12日、ブラジルW杯アジア最終予選第3戦がオーストラリアのブリスベンスタジアムで行われ、日本代表はオーストラリア代表と対戦した。日本は後半20分にDF栗原勇蔵(横浜FM)のゴールで先制。しかし、同25分、MFルーク・ウィルクシャーに同点弾を決められる。その後、日本は勝ち越し点を狙うものの、相手ゴールをこじ開けることができず、1−1で試合終了。6月の3連戦を2勝1分、勝ち点7で終えた。

 本田、先制アシストも勝利導けず(ブリスベン)
オーストラリア代表 1−1 日本代表
【得点】
[オ] ルーク・ウィルクシャー(70分)
[日] 栗原勇蔵(65分)
 アウェーで勝ちきることがいかに難しいかを感じた試合だった。
 FIFAランキング23位の日本と同24位のオーストラリア。グループ最大のライバルとの一戦は、守備の要で空中戦に強いDF吉田麻也(VVV)をケガで欠いた中で迎えた。注目の吉田の代役には同じく空中戦に強い栗原が起用された。

 戦前の予想どおり、日本は序盤からロングボールを放り込まれる。そして、フィジカルで勝る相手にゴール前まで押し込まれた。前半6分には、栗原が後方からのフィードに反応したFWティム・ケーヒルに交わされてシュートを打たれる。これはGK川島永嗣(リールセ)が弾いたものの、そのこぼれ球を拾われ、ピンチが続く。最後はPA右サイドからウィルクシャーにシュートを打たれたが、再び川島が防いだ。

 立ち上がりからオーストラリアの猛攻を許した原因は体格差の問題だけではない。アウェーの慣れないピッチコンディションにも苦しんだ。ぬかるんだ地面に選手が足をとられ、出足が遅れる。このため、相手に先手を許すかたちになった。それでも、日本は体を張った守備で、連続攻撃をなんとか凌ぐ。次第に前線からのプレスも強め、相手にロングボールを入れさせない。

 すると、徐々に日本に流れが傾く。43分には、右サイドのMF本田圭佑(CSKAモスクワ)からのパスをMF香川真司(ドルトムント)がワンタッチでPA右サイドへ。抜け出したDF内田篤人(シャルケ)が右足で狙うが、枠を大きく外れた。得点は奪えなかったものの、持ち前の小気味いいパスワークから、ペースを掴んで試合を折り返した。

 膠着状態に変化が生じたのはスコアレスで迎えた後半10分。内田が右サイドからのクロスを頭でクリアに行った際、MFマーク・ミリガンに体を蹴られた。サウジアラビア人の主審は、ミリガンにこの試合2枚目のイエローカードを提示。ミリガンは退場となり、日本が残り35分を1人多い状態で戦う有利な展開となった。

 そんな20分、日本に待望の先制点が生まれる。決めたのは栗原だ。右ショートコーナーから本田がPA右へ仕掛け、DFをひとりかわしてから折り返す。これをファーサイドで冷静に押し込んだ。ヨルダン戦で途中出場から代表初ゴールを決めた男が、この日は貴重な先制点を奪ってスタメン起用に応えた。

 しかし先制の余韻に浸る間はなかった。その5分後、同点弾を許す。オーストラリアの左CKの際、内田がゴール前で相手選手を両手で押さえ込んでファール。PKを与えてしまう。これをウィルクシャーに沈められ、1−1。試合はここから一進一退の攻防が続く。

 日本がピンチを迎えたのは後半30分。左CKからのこぼれ球をつながれ、PA右にいたDF ササ・オグネノフスキに右足でシュートを打たれる。ボールはクロスバーを直撃し、何とか難を逃れた。一方、攻撃では本田と香川が中心となり、オーストラリア守備網を崩しにかかる。32分、左サイドからのクロスに香川がヘッド。37分には、本田、遠藤とつないで最後は再び香川がシュートを打った。しかし、いずれも相手守備陣に防がれ、勝ち越し点は生まれなかった。

 90分を過ぎ、引き分けムードがスタジアムに漂い始めたロスタイム、日本が右サイド、ゴールから約30メートルの位置でFKを得る。ボールをセットしたのは本田。南アフリカW杯のデンマーク戦でFKを決めた時と同じような位置だった。ゆっくりと後ろに下がり、ゴールを見つめる。

 しかし、ここでまさかの結末が待っていた。本田が蹴る前に試合終了の長いホイッスル。全員が納得のいかない表情を浮かべるも、試合は1−1のドローに終わった。この試合、最後のシーンに限らず、主審の不可解な判定が目についた。内田が許したPKの判定も微妙だったし、ロスタイム直前には栗原が自陣PA前で相手を倒し、2枚目のイエローカードで退場となっていた。ただ、これは相手がオフサイドポジションにいたため、本来なら栗原が警告を受ける場面ではなかった。結果、次のイラク戦(9月11日、ホーム)には退場となった栗原に加え、累積警告で今野、内田とDFラインの3選手が出場停止となってしまった。ただ、アウェー戦であることを踏まえれば、ホーム寄りのジャッジは予想できた。その点では日本はゴール前でのきわどいプレーに細心の注意を払うべきだっただろう。

「今日はやはり、すべてにおいてアウェーだった。それでも、強いチームはその状況でも勝ち切るのかなと思う。今後はアウェーでいかに勝ち切れるかが課題」
 キャプテンMF長谷部誠(ヴォルフスブルク)はアウェー戦の難しさを口にした。ただ、カギを握るといわれた最初の3連戦で、勝ち点7という結果は及第点と言ってよい。本田も「アウェーで1−1というのは悪くない結果だと思う。切り替えて次に臨みたい」と前を向いた。最終予選でアウェー戦はあと3試合。ブリスベンでの経験を生かすチャンスは十分残っている。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
内田篤人
→酒井宏樹(73分)
今野泰幸
栗原勇蔵
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
岡崎慎司
→清武弘嗣(86分)
本田圭佑
香川真司
→伊野波雅彦(90分+2)
FW
前田遼一