11日、ロンドン五輪女子代表選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソンがナゴヤドームを発着点に行われ、アルビナ・マヨロワ(ロシア)が2時間23分52秒で優勝を果たした。日本人トップには尾崎好美(第一生命)が2時間24分14秒の2位でフィニッシュした。アテネ五輪金メダリストの野口みずき(シスメックス)は2時間25分33秒の6位に終わった。
 代表選手選考には、韓国・大邱で行なわれた昨年の世界選手権と、国内選考会となる横浜国際マラソン、大阪国際マラソン、そして今大会のレース内容を考慮し、五輪での活躍が期待できる3人が選出される。注目の選考理事会は明日12日に行われ、男女合わせて6人の日本代表が発表される。
 ロンドン五輪への切符を懸けた女子マラソンの最終選考会、名古屋ウィメンズ。今大会には尾崎、野口、渋井陽子(三井住友海上)、赤羽有紀子(ホクレン)ら日本のトップランナーが顔を揃えた。

 レース序盤、先頭集団が15人ほどで形成される中、主役に躍り出たのは、4年4カ月ぶりのフルマラソンとなる野口だ。ペースメーカーの後ろに回ることなく、並走する形で先頭集団を引っ張った。

 ところが17キロ過ぎ、ここまで先頭を引っ張ってきた野口がついに集団から脱落する。
 野口が遅れた後、予定の25キロより早くペースメーカーが離脱すると、形勢が動き始める。7人の先頭集団が1キロを3分20秒前後で走っていたところを、24キロから25キロは3分33秒と明らかにペースダウンする。そこで息を吹き返してきたのは野口だ。29キロ手前で野口は先頭集団に追いつくと、再び先頭に立つ。

 野口の帰還に合わせるかのように先頭集団も徐々に動きを見せる。給水を経て、32キロ過ぎの坂道で仕掛けたのは尾崎。ここで野口、渋井、勝又美咲(第一生命)が離される。野口は金メダリストの底力で驚異的な粘りを見せたものの、優勝争いに絡むのはここまでだった。
 レースはここからさらに動き出す。レース序盤は第2集団にいたロシアのマヨロワが後方から先頭集団を猛追、一気にトップに立つと日本人を突き放しにかかる。そこで食らいついたのが、尾崎、中里麗美(ダイハツ)、伊藤舞(大塚製薬)だ。ここまで常に集団の好位置につけていた3人が日本人の意地を見せる。

 しかし、37キロ手前で伊藤が集団から脱落し、尾崎、中里もマヨロワに離される。ロシア代表としての五輪出場を目指すマヨロワの独走状態になり、レースの焦点は優勝争いから、昨年の世界選手権日本代表の2人の日本人トップ争いに絞られた。

 終盤での一騎打ち、尾崎には苦い経験があった。選考レースのひとつ横浜国際での敗戦だ。優勝した木崎良子(ダイハツ)に一時はスパートをかけて突き放したものの、42キロ目前で逆転を許した。その経験から今回は、「絶対いけると思えるとこまで溜めていた」と、スパートのタイミングを虎視眈々と待ちながら、中里と並走を続けていた。

 尾崎が仕掛けたのは42キロ手前だ。「横浜では失敗しているので、今回は最後まで力を出し切ろうと思って、スパートしてからはゴールまで一直線に走りました」と振り返ったように、2009年の世界選手権銀メダリストは力強いストライドからグングン中里を引き離し、2時間24分14秒というタイムでゴールした。

 昨年の世界選手権、横浜国際に続いて3度目の選考会挑戦となった尾崎は「自分でも不思議なくらい落ち着いていた。絶対勝つという思いがよかった」と語ったメンタル面の充実がロンドンへの道の後押しとなった。

 今回、代表入りの基準となるタイムは先に行われた大阪国際で優勝した重友梨佐(天満屋)の2時間23分23秒だった。尾崎も「ちょっと遅かったけど、日本人1位。オリンピックへの気持ちを評価していただければと思う」とタイムには不満を持ちつつも、レース内容をアピールした。また今回は、アテネ五輪金メダリストで日本記録保持者の野口に加え、世界選手権5位の赤羽、元日本記録保持者の渋井などの実力者に勝っての2位だ。「名前負けしそうなところはあった。このメンバーに勝ったので、文句なしに勝ったと言える」と、今回の結果に自信をのぞかせる。

 バルセロナ五輪からアテネ五輪まで4大会続けてメダルを獲得してきた女子マラソンは、北京五輪では入賞者すら出すことがかなわなかった。今回、2位に入り、出場が有力視される尾崎が「出場できればうれしいけど、結果を出さなきゃダメ」と言うように、マラソン強国復活に懸ける思いは選手も強い。ロンドンで世界と戦うメンバーは果たして誰になるのか。明日12日に行われる日本陸上連盟の選考理事会を経て、3人の女子マラソン日本代表が決まる。

 上位の成績は以下のとおり。

1位 アルビナ・マヨロワ(ロシア)2時間23分52秒
2位 尾崎好美(第一生命)2時間24分14秒
3位 中里麗美(ダイハツ)2時間24分28秒
4位 渋井陽子(三井住友海上)2時間25分2秒
5位 伊藤舞(大塚製薬)2時間25分26秒
6位 野口みずき(シスメックス)2時間25分33秒
7位 オレーナ・シュクルノ(ウクライナ)2時間25分49秒
8位 赤羽有紀子(ホクレン)2時間26分8秒
9位 宮内洋子(京セラ)2時間26分23秒
10位 勝又美咲(第一生命)2時間28分1秒