日テレベレーザ所属の阪口夢穂は、なでしこジャパンの不動のボランチだ。優勝したドイツW杯では澤穂希とコンビを組み、全6試合に先発出場。正確なロングフィードと粘り強い守備で日本の中盤を支えた。ロンドン五輪で金メダルを目指すなでしこの“扇の要”に、二宮清純がインタビューした。
(写真:「みずほ」という名前から「みーちゃん」というニックネームで呼ばれる)
二宮: サッカーを始めた時­­はFWだったそうですね。
阪口: そうですね。FWやトップ下とか、どちらかといえば、前線でのプレーが多かったです。代表に選ばれた当初もFWとして呼ばれていました。ドリブルで持ち込んだりして、とにかく得点を狙っていた。今じゃ考えられないですよ(笑)。

二宮: アテネ五輪後に、今も指揮を執る佐々木則夫監督に­­コンバートされたわけですが、最初のうちは違和感もあったでしょう?
阪口: 守備のやり方もわからないし、もうテンヤワンヤしていました(笑)。監督からはロングボールが蹴れたり、ヘディングでは跳ね返したりできるのでボランチにしたということを聞きました。

二宮: 同時期に澤選手もボランチにコンバートされていますよね。
阪口: どちらかを経験者と組ませるんだったら分かりますけど、初心者同士でしょう。お互いにどうプレーしていいかわからなかった。今思えば、監督、なかなかのチャレンジャーですよね(笑)。

二宮: ボランチでのプレーがおもしろくなり始めたのはいつぐらいから?
阪口: 北京五輪までは、もうこなすのに必死で、楽しむ余裕はそんなにありませんでした。そういう余裕が出てきたのは、本当に最近です。

二宮: どういったところに魅力を感じていますか?
阪口: 私が指示を出してFWを動かしたり、逆に自分がセンターバックに動かされたりする。そうやってみんなで声を出し合ってボールを取った時の喜びは、“ヤバい”ですね。

二宮: 日本はボールの取り方として、スライディングをうまく使っている印象を受けます。
阪口: スライディングの練習は相当やっていますね。前の監督の時からスライディングからの守備は練習していました。ただ、ドリブルしている相手にスライディングでバンって行けと言い出したのは、ノリさん(佐々木監督)です(笑)。­­
(写真:「今は味方をどう使うかも楽しむ余裕がでてきた」と語る)

二宮: 個人技で仕掛けてくる相手に対してスライディングは効果的ですよね。
阪口: そうですね。スライディングをしないと怒られます。「自由にドリブルさせるな!」「隙あらば行け」というふうに。スライディングをした選手のところで奪えなくても、その後を誰かが拾えばいいという考え方です。

二宮: 守備の連動性からなでしこは攻撃のリズムを作っていきますね。
阪口: そうですね。守備から入って、ボールを奪い、そこからまた展開していく。守備あっての攻撃なので、(守備は)大事ですね。

二宮: なるほど。守備からのビルドアップの仕方というのは、おそらくなでしこがナンバーワンだと思います。それを見本にしているのか、最近は他国も日本のサッカーに似てきていると感じるのですが……。
阪口: そうなんですよ。何か、ボールを繋いでくるようになったんです。私たちからしたら、ロングボールを蹴られたほうが嫌なんです。ボランチで奪うのがなでしこのサッカーなので、中盤を越されるとそれができない。スピードと体の強さでは、到底敵わないですから。逆に、中盤で細かく繋いでくれると、連動性は日本のほうがあるので、はめやすいんです。なので、他国がパスを繋いでくるのは、どちらかと言えばウェルカムですね(笑)。

<6月20日発売の小学館『ビッグコミックオリジナル』(2012年7月5日号)に阪口選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>