11日、ブラジルW杯アジア最終予選第4戦が埼玉スタジアム2002で行われ、日本代表(FIFAランキング23位)がイラク代表(同78位)と対戦した。日本は前半25分、FW前田遼一(磐田)のゴールで先制する。その後も追加点を狙い続けたが、試合は1−0のまま終了。日本は同予選3勝1分けとし、勝ち点を10に伸ばした。今後は2試合の親善試合(ともに10月)を経て、11月14日にオマーン代表(同93位)とのアウェー戦に臨む。

 前田、対中東3試合連続ゴール!(埼玉)
日本代表 1−0 イラク代表
【得点】
[日] 前田遼一(25分)
 主力を欠く苦境を乗り越え、ブラジルに向けてまた一歩前進した。今野泰幸(G大阪)らDFラインの3人が出場停止、加えてMF香川真司(マンU)が前日練習で腰を痛め、ベンチからも外れた。それでも、MF本田圭佑(CSKAモスクワ)やMF清武弘嗣(ニュルンベルク)を中心にボールを支配。守りでは相手の決定機を確実に跳ね返した。

 先にピンチを迎えたのは日本だった。前半4分、右CKをニアサイドでDFアハメド・イブラヒムに頭で合わされる。枠をとらえられたが、GK川島永嗣(リエージュ)がパンチングで防いだ。川島は41分にもカウンターからの相手のシュートを鋭い反応でストップ。安定したセービングでチームを支えた。

 一方、攻撃はパスを回して組み立てようとするが、イラクの全員が自陣に戻る守りに、なかなかシュートまで持ち込めない。加えてボランチの遠藤保仁(G大阪)、長谷部誠(ヴォルフスブルク)が相手のFW2人にマンマークされ、トップ下の本田圭佑(CSKAモスクワ)もマンツーマンで対応された。徹底的に中央のスペースをつぶされたかたちに、アルベルト・ザッケローニ監督は「想定していなかった。ボランチをマンマークしてくるチームは初めてだ」と驚きを隠さなかった。

 そんな相手に対し、指揮官はボールをサイドに散らすことを指示。すると15分、そのサイド攻撃から決定的チャンスが生まれる。右サイドに抜け出したMF岡崎慎司(シュツットガルト)のクロスを、香川の代わりに先発出場した清武がファーサイドでヘディング。GKに防がれてこぼれた球を再び清武が拾い、前田に合わせたがゴール右に外れた。得点には至らなかったが、守勢の相手にペースを合わせない。

 迎えた25分、意外な展開から先制点が生まれた。右サイドからのスローインを起点に、前田が決めたのだ。スローワーのDF駒野友一(磐田)が、PA内右サイドに速いボールを送る。抜け出した岡崎が上げたクロスに、前田が頭で叩きこんだ。選手たちが一様に「練習通り」と振り返る見事なゴールだった。
 追加点を狙う日本は、前半終了間際に遠藤がPA手前から右足を一閃したが、GKに右手1本で防がれた。リードを広げることはできなかったものの、主導権を握ったまま試合を折り返した。

 後半に入っても、日本が押し込む時間が続いた。牽引したのは本田だ。常に高い位置を保ち、鋭い動きだしで前半に苦しんだマンマークを何度も振り切った。後半6分、セットプレーのこぼれ球を拾ってシュート。24分には、左サイドからのクロスに頭で合わせるがわずかにゴール上へ外した。
 最大のチャンスは35分に訪れた。PA内中央に抜け出し、左サイドの清武からクロスを呼び込む。しかし、頭で叩きつけたシュートはGKに弾かれて右ポストに当たり、ゴールにはならなかった。本人は「シュートまでは狙いどおりだった」と悔しさを滲ませた。結局、これがチームにとっても最後の決定機だった。

「個人的に決定力不足を露呈した」
 本田は冷静でいて厳しい口調で自身の評価を口にした。終了直後には指揮官から「ゴールを取れ」と叱咤されたことも明かした。チャンスを外したのは本田だけではない。だが、香川とともにWエースと称される男だけに、周囲の期待も大きい。
 国際Aマッチでは3戦連続無得点だが、本人に悲壮感はない。「ゴールはケチャップのようなもの。出ない時は出ないが、出る時はドバドバッと出る」とオランダの名ストライカーだったファン・ニステル・ローイの名言を引き合いに「次は(点を)取る自信がある」と前を向いた。

 また本田は「勝利できたことが最大の収穫」と語っていた。アジア3次予選では引いて守る相手に勝ち点3を取りこぼす試合もあった。それだけに、内容が伴わないながらも、確実に勝てるようになったことに、チームとしての成長を感じたのだろう。10月には、フランス(FIFAランキング15位)、ブラジル(同12位)といった強豪国と親善試合が組まれている。それらの相手に好勝負を演じ、レベルをさらに上げることができるか。本田がエースとして、ザックジャパンを高みに導く。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
駒野友一
吉田麻也
伊野波雅彦
→高橋秀人(90分+4)
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
岡崎慎司
本田圭佑
清武弘嗣
→細貝萌(89分)
FW
前田遼一
→ハーフナー・マイク(90分)