15日、キリンチャレンジ杯2012が札幌ドームで行われ、日本代表(FIFAランキング22位)がベネズエラ代表(同52位)と対戦した。日本は前半14分、MF遠藤保仁(G大阪)のゴールで先制する。しかし、後半17分、FWニコラス・フェドールに同点弾を許す。その後、日本は勝ち越しゴールを奪えず、約2カ月ぶりの実戦を白星で飾ることはできなかった。今後は、9月6日にUAEと親善試合を行い、同11日にイラクとのブラジルW杯アジア最終予選の第4戦に臨む。

 遠藤、南アW杯以来のゴールも実らず(札幌ド)
日本代表 1−1 ベネズエラ代表
【得点】
[日] 遠藤保仁(14分)
[ベ] ニコラス・フェドール(62分)
 収穫と課題が明確に出たテストマッチだった。9月のイラク戦では、累積警告でCBの今野泰幸(G大阪)や右SBの内田篤人(シャルケ)らDFラインの3選手が出場停止。この穴を誰が埋めるのかが、試合の焦点だった。右SBには駒野友一(磐田)が起用され、1アシストの活躍。前後半で伊野波雅彦(神戸)と水本裕貴(広島)がテストされたCBは、連係ミスもありピンチを招いた。

 駒野は今年2月のアイスランド戦以来の先発出場。期待に応えるように、序盤からエンジン全開だった。日本がボールをキープすると一気に高い位置まで攻め上がり、遠藤やMF本田圭佑(CSKAモスクワ)からボールを呼び込む。前半8分に上げたクロスはDFにクリアされたものの、こぼれ球が遠藤のシュートにつながった。

 そして14分、駒野が先制点を演出する。右サイドの深い位置でパスを受けると、対峙するDFの股を抜いて果敢に仕掛ける。PA内右サイドからマイナスのクロスを上げ、後方から走り込んできた遠藤にピタリと合わせた。積極的な仕掛けと高い精度のクロス。レギュラーである内田に劣らない存在感を示した。

 その後も駒野は精力的にアップダウンをくり返し、攻守に貢献する。右MFの岡崎慎司(シュツットガルト)との連係も良かった。ワンツーからの抜け出しや、オーバーラップにより、岡崎がシュートを打ちやすい状況もつくりだしていた。駒野は出場機会が少ないとはいえ、ザックジャパン発足時から招集され続けており、戦術理解度の面でも心配はなさそうだ。

 CBでスタメン起用された伊野波も、連係面ではさほど問題は見受けられなかった。DFラインでのマークの受け渡しやパス回しなどは落ち着いて対応していた。
 しかし、攻守の切り替えの遅さでピンチを招く。6分、相手にロングパスを放り込まれた際には、伊野波はピッチ中央付近で相手FWをマークしていたにもかかわらず、反応が遅れて完全に振り切られた。追いかけてプレスをかけるが、PA内に侵入され、シュートまで持ち込まれる。GK川島永嗣(リエージュ)のファインセーブに救われて失点は免れたが、CBに必要な安定感を指揮官にアピールしたとは言い難い。

 一方で、もうひとりのCB候補、水本は守りでは役割を果たしていた。後半開始から伊野波に代わって出場。5分には、右サイドの突破から、ゴール前でセイハスに打たれるも、水本が体を張ってブロック。いきなりのピンチを防いで見せた。その後も、1点を追って攻勢を強めた相手のロングボールをヘディングではね返すなど、安定したディフェンスをみせた。

 だが、攻撃の起点としては連係不足が露呈した。水本は2008年の東アジア選手権(北朝鮮戦)以来の代表戦。DFラインでパス回しに参加するものの、縦へパスを送る機会はほぼなかった。受け手との呼吸が合わず、ミスもみられた。ザックジャパンにおいては、CBからの縦パスで攻撃のスイッチが入ることも少なくない。その意味で今野の代役として機能するか不安が残った。

 試合は、守勢を強いられた日本が後半17分、ついに同点弾を許す。MFマルティネスに右サイドを突破されると、ゴール前に上がったクロスをフェドールに混戦から押し込まれた。守りの人数は揃っていたものの、相手の強引ともいえる仕掛けに押し切られた。

 テストマッチとはいえホームで負けるわけにはいかない日本は、ここから怒涛の攻撃で勝ち越し点を狙いにいく。19分、本田がPA内左サイドに抜け出して左足を振り抜く。23分には、DF長友佑都(インテル)がPA内に切れ込んでシュート。しかし、いずれもGKに防がれゴールには至らない。
 30分には、駒野が右サイドをドリブルで破り、ゴールライン際からグラウンダーのクロスをあげる。ファーサイドに走りこんだフリーのMF香川真司(マンU)が押し込むが、シュートは無情にもクロスバーを直撃。絶好機を決め切れなかった日本は、その後も圧倒的にボールを支配するものの、最後までゴールが遠かった。

 結果はすっきりしなかったが、右SBの代役として駒野が十分すぎる働きをみせたことは大きな収穫だ。やはり、課題は今野のいないCB。伊野波は連係に問題はないが、局面での対応に不安を残した。水本はディフェンスは高いレベルでプレーしたものの、攻撃の起点になりきれなかった。

 イラク戦前に行われるテストマッチでは、本番を想定したメンバーで臨むことが予想される。そこでスタメンに名を連ねた選手が、イラク戦の先発としてピッチに立つことになるだろう。アルベルト・ザッケローニ監督は、誰を守備の要に据えるのか。試行錯誤が続く。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
駒野友一
→槙野智章(87分)
伊野波雅彦
→水本裕貴(45分)
吉田麻也
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
→細貝萌(62分)
岡崎慎司
→藤本淳吾(73分)
本田圭佑
香川真司
FW
前田遼一
→中村憲剛(73分)