12日間に渡って行なわれたロンドンパラリンピック最終日の9日、男女合わせて複数のメダルが期待された車いすマラソンで男子は副島正純が日本勢最高の4位、女子は唯一出場の土田和歌子が5位に終わった。青空のもと、ロンドンの街をランナーたちが駆け抜けていた頃、オリンピックパーク内の「Basketball Arena」で行なわれていたのが、混合ウィルチェアーラグビーの3位決定戦だ。初のメダルがかかった大一番、日本(世界ランキング4位)は闘志をむき出しにしたプレーで観客を魅了した。
「残念です……」 北京に続いて2度目のパラリンピック出場となった仲里進は開口一番、そう言って、悔しそうな表情を浮かべた。金メダルを目指してきたウィルチェアラグビー日本代表。しかし、8日の準決勝で豪州に破れ、決勝進出には至らなかった。
「ようやくこの日が来たんだ……」 キャプテンの小宮正江は、上っていく日の丸を見ながら、感無量となっていた。7日、ゴールボール女子決勝、日本は北京パラリンピック優勝の中国を破り、金メダルに輝いた。 「途中、国歌を歌えなくなるほど、熱いものがこみ上げてきました」 4年前の北京では7位に終わり、聖火の前で悔し涙を流した。その時、司令塔の浦田理恵と「ロンドンでは絶対に笑って聖火の前に立とう」と誓い合ったという。その誓いがこの日、実現したのだ。チーム競技としてはパラリンピック史上初の金メダル。ゴールボール女子が、新たな歴史の1ページを切り開いた。
「You have pins?」。各競技会場をまわっていると、ボランティアの人たちにこんな言葉をよくかけられる。最初は「メディアならピンバッジを持ってるはずだ」と言われているのかと思い、わざと困った顔をして「Oh,I don’t have.」とか「I don’t know.」などと言いながら、一生懸命にアクレディテーションカード(メディアとしての証明カード。これがあれば会場や記者室、選手を取材できるミックスゾーンなどに出入りできる)を見せていた。今思うと、そんな私はボランティアには非常に滑稽な姿に映っていただろう。
4日の夜、知り合いのカメラマンに誘ってもらい、ロンドンに来て初めて外食をした。オリンピックパークの最寄り駅「Stratford」の前にそびえたつヨーロッパ最大のショッピングモール「waitrose」内のレストラン。メニューの品数はたくさんあったが、やはりここはイギリス料理の代表「フィッシュ&チップス」を頼むことにした。
現在、パラリンピックが開催されているオリンピック・パークなどでは、あちこちに「これでもか」というほど、ボランティアの人々が配置されている。おかげで何かわからないことがあれば、すぐにつかまえて聞くことができ、非常にありがたい。こちらの下手な英語にも、全くイライラすることなく、丁寧に応対してくれる。そのため、渡航前の最大の不安要素であった“言葉の壁”もほとんど感じることなく……いや、感じながらも、不便を感じずに取材をすることができている。
「英国の食べ物はおいしくない」と聞いたことがある人も多いのではないだろうか。確かに「フランス料理」「イタリア料理」などはあるが、「イギリス料理」はほとんど耳にしたことがない。しかし、最近では「だいぶ美味しくなった」という人もいる。果たして、実際はいかに……。 まだロンドンに来て3日目だが、感想としては「特別に美味しいわけではないが、“まずい”わけでもない」というところだろうか。とはいえ、オリンピックパークとホテルの往復しかしていないので、まだよくわからない。しかし、はっきりといえるのは「お寿司」には騙されないほうがいいということだ。やはりお米が違う。どうもパサパサしていて、飲み物と一緒にゴクンと飲まなければ飲み込むことができない。「ロンドンでお寿司を買う勇気がある日本人っていないよね……」と海外通の日本人記者に言われ、とても「買いました」とは言えなかった。それからというもの、普通に美味しいサンドイッチを食べ続けている……。
ロンドンパラリンピックの取材2日目。朝食のときには小雨が降っていたものの、取材に出かける頃にはすっかり止んでいた。しかし、ロンドンはすでに秋に入っている。残暑が続く日本から来た私にとっては、冬のにおいさえ感じるくらいだ。昼間でも薄めの長袖がちょうどよく、夜になる頃には上着が必須。これが現地で取材している日本人の“共通感覚”である。だが、ロンドン市民に“共通感覚”はないようだ。通称「チューブ」と言われている地下鉄「underground」(英国では「subway」と呼ばれることは少ない)に乗ると、面白いほど服装はまちまちだ。ノースリーブやTシャツの人もいれば、トレンチコートを着ている人もいる。また、足元も四季折々だ。すでに暖かそうなブーツを履いている人や、上はパーカーなど秋っぽいにもかかわらず、足元は裸足にビーチサンダルという人も少なくない。つまり、「みんな違っていい」。それがロンドン市民のようだ。
「もう楽しかったです!」 興奮冷めやらぬという表情でインタビューゾーンに現れたのは、ロンドンが初のパラリンピックである高桑早生だ。1日、大勢の観客で埋め尽くされたオリンピック・スタジアムで行なわれた陸上競技・T44(片足下腿切断)女子100メートル予選。高桑は自己ベスト(13秒96)に近い、14秒06という好記録で全体の7位に入り、2日に行われる決勝へと進んだ。