「残念です……」
 北京に続いて2度目のパラリンピック出場となった仲里進は開口一番、そう言って、悔しそうな表情を浮かべた。金メダルを目指してきたウィルチェアラグビー日本代表。しかし、8日の準決勝で豪州に破れ、決勝進出には至らなかった。
 試合の立ち上がりは決して悪くはなかった。約5分30秒が経過した時点では、9−9とお互いに点を取り合うシーソーゲームだった。ところが、そこから3連続で得点を奪われ、流れが豪州へと傾く。それでも第1ピリオドは3点差で踏みとどまった。しかし、その差は徐々に広がっていく。第2ピリオドでは6点差、そして日本のミスが相次いだ第3ピリオドでは33−44と11点差にまで広がった。

「前半はよかったのですが……。相手の作戦がピタリとはまってしまっていましたし、とにかく課題であるイージーミスですね」
 そう言って、仲里は試合を振り返った。

 今年に入って、豪州とは7試合行なっているという日本は、何度もミーティングを重ね、相手の最強ラインに対し、どう戦っていくか、対策を練ってきた。障害の度合いによって与えられる持ち点が3.5点のハイポインター2人を徹底的にマークし、ローポインターにボールを集中させるというものだった。

 ところが、高いチェアスキルをもつ豪州のハイポインターは、日本のプレッシャーをものともしなかったのだ。日本はやりたいことをほとんどさせてもらえなかった。逆に、日本はミスで自分たちの首を苦しめるかたちとなった。

 結果は44ー59。これについてエースの池崎大輔は次のように語った。
「ランキングが上のチームなので、そう簡単には勝てないということはわかっていた。それでも、勝てない相手ではないとチャレンジ精神をもって臨んだのですが……。試合中、強いプレッシャーに対して、一人一人が熱くなり、自分を見失い、プレーが雑になったところがありました。僕自身、相手にプレッシャーをかけたつもりでしたが、プレッシャーにはなっていなかった。自分へのふがいなさを感じています。ハイポインターとしての役割を果たすことができませんでした」

 しかし、下を向いてはいない。パラリンピック最終日である9日には、初のメダルがかかった大一番が待っている。相手は米国。予選リーグでは48−64と完敗している強豪だ。
「今日の試合で一人一人、感じたことがたくさんあったと思うので、明日は間違いなく、この4年間で最強のジャパンが見られると思います」
 池崎はそう言って、自信を見せた。泣いても笑っても、残り1試合。ゴールボール女子に続く団体でのメダル獲得に挑む。

(斎藤寿子)