24日、日本サッカー協会はアジア最終予選の開幕3連戦(6月3日=対オマーン、8日=対ヨルダン。12日=対オーストラリア)に臨む日本代表25名を発表した。前日のアゼルバイジャン戦に出場した選手を中心に、所属チームの試合日程の影響で同戦では招集が見送られたMF遠藤保仁(G大阪)やDF吉田麻也(VVV)らがメンバーに入った。また、前日の試合でA代表デビューを果たしたFW宮市亮(ボルトン)、MF高橋秀人(FC東京)、DF酒井宏樹(柏)が引き続き選出されている。その一方で、前日の試合で出場機会のなかったMF長谷川アーリアジャスール(FC東京)、FW原口元気(浦和)などが選考漏れとなった。
 5大会連続のW杯出場へ大事な最初の3試合、ザックジャパンは万全の態勢を整えた。攻撃陣ではアゼルバイジャン戦でいい動きを見せたMF本田圭佑(CSKAモスクワ)や宮市らに加え、遠藤やFWハーフナー・マイク(フィテッセ)といった本来の主力もメンバー入り。守備陣も不動のCBであるDF今野泰幸(G大阪)と吉田が復帰した。右足を骨折し、長期離脱中のFW李忠成(サウサンプトン)を除き、現時点のベストメンバーと言える布陣だ。さらに、今月25日から始まる代表での活動期間は、6月12日のオーストラリア戦までの19日間(一部選手は遅れて合流)。昨年のアジア杯以来となる長期間、ともにトレーニングと試合を重ねることでチームの成熟も図れる。

 選考での注目ポイントは、前日の試合でA代表デビューを果たした宮市、酒井、高橋が引き続き選出されたことだ。酒井は得意の高速クロスで決定機を演出して存在感を示した。彼の積極的な攻撃参加と精度の高いクロスは、最終予選でも武器になる。

 高橋は遠藤、MF長谷部誠(ヴォルフスブルク)、MF細貝萌(アウグスブルク)らボランチのバックアッパーとして期待される。アゼルバイジャン戦では後半開始からピッチに立ち、豊富な運動量と高い技術で攻守に貢献。指揮官も「まだ若い選手だが、非常に気に入っている」と評価する。

 そして、3人の中で代表の“最終兵器”と呼べるのが宮市だ。アゼルバイジャン戦では後半途中から出場機会を得ると、一瞬で相手を置き去りにするドリブルを披露。さらに惜しいシュートや決定機を演出するなど、短い時間ながらインパクトを残した。

 これまで代表のサイドでは、香川真司(ドルトムント)や岡崎慎司(シュツットガルト)、清武弘嗣(C大阪)が起用され、バックアッパーとして藤本淳吾(名古屋)が招集されるケースが多かった。しかし今回、宮市は代表に残り、藤本は落選。ザッケローニ監督は、この選考について「藤本はアシストを得意とするタイプ。宮市はゴールに迫ることが得意な選手だ。宮市の特徴は両サイドをこなせ、サイドで幅を持たせられる。さらに1対1に強く、スペース、ゴールに向かって仕掛けられる能力を持っている」と理由を明かした。最終予選では相手が守りを固めてくる展開が予想される。膠着状態を打開する役割が宮市には託されそうだ。

 ただ、宮市を“最終武器”として活かすには課題もある。アゼルバイジャン戦では、彼に対する足下へのパスが多かった。100メートル10秒台の快足をより生かすには、もっとスペースへ抜けるボールを増やしたいところだ。実際、宮市は裏への動き出しを多く見せていただけに、周囲がまだ彼の特徴を把握しきれていないように映る。ハーフナーの“高さ”同様、宮市の“速さ”は日本にとって必要なオプション。この代表での活動を通じ、若きスピードスターを輝かせる方法をチーム全体で共有したい。

 3連戦のなかでも一番のヤマ場となるのは、やはり前回のW杯予選やアジア杯でも激闘を繰り広げてきたアウェーのオーストラリア戦だろう。その前の2試合はホームで戦うだけに、できれば勝ち点6で南半球に飛びたい。だが、ザッケローニ監督は「これまでの(指導者生活)30年間で学んだことは、1つ1つの試合をこなしていくことが大事ということ」と、まずは初戦のオマーン戦に全力を注ぐ考えだ。

 25日からの合宿では、すべて冒頭15分間以外は完全非公開。指揮官は「相手を有利にさせるようなことはひとつもしたくない」と完全に本気モードだ。ザッケローニ体制になって1年8カ月。まさに人事を尽くして、決戦に挑む。

<日本代表メンバー25人>

GK
川島永嗣(リールセSK)
西川周作(サンフレッチェ広島)
権田修一(FC東京)
DF
駒野友一(ジュビロ磐田)
今野泰幸(ガンバ大阪)
栗原勇蔵(横浜F・マリノス)
伊野波雅彦(ヴィッセル神戸)
長友佑都(インテル・ミラノ)
槙野智章(浦和レッズ)
内田篤人(FCシャルケ04)
吉田麻也(VVVフェンロ)
酒井宏樹(柏レイソル)
MF
遠藤保仁(ガンバ大阪)
中村憲剛(川崎フロンターレ)
長谷部誠(ヴォルフスブルク)
細貝萌(アウグスブルク)
本田圭佑(CSKAモスクワ)
高橋秀人(FC東京)
FW
前田遼一(ジュビロ磐田)
岡崎慎司(シュツットガルト)
ハーフナー・マイク(フィテッセ)
香川真司(ボルシア・ドルトムント)
清武弘嗣(セレッソ大阪)
宮市亮(ボルトン)