6日、キリンチャレンジマッチ2012が新潟・東北電力スタジアムで行われ、日本代表(FIFAランク23位)はUAE代表(同120位)と対戦した。決定機をなかなか活かせなかった日本だが、後半24分、FWハーフナー・マイク(フィテッセ)のゴールで先制する。そのままUAEに得点を許さず、完封勝ちを収めた。日本は11日、ホーム(埼玉スタジアム)でブラジルW杯最終予選のイラク(同78位)戦に臨む。

 本田、決定機生かせず(東北電ス)
日本代表 1−0 UAE代表
【得点】
[日] ハーフナー・マイク(69分)
 イラク戦前の貴重な実戦、勝つには勝ったが、内容は上々とはいかなかった。横パスが多く、アルベルト・ザッケローニ監督が掲げている「縦に速い攻撃」が少なかったのだ。結果的に日本は90分間、ボールを支配した。しかし、奪ったのはわずか1点。本番へ弾みをつけたとは言い難かった。

 日本は、守りに人数をかけてDFラインを低く保つ相手に対し、サイドから攻撃を組み立てていった。しかし、パスの起点もドリブルで仕掛ける位置もサイドからのため、リズムが単調化。中央に縦パスを入れてから逆サイドに展開するようなアクセントがなかった。

 前半で良い展開を見せたのは開始直後と終了間際に訪れた2度の決定機ぐらいだ。2分、2列目の香川真司(マンU)、本田圭佑(CSKAモスクワ)、清武弘嗣(ニュルンベルク)の3人が絡んだ。右サイドでボールを受けた清武が中に切れ込み、PA内へスルーパス。抜け出した香川のヒールパスを、本田がダイレクトで狙ったがわずかにゴール上に外れた。
 45分には、清武がピッチ中央で縦パスを受け、右サイドのDF酒井宏樹(ハノーバー)に展開。ダイレクトで上げられた速いクロスに、ハーフナーがダイビングヘッドで合わせた。だが、GKに防がれ、得点には至らなかった。

 後半開始とともに日本は香川からMF岡崎慎司(シュツットガルト)など、3人の選手を入れ替えた。しかし、サイドから攻める単調なリズムは変わらず、なかなかチャンスをつくりだせない。すると19分、ザッケローニ監督はトップ下で攻撃の要である本田を下げ、MF中村憲剛(川崎F)を投入。この交代策が的中した。

 5分後、中村を起点に先制点が生まれたのだ。ピッチ中央でボールを受けると、左サイドを攻めあがった駒野へ展開。駒野のファーサイドへのクロスを、ハーフナーが頭で叩き込んだ。中村が真ん中でボールを呼び込み、収めることで、相手サイドバックのポジションを少し中央にずらさせる。これにより空いたスペースをうまく突いた。

 このゴールで勢いに乗るかに思われたが、前半に続き、フィニッシュの精度の低さが足を引っ張った。34分、岡崎がPA内左サイドからDF2人を交わしてシュートを打つものの、GKの守備範囲。絶好のチャンスを逃した。37分には、清武がPA手前からミドルシュートで狙うも、今度はGKに左手1本で防がれた。先月のベネズエラ戦同様、ボールを支配しながらも得点を奪えない消化不良感が残った。

 ザッケローニ監督は、「(チェックした内容に)ネガティブな面もあった」と渋い顔を見せた。前線に早くボールを送る展開があまり見られなかったからだろう。2列目の選手が縦パスを呼び込むことが少なかった上に、他の選手もクサビのパスを出す意識が低かった。以前はDFラインからも2列目の選手にピシッとパスを通していた。そして、本田や香川がボールを受け、味方がスペースに動きだす時間をつくりだしていたからこそ、連動した攻撃ができていた。

 引いて守る相手を崩すためには、縦パスを通してマークを引き付け、生じたギャップを突く攻めが有効だ。その上で、中から外、外から中など、さらにボールを動かして守備組織をゆさぶる。縦があるから横も生きるのだ。イラクもUAEのように守備を固めてくることが予想される。それを打ち破るために求められるのは、シンプルに縦パスを使う原点回帰だ。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
酒井宏樹
→酒井高徳(79分)
伊野波雅彦
→水本裕貴(45分)
吉田麻也
駒野友一
MF
遠藤保仁
長谷部誠
→細貝萌(45分)
清武弘嗣
本田圭佑
→中村憲剛(64分)
香川真司
→岡崎慎司(45分)
FW
ハーフナー・マイク