10日、レスリングの男子フリースタイル55キロ級と同74キロ級が行われ、55キロ級の湯元進一(自衛隊)が3位決定戦でラドスラフ・ベリコフ(ブルガリア)を2−0で破り、銅メダルを獲得した。これで同階級のメダルは3大会連続。また、湯元は双子の兄・健一(ALSOK、北京大会60キロ級銅)に続き、兄弟揃ってメダリストとなった。
 一方、74キロ級に出場した高谷惣亮(ALSOK)は初戦でアシュラフ・アリエフ(アゼルバイジャン)に0―2で敗れた。その後、アリエフが2回戦で敗退したため、銅メダルをかけた敗者復活戦にも進めなかった。

<湯元、兄につなげる銅メダル>

 兄に肩を並べた。準決勝で敗れるも、気持ちを切り替え、3位決定戦では2−0で完勝。堂々と表彰台に上った。

 第1ピリオド、湯元は引き落としで相手を崩してポイントを狙いにいく。すると、開始52秒、素早いタックルからベリコフを押し出して1点を奪う。ただ、直後に押し出されてポイントで並ばれる。同点の場合、最後にポイントを奪った選手がピリオドを制する。しかし、湯元は無理にポイントを狙いにいかなかった。実は、ベリコフを押し出した際、相手に警告が与えられていたのだ。

「相手は前を向いてタックルから逃げたので、これはコーション(警告)だなと思った」
 湯元は冷静だった。警告のない選手のポイントが優先されるため、同点で終わっても第1ピリオドをとれる。コーチ陣もそれを認識していたという。一方、ベリコフ陣営は警告に気づいていなかった。終了のブザーが鳴り、湯元に第1ピリオドを制した判定が下された。しっかりと試合状況を把握した対応で、銅メダルに大きく近づいた。

 勝負の第2ピリオドも湯元は落ち着いていた。開始54秒、バックをとられて先にポイントを奪われる。だが、じっくりと引き落としでベリコフの体勢を崩し、チャンスをうかがう。そして、残り16秒、一瞬のスキを突いてタックル。粘る相手を押し出して同点に追いついた。その後、後がなくなり、前に出てくるベリコフをいなし、試合終了。ラストポイントを奪った湯元がこのピリオドも制し、銅メダルを獲得した。

 北京大会は観客席で兄・健一が銅メダルを獲る瞬間を見守るしかなかった。その4年後、今度は代表選手として、五輪の舞台に立ち、兄と同じ色のメダルを手にした。

「オリンピックのプレッシャーはすごかった。こんなに体が動かないものかと思った」
 湯元は初の大舞台の感想をこう振り返った。結果については「決勝戦で戦いたかった」と悔しい顔ものぞかせたものの、「日本から応援に来てくれた大勢の仲間のためにもメダルを獲りたいと思っていた」と明るい表情で話した。

 自身初のメダルは、この日から始まったフリースタイルの他の選手にも勢いをつけた。もちろん、それは11日に同60キロ級に出場する兄・健一にも伝わっているに違いない。