズムが出始める。36分、扇原のパスを受けた山田がダイレクトで大迫へ浮き球のパス。PA内右で受けた大迫が絶妙なトラップから右足でシュートを放つ。これはシリアGKのファインセーブに遭い、勝ち越しには至らず。その後も扇原のパスに永井が裏へ抜け出すなど、攻撃のかたちをつくるがゴールが遠い。

 そしてスタジアムに引き分けの空気が漂い始めた終了間際、痛恨の失点を喫した。日本の左サイド深くからのロングスローをDFがクリア。このボールを拾ったDFアルサリフに、ゴールから約35mの位置で右足を振り抜かれた。ボールは少しブレながら、下がりつつ対応した権田の頭上を抜いた。土壇場での勝ち越しゴール。日本は残り時間でDF濱田水輝(浦和)を前線に上げてパワープレーを仕掛けるが、体を張って守るシリアからゴールを奪えず、終了のホイッスル。この結果、グループ首位から陥落。2試合を残し、自力での五輪出場権獲得の可能性が消滅した。

「みんなが頑張ってくれたのに、最後守らないといけないところで守れず、本当に申し訳ない」
 悪夢の敗戦の責任を、権田はひとりで抱え込んだ。だが、守護神がファインセーブでチームを救う場面もあった。権田ひとりが戦犯ではない。攻撃陣の決定力不足は改善されていないままだ。五輪出場権獲得には、残る2試合で勝利かつゴールを量産し、得失点差、総得点でシリアを上回る必要がある。

 5大会連続の五輪出場へ黄色信号が灯った関塚ジャパン。権田は「次に切り替えて残り試合をしっかりと戦いたい」と前を向いた。次戦は22日(水)、アウェーでマレーシアと対戦する。戦いは終わったわけではない。

<日本代表出場メンバー>

GK
権田修一
DF
比嘉祐介
鈴木大輔
濱田水輝
酒井宏樹
MF
山口螢
山村和也
→扇原貴宏(75分)
山崎亮平
→大迫勇也(18分)
山田直輝
東慶悟
FW
永井謙佑