7日、国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会は、4日間(4〜7日)にわたる東京視察を終えた。それを受けて都内で、評価委員会と東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が都内で会見を開き、それぞれ視察の総括を述べた。評価委員は明日8日に日本を離れ、その他の立候補都市を回る。18日からスペインのマドリード、24日からはトルコのイスタンブールで4日間ずつ現地調査を行う。7月3、4日にスイス・ローザンヌで最終プレゼンテーションが行われ、IOC委員が選考に入る。最終決定は9月にアルゼンチン・ブエノスアイレスでのIOC総会で発表される。
(写真:4日間のIOC評価委員会からの視察を終え、それぞれ手応えを口にした)
 開催地決定まで、残り6カ月。東京は3つの候補都市の中で先陣を切って、IOC評価委員会の視察を受けた。IOC評価委員会のクレッグ・リーディ委員長は「プレゼンテーションの質が高かった。大会に対する熱意が伝わった」と、視察の感想を述べた。

 一方の招致委員会会長を務める東京都の猪瀬直樹都知事は「中身の濃い4日間でした」と、今回のプレゼンテーションを振り返った。各競技会場予定地ではオリンピアン・パラリンピアン、ユースオリンピックに出場した若い選手が評価委員を出迎えるなど、“アスリート・ファースト”を謳う今回の招致活動には手応えがあったようだ。

 会見に同席した北京、ロンドンオリンピック銀メダリストであるフェンシングの太田雄貴は「自分ができる最大限の努力をしたつもりです。一丸となって戦っていると感じました」と語る。日本オリンピック委員会(JOC)竹田恆和会長は「プレゼンテーションを明るく灯してくれた」と、選手たちに感謝した。これには効果も大きかったようで、リーディ委員長も「オリンピックはアスリートのもの。アスリートと一緒なのは楽しい」とサイトビジットでの好印象を口にした。

 懸念されていた課題のひとつ、「政府・世論の支持」という項目もクリアされたと言っていいだろう。安倍晋三首相が招致活動を「国家的優先事項」に挙げ、自身が主催して晩さん会を開いた。閣僚に限らず、皇室や経済界も評価委員に接見し、国をあげてのサポートをアピールした。

 5日には、IOCによる支持率調査で70%という数字が発表された。昨年5月と比べて23%上昇。ロンドンが12年大会の招致を目指していた時の数字が68%だったことを考えると、大きな成果と言えるだろう。招致委員会の理事長でもある竹田JOC会長は「招致委員会を立ち上げた時の目標を達成した」と、国民の機運が高まっていることへの喜びを露わにした。

 会見には鳥原光憲日本障害者スポーツ協会会長も出席。司会進行役の小谷実可子から4日間のIOC評価委員会の視察についての感想を訊かれると「東京でパラリンピックを開催する意義や開催に対する熱い思いを伝えることができた」と手応えを口にした。テニス会場となる予定の有明コロシアムでは、北京、ロンドンとパラリンピックで連覇した車いすテニスプレーヤーの国枝慎吾と猪瀬都知事がラリーをして出迎えると、あるIOC委員は「これは貴重だ」とスマホで撮った映像を見せてくれたという。「オリンピックとパラリンピックとの一体化が貫かれていた」ことが好印象を与えたと述べた。

 この日の午前中に行なわれたプレゼンテーションでは、国枝のほか、ともにアテネ、北京、ロンドンと3大会連続出場の走り幅跳び・佐藤真海と射撃・田口亜希が東京開催への思いを語った。「選手たちが話をすると、評価委員の目つきが変わった。(選手たちの言葉が)委員の心を動かし、好印象をもってもらえた」と鳥原会長。代表として会見に出席した田口も「評価委員会の方たちの目を見て“Welcome”というような感じが伝わってきて話しやすく、楽しくできた。3人それぞれの思いが委員の方たちに伝わったようで、プレゼン終了後には『とても良かった。気持ちはわかった』という言葉をもらえた」と笑顔を浮かべた。
(写真:午前中にはプレゼンテーションで招致への思いを語った太田<右>と田口)

 ライバル都市より一足先に評価委の現地視察を終えた東京。猪瀬知事は「マラソンで例えるなら、まだハーフを終えたところ。これからが正念場。あと半年間、走り続けたい」と今後の抱負を語った。