2019年に日本で開催されるラグビーW杯の運営主体となる「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」が発足し、29日に第1回理事会が都内ホテルで開催された。組織委の会長には日本経団連の御手洗冨士夫名誉会長(キャノン会長兼社長)が就任。副会長には日本オリンピック委員会の竹田恆和会長、日本ラグビー協会の森喜朗会長がそれぞれ就いた。理事会後の会見で、御手洗会長は「政官財がスクラムを組んで組織委を設立した。単なるスポーツの1イベントではなく、日本中を巻き込んだナショナルプロジェクトにしなくてはいけない」と意気込みを語った。
(写真:組織委発足でスクラムを組む(右から)森副会長、御手洗会長、竹田副会長)
「我々にとっては大きな挑戦」
 御手洗会長は7年後のラグビーW杯の開催をそう位置づけた。過去7回を数えるW杯が開かれたのはニュージーランド、オーストラリア、イングランド、南アフリカ、ウェールズ、フランスといずれもラグビーの伝統国ばかり。15年大会もイングランドで2度目の実施が決まっており、日本は伝統国以外では初めてホスト国の大役を務めることになる。

 言うまでもなくラグビーW杯はサッカーW杯、五輪に次ぐ、世界のビッグスポーツイベント。前々回の07年フランス大会では過去最多の225万人を動員しており、3年後のイングランド大会では、これを上回る約280万枚のチケット販売を予定している。

 日本は02年にサッカーW杯を実現させているが、その際は韓国との共催だったため、全国10都市で行われた試合数は32。しかし、19年のラグビーW杯では全国10会場を目安に48試合を実施する。また大会期間も約1カ月半に渡り、ラグビーW杯(約1カ月)、五輪(17日間)と比較すれば長期のイベントとなる。「日本では過去最大規模の大会」と御手洗会長が語るようにW杯成功には、試合会場選びや参加国・地域のキャンプ地選定、集客やチケット販売、ボランティアスタッフの募集など、クリアすべき課題が山積している。

 今回の組織委には東芝の岡村正相談役、サントリーの佐治信忠会長兼社長、トヨタ自動車の張富士夫会長、パナソニックの中村邦夫会長ら、トップリーグに参戦する企業チームのトップが理事として名を連ねた。選手、代表監督経験者からは神戸製鋼の平尾誠二のGM兼総監督が理事に。既にW杯開催の実績があるサッカー界から日本サッカー協会の田嶋幸三副会長も理事に選ばれた。

 日本では大きなスポーツイベントの招致が続いている。先日、一時選考を通過した東京が五輪とパラリンピック開催を目指すのは20年、また女子サッカーW杯も23年の招致を視野に入れる。五輪招致委の理事長も務める竹田副会長は「ラグビーは2016年から五輪種目になる。オリンピックとラグビーは近い。2020年のオリンピック開催が決定し、2019年、2020年と日本に元気をもたらせる大会を続けて実施できれば素晴らしい」と相乗効果に期待する。しかし、ラグビーW杯では放映権料やスポンサーからの協賛金などはすべて国際ラグビーボードに入るため、日本の組織委が大会を黒字にするには入場料収入が頼みだ。もし東京五輪・パラリンピックが実現した場合には、ラグビーが埋没しない工夫も求められる。

 今後は12月に第2回理事会を開催し、大会スローガンや試合会場選定のプロセスや立候補の条件などを決定。14年中に試合開催会場(10前後)を決める予定で、その後、16年頃には各国・地域のキャンプ地を選考する。森副会長は現在、改修を検討中の国立競技場に触れ、「2018年の完成を目標にしたい。このラグビーW杯に間に合わないと意味がない」と大会のメイン会場とすべく議論を急ぎたい考えを示した。アジア初の開催ということもあり、近隣諸国で一部の試合を実施するプランもある。

「日本全国を巻きこむ勢いで成功させたい」と御手洗会長はW杯への強い決意をみせた。各界のトップが揃った組織委が、どこまで機能するか。スクラムを組むだけでなく、ボールを前へ前へと進める更なる推進力が必要になる。