大会最終日の12日、男子マラソンがロンドン市内のバッキンガム宮殿前ザ・マルを発着点に行われ、中本健太郎(安川電機)が2時間11分16秒で6位に入り、日本勢では2大会ぶりの入賞を収めた。金メダルはスティーブン・キプロティク(ウガンダ)。2時間8分1秒でケニアの2選手を抑え、同国では初優勝を果たした。他の日本勢は山本亮(佐川急便)が2時間18分34秒で40位、藤原新(ミキハウス)が2時間19分11秒で45位だった。
 13キロ過ぎから飛び出したケニア勢のハイペースに惑わされなかった。
 ロンドン市内の街中を3周回する変則コース。中本は最後の3周目に勝負をかけていた。スタート時点で気温18度とマラソンではやや暑いコンディションで、消耗して落ちてくる選手を次々と捕まえていく。後半に順位を上げ、目標の入賞を手にした。
「いいレースができた。タフなコース、暑いコンディションがプラスに働いたと思う」
 中本は満足そうにレースを振り返った。
  
 ケニア、エチオピアのアフリカ勢が優勝候補と目されたレース、序盤に仕掛けたのはケニア勢だった。13キロ過ぎ、ウィルソン・キプサングが集団から抜け出す。10キロから15キロの5キロを14分20秒というスピードで駆け抜け、後続を引き離した。

 キプサングを追い、2位集団もペースを上げるなか、日本勢は15キロ地点で藤原がトップと39秒差の18位、中本が45秒差の25位、山本が28位と後退する。だが、中間点を過ぎ、ひとり、またひとりと選手が脱落する状況で、中本は藤原らと集団を形成。25キロ地点には9位にまで順位を上げていた。

 さらに30キロ地点では2人を吸収し、7位に浮上。33キロ過ぎから藤原が遅れ始めたが、中本はしっかりした足取りで集団を引っ張る。34キロで6位、35キロでは5位と浮上し、アテネ五輪銀メダリストのメブ・ケフレジキ(米国)と2人でさらに上の順位を目指す展開となった。

 40キロ地点では4位のドス・サントス(ブラジル)と26秒差に近づき、4位の背中も見えてくる。勝負は残り2キロ強。だが、以降は中本にもやや疲れが見え、ケフレジキに先行を許して6位に下がる。最後まで懸命に前を向いて走ったが、そのまま6位でのゴールとなった。

 メダル争いは飛び出したキプサングに対し、同じくケニアのアベル・キルイ、キプロティクが追い上げ、26キロ過ぎから3人での並走となる。このまま3選手のつば競り合いが続き、レースが動いたのは35.5キロ地点。ケニアの2人が前に出てキプロティクを振り落としにかかる。3番手に後退したキプロティクだが、大きくは離されず、ケニア勢を追走した。

 そして36.8キロ地点、今度はキプロティクが上りを利用し、ギアを上げてスパート。前の2人を一気に追い抜くと、どんどん差を広げていく。この仕掛けが当たり、キプロティクが最後はウガンダ国旗を掲げながら、ゴールテープに飛び込んだ。2位は26秒差でキルイ。序盤からレースを引っ張ったキプサングは最終的には1分36秒差をつけられ、3位だった。

 メダルを獲得したアフリカ勢が2時間10分台を切った一方、中本のタイムは2時間11分台。高速化する男子マラソンで世界のトップとの差は決して小さくない。だが、男女ともに順位が低落傾向にあったなか、やり方次第で上位入賞できることを示せた点は一歩前進だ。
「マラソン王国・日本を復活させたい」
 中本はレース後、力強く宣言した。ロンドンの街に日本マラソン復活ののろしは確かに上がった。