5日、なでしこジャパン(女子日本代表)はポルトガルで行われているアルガルベ杯で女子米国代表と対戦した。日本は後半38分、FW高瀬愛実(INAC神戸)のゴールで先制すると、反撃を許さず1−0で試合終了。26回目の対戦で米国から“初勝利”をあげた(W杯決勝はPK戦勝利のため引き分け扱い)。日本は7日に行われる優勝決定戦に臨む。

 宮間、CKから決勝点アシスト!(ファーロ)
日本代表 1−0 米国代表
【得点】
[日] 高瀬愛実(83分)
 昨年のW杯決勝から8カ月ぶりの対戦で、FIFAランキング1位の米国に90分間で勝利した。勝因は総合力の高さ。大黒柱の澤穂希(INAC神戸)が体調不良で欠場するなか、他の選手たちが力を合わせ、再戦を制した。

「(調子が悪かった)W杯決勝での前半30分間を反省して、それが生きた」
 佐々木則夫監督がこう振り返ったとおり、日本は開始から主導権をつかみにかかる。2分にはMF宮間あや(岡山湯郷)がさっそくシュート。守備では積極的にプレスをかけ、攻撃では宮間を起点に細かくパスをつないで、体格で勝る米国の守備網をかいくぐっていく。

 10分、PA内右でパスを受けた安藤梢(デュイスブルク)が右足でシュートを放つも、これはGKの正面をついた。18分には宮間からチャンスが生まれる。左サイドでパスを受けると、相手DFをかわし、右足でクロス。鋭いボールにファーサイドのFW永里優季(ポツダム)が頭から飛び込んだが、わずかに合わなかった。

 日本はチャンスをつくるも、得点を奪えない。すると時間が経つにつれ、米国のスピードとパワーに押され始める。26分には、後方からのロングボールに抜け出したFWアレックス・モーガンがDFと競り合いながら左足を振り抜く。シュートはゴール右ポストを叩き、日本は難を逃れた。DF鮫島彩(モンペリエ)は「スピードで振り切られる場面が多かった」と反省したように、ロングボールへの対応はW杯から続いている課題だ。結局、両チームともゴールを奪うことはできず、0−0で前半を折り返す。

 迎えた後半も、序盤から米国に押し込まれる展開が続く。13分、左サイドからのクロスに対するクリアボールを、モーガンがダイレクトシュート。18分には、再びモーガンにPA内でシュートを許す。いずれもゴールをわずかに外れたものの、日本は防戦一方となる。

 苦境を打破したい日本は、20分にFW高瀬、MF川澄奈穂美(INAC神戸)、DF宇津木留美(モンペリエ)を投入。川澄は右サイドを積極的に仕掛け、高瀬は裏へ抜け出す動きで流れを引き戻しにかかる。
 そんな38分、待望の先制点を奪い取る。決めたのは高瀬だ。宮間の左CKがファーサイドへ。これにDFの後ろから体を入れて、頭で合わせる。ボールはGKホープ・ソロの左を破り、ゴールネットを揺らした。W杯決勝では出場機会がなかった高瀬が大仕事をやってのけた。

 リードした日本は、残り時間も前がかりになった米国のスペースを突き、守りには入らない。守備陣も体を張って、相手に簡単にシュートを打たせなかった。ロスタイムにはFKからMFシャノン・ボックスに頭で合わせられたものの、シュートはわずかにゴール上へ外れた。最後の決定的なピンチも凌いだ日本が、米国から歴史的な勝利を収めた。

「多く交代選手を使ってチームがひとつとなって米国と戦えたことを誇らしく思う」
 この大会からキャプテンを務める宮間は、こう喜びを口にした。殊勲のゴールを決めた高瀬は「うれしいけど1点は1点。まだ決勝もあるので、また点を取りたい」とさらなる得点へ意欲を見せた。

 W杯に続き、米国に“連勝”を収めた佐々木監督は「決勝に向けて、ひとつひとつ成長できるように、質の高さを求めていきたい」と気を引き締める。試合を通してチャンスをつくりだした日本だが、奪った得点は1点のみ。強豪相手に防戦一方ではなく、シュートまでのプロセスをつくれた点は評価できる。今後はフィニッシュ精度の向上がカギとなるだろう。キャプテンの宮間も「守備の部分でももっと完璧にやっていけるところもあった。結果を残せたことは嬉しいが、まだまだレベルアップしていきたい」と浮かれてはいなかった。
 日本は7日の決勝でランキング2位のドイツと対戦する。