いよいよ3カ月を切ったロンドン五輪。その大舞台に向けて、8日、“なでしこジャパン”ことサッカー女子日本代表とU−23日本代表(男子五輪代表)の壮行試合「キリンチャレンジカップ2012」の日程と対戦相手が発表された。7月11日に国立競技場で、なでしこジャパンはFIFAランク10位のオーストラリア代表と、U−23代表は2大会連続で五輪出場のニュージーランド同代表と対戦する。なでしこジャパンの佐々木則夫監督は、オーストラリア代表を「ヨーロッパスタイルで、高さ・パワー・スピードを兼ね備えた総合力のあるチーム」と評し、「五輪初戦のカナダ戦をイメージして戦う」と語った。“仮想カナダ”相手になでしこジャパンはロンドンでの命運を占う。
(写真:左から佐々木監督、小倉会長、キリンビール磯崎社長、関塚監督)
 オーストラリアはロンドン五輪には出場できなかったものの、昨年のW杯ではベスト8入りを果たしており、決して侮ることはできない。指揮官も来日するメンバーについて「各ポジションの主要な選手で戦ってくれるという諸条件等は確認している。質のある選手が揃っていれば、充分な相手」と話し、調整相手として不足はないと見ている。今回のオーストラリア戦を五輪初戦と位置づけているなでしこジャパン。佐々木監督は6人ある交代枠も本番同様に3人しか使わないことを明言した。

 佐々木監督が強く初戦を意識する背景には、4年前の反省がある。なでしこジャパンは、ベスト4に入った前回の北京五輪初戦でニュージーランドと対戦。試合は2点のリードを許すなど苦戦しながらも、宮間あや、澤穂希のゴールで追いつき辛うじて引き分けに持ち込んだ。「自分たちのサッカーがなかなかできなかった。いい準備をして臨んだが、オリンピックの第一戦は魔物がいるということを体験した」と佐々木監督。初戦の怖さを痛感した前回と同じ轍は踏まない考えだ。
(写真:五輪で初のメダルを目指すなでしこジャパンの佐々木監督)

 一方、U−23代表の関塚隆監督は「本大会前に出場国と戦えるというのは、非常に貴重」と、壮行試合の意義を述べた。対戦するニュージーランドについては「恵まれた体格の中から、しっかりと守備から攻撃を仕掛けてくるチーム」と評し、試合に向けては「試合状況に応じて点を取りに行くパターン、試合を終わらせる形を作っていきたい」と語った。試合は7月上旬に決定する本大会のメンバー(18名)での初陣となる。「どういうメンバーになるか、今は楽しみと、悩みと半々」と、オーバーエージ枠、欧州組の招集など問題が山積みの選手選考の苦悩を垣間見せた。

 壮行試合後のスケジュールについては、なでしこジャパンは、試合の翌日(12日)にオーストラリアと練習試合をした後、国内合宿を行い、最後にヨーロッパで強化試合を組みたい考えだ。佐々木監督曰く「欲張りなスケジュール」で調整中だという。一方のU−23代表は11日の試合後にチームは一旦解散し、14、15日のJリーグを終えてから再招集し、渡欧する予定だ。

 会見の最後には、なでしこジャパン、U−23の両指揮官がロンドン五輪に向けての抱負を色紙に書いて発表した。なでしこジャパンの佐々木監督は“新たなる挑戦”とし、「W杯では優勝したが、ロンドン五輪については、新たなる挑戦。しっかり準備をして、皆さんの期待に添えるように頑張りたい」と語った。U−23代表の関塚監督は、「打倒」の意味を込めた“蹴倒(しゅうとう)・世界”という言葉をしたためた。「世界に挑むのではなく、しっかりと倒していく。そういう強い気持ちで戦っていきたい」と力強く話し、「なでしこジャパンとともに世界を相手に戦っていきたい」と、共闘を誓って会見を締めた。
(写真:ロンドン五輪での意気込みを書いた色紙を掲げる関塚監督)

 刻一刻と近づくロンドン五輪に向けて、小倉純二日本サッカー協会会長は、なでしこジャパンについて「昨年のW杯でチャンピオンになり、チャレンジを受けるという立場」とし、U−23代表については「(グループリーグで敗退した)北京のリベンジ」と、両代表の今大会での位置づけを表現した。メダルが期待されるなでしこジャパンに対し、U−23代表の現実的な目標は、シドニー五輪以来の決勝トーナメント進出だ。とはいえ、11日の壮行試合は、男女ともにオリンピックに向けての試金石となることに変わりはない。大舞台まで2週間と迫る中で、確かな手応えと自信を手にし、ロンドンへのステップにしたい。

<キリンチャレンジカップ2012>
◇7月11日(水)
なでしこジャパン  × オーストラリア女子代表     17:05キックオフ
U−23日本代表  × U−23ニュージーランド代表   19:55キックオフ
東京・国立競技場