9日、2014年ブラジルW杯に向けたアジア最終予選の組み合わせ抽選会が、マレーシア・クアラルンプールで行われた。日本代表(FIFAランキング33位)はグループBに入り、オーストラリア(同20位)、イラク(同76位)、ヨルダン(同83位)、オマーン(同92位)と同組になった。同予選はホーム&アウェーで計8試合が行われ、上位2チームが南アフリカへの切符を手にする。各組3位はアジア地区プレーオフを行い、勝者が南米予選5位の国と大陸間プレーオフを戦う。
 ブラジルへ突き進むザックジャパンの前に立ちふさがったのは、いずれも過去に日本を苦しめた難敵だ。同じBグループにはFIFAランクアジアトップのオーストラリア、中東勢のイラク、ヨルダン、オマーンが顔を揃えた。

 初戦の相手・オマーンは、通算対戦戦績は日本の5勝3分と負けはない。だが、現在の監督は南アフリカW杯でカメルーン代表を指揮していたポール・ル・グエン。W杯では日本に敗れており、その雪辱を虎視眈々と狙っている。中心選手はGKのアリ・アル・ハブシだ。プレミアリーグのウィガンの正GKであり、過去の対戦でも、194センチの長身に似合わぬ反射神経でファインセーブを連発していた。3次予選ではグループを2位で通過し、ホームでオーストラリアを1−0で撃破している。

 2戦目に対戦するのはヨルダンだ。これまでの対戦戦績は日本の1勝1分。ドローは昨年のアジア杯でのグループステージで対戦した時のもので、1勝しているといっても、04年の同杯で辛くもPK戦の末に破っただけだ。ヨルダンのスタイルは守備を固めた上でのカウンター攻撃。日本は過去2戦ともに先制されて、ヨルダンの堅守を崩すことに苦労した。

 そして、6月に組まれた3連戦の最後に激突するのが、グループ最大のライバル・オーストラリアだ。同国との対戦で記憶に新しいのが、昨年1月のアジア杯決勝。延長戦に及ぶ激闘の末、李忠成(サウサンプトン)の劇的ボレーで4度目のアジア王座に就いた。ただ、幾度となく決定的なピンチを迎え、どちらが勝ってもおかしくない接戦だった。オーストラリアは多くの選手が欧州リーグでプレーしており、全体的にフィジカル能力が高い。プレミアリーグでプレーするMFティム・ケーヒル(エバートン)には、過去5試合で4ゴールと苦しめられている。Jリーグでプレーする選手にも要注意だ。FWジョシュア・ケネディ(名古屋)は、2年連続で得点王を獲得。194センチの長身で空中戦に圧倒的な強さを見せている。他にもDFマシュー・スピラノビッチ(浦和)も代表選出が濃厚で、日本のサッカーを知っている選手の存在は、戦う上で大きな脅威となる。また、GKマーク・シュワルツァーを擁する守備陣も簡単には崩れない。南アW杯最終予選では8試合で失点わずかに1という鉄壁ぶりを披露した。3次予選ではオマーンに敗れる波乱はあったものの、5勝1敗と2位に勝ち点差7をつけて、早々に最終予選進出を決めた。

 グループBで最後に顔を合わせるのは、元日本代表監督のジーコが率いるイラクだ。3次予選直前に就任したジーコは、5勝1敗の成績でグループ首位通過に導いた。日本を知り尽くしているだけに、ラクな戦いにはならないだろう。もともと07年のアジア杯で優勝するなど地力があり、現在の中心メンバーはアテネ五輪でベスト4に躍進した選手たちだ。キープレーヤーはFWのユニス・マフムード。アテネ五輪のメンバーで、07年アジア杯では得点王に輝いた。イラクとの通算戦績は日本から見て2勝2分3敗と互角の成績。2分のうちの1つは、日本サッカー史に残る出来事となった“ドーハの悲劇”である。

 一筋縄ではいかない相手が出揃ったグループBはオーストラリア以外はすべて中東勢との対戦となった。最終予選は来年6月にまで及ぶ長丁場だ。灼熱の国での戦いをいかに乗り切るかも大きなウエイトを占めてくる。

 日本は2012年内に5試合を消化するスケジュールとなる。つまり、年内を全勝すれば、一気に勝ち点15を獲得できる。カギとなるのはスタートの6月にある3連戦だろう。まずはホームでオマーン、ヨルダンと対戦し、アウェーでオーストラリアと激突する。中東でのアウェーゲームがないのはひとつの救いだ。南アW杯最終予選で日本が積み上げた勝ち点は15だった。この3連戦で、勝ち点9を確保できれば、残りの試合を有利に運べるのは間違いない。アルベルト・ザッケローニ監督もそれを踏まえた上で「年内の5試合が大切なシリーズになる」と語った。ブラジルに向け、大きなヤマがやってくる。

◇アルベルト・ザッケローニ日本代表監督のコメント
「どちらのグループがどちらになろうと中東勢が多くなることはわかっていた。(抽選を終えた心境は)学校の期末試験の前日のような気持ち。しっかり準備をしてその時を待つだけ。個人的には初めてのW杯最終予選となるが、先のことまではあまり考えずに目の前の1試合1試合をしっかり戦っていく」

◇原博実強化技術委員長のコメント
「南アフリカW杯の最終予選でもオーストラリアと同じだったので、“またか”という思いは正直ある。ただ、どこと当たっても簡単な相手ではなかった。(抽選結果は)決して悪くはないと思う。いい準備をして、(初戦の)オマーン戦でいいスタートを切りたい」

◇日本のスケジュール

■第1戦(6月3日) オマーン戦(埼玉スタジアム2002)

■第2戦(6月8日) ヨルダン戦(埼玉スタジアム2002)

■第3戦(6月12日) オーストラリア戦(アウェー)

■第4戦(9月11日) イラク戦(埼玉スタジアム2002)

■第5戦(11月14日) オマーン戦(アウェー)

■第6戦(2012年3月26日) ヨルダン戦(アウェー)

■第7戦(6月4日) オーストラリア戦(ホーム:会場未定)

■第8戦(6月11日) イラク戦(アウェー)