パ・リーグが導入しているからといって、セ・リーグも“右へ倣え”する必要はあるまい。DH制だって、導入しているパ・リーグ、導入していないセ・リーグ、それぞれの野球に違いがあるから面白いのではないか。

 パ・リーグが実施している予告先発制の導入を巡って、セ・リーグが揺れている。反対派の急先鋒は横浜DeNAのデニーこと友利結投手コーチだ。
「ウチは手の内を見せられるレベルにない」
 これは本音だろう。なにしろ昨季のチーム最多勝は三浦大輔と高崎健太郎の5勝。勝ち頭が5勝などという話は聞いたことがない。

 この問題に対する私の見解はこうだ。
<予告先発制の導入は相撲で言えば立ち合いの変化を禁じるようなものである。正々堂々と言えば聞こえはいいが、相手はどう出てくるか、どんな策を用いるかという読み合い、探り合いの醍醐味が損なわれるのは少々、寂しい。時には立ち合いではたき込みや蹴たぐりもありだろう。それがグラウンドにピリッとした緊張感をもたらせることにもつながる>(スポーツニッポン2月15日付)

 それでなくても戦力格差はパ・リーグよりもセ・リーグの方が顕著である。昨季、パ・リーグは優勝した福岡ソフトバンクがブッチ切り優勝を果たし、千葉ロッテが最下位に沈んだ。しかし、一昨年はそのロッテが日本一を達成しているのだ。まさに、パ・リーグは乱世の状況を呈している。
 一方でAクラスとBクラスが固定されつつあるセ・リーグ。予告先発制が導入されれば、さらに格差は拡大する可能性がある。デニーが異を唱えるのは現場を預かる者としては当然だ。

 予告先発制を支持する代表的な声として、「誰が投げるかあらかじめ分かっていれば、観戦する日を決めやすい」というものがある。確かにそのとおりだが、DeNAのような、先発陣のほとんどがローテーションの谷間のようなチームでは、そうもいくまい。

 昨季、DeNAの防御率は両リーグ最低の3.87だった。これを改善するのがデニーの当面の仕事だ。キャンプでは「体力がないから、後のランニングを考えてピッチングで球数を減らすヤツが何人かいる。すぐにでも(2軍に)落としたいと思っている」(スポーツ報知2月5日付)と声を荒げるなど“鬼”に徹していた。
 ランニングの量とピッチングの質に、どんな因果関係があるのかは定かではないが、まずはやってみることである。「これまでどおり」が一番よくない。4年連続最下位の自分たちに、もう失うものは何もないんだということをデニーは強調すべきだ。

「熱いぜ!」をキャッチフレーズに“キヨシ人気”に沸くDeNA。CS争いに割って入るには投手陣の建て直しが急務である。
 昨季は一昨季に比べて1点以上防御率を改善(4.88→3.87)したが、これは低反発の統一球、すなわち“飛ばないボール”によるもの。せめて3点台前半を目指したい。

<この原稿は2012年3月18日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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