第3回WBCは2次ラウンドが8日からスタートする。東京ドームで行われる1組には1次ラウンドA組1位のキューバ代表、同2位の日本代表、B組1位の台湾代表、同2位のオランダ代表が勝ち上がった。2次ラウンドでは敗者復活方式のトーナメントで勝ち残った2チームが米国サンフランシスコでの決勝ラウンド(17日〜)に進出する。日本は8日(19時〜)の初戦で台湾と激突。先発は日本が能見篤史、台湾が王建民と発表された。7日は各チームが東京ドームで公式練習を実施し、来る戦いに備えた。
台湾(2次ラウンド進出=初、過去のWBCでの対戦=1勝0敗)

 前回は1次ラウンドで中国に敗れて最下位。今大会は予選からの勝ち上がりだ。台中での1次ラウンドはホームの大声援を味方にオーストラリア代表、オランダ代表を撃破。韓国代表には逆転負けを喫したものの、1位通過を果たした。

 チームに勢いをつけたのはメジャーリーグ通算61勝の王建民。初戦のオーストラリア戦に先発し、早いカウントで打たせてとるピッチングで6回をわずか61球で投げ切って無失点に封じた。それから中5日と万全の状態で8日の日本戦に登場する。2次ラウンドでは球数制限も80球と緩和されるため、謝長亨監督は「5、6回まで投げてほしい。そうすればチャンスが出てくる」とエースで接戦に持ち込みたい考えだ。

 その王は「一生懸命投げるだけ。警戒する選手? 全員だよ」と静かに闘志を燃やしている。初の2次ラウンド進出に、台湾のメディアもベンチ裏の通路をふさぐほど詰め掛けており、チームが勢いに乗って東京に乗りこんできたことがうかがえた。

 王を中盤まで引っ張れば、速球が武器の郭泓志、抑えの陳鴻文と継投策がとれる。福岡ソフトバンクの陽耀勲は1次ラウンドの韓国戦で指を負傷して途中降板したものの、2次ラウンドで再び顔を合わせる際には対決の可能性がある。また横浜DeNAの王溢正、巨人の林イー豪もメンバーに入っており、日本の打者の特徴は投手陣に伝わっているはずだ。

 攻撃では北海道日本ハムで活躍する陽岱鋼がリードオフマンとしてカギを握る。1次ラウンドでは打率.333、1本塁打と好調だ。3番の彭政閔は国内リーグの中華職棒で5度の首位打者を誇る好打者。4番の林智勝は中華職棒の昨季、本塁打王だ。陽が出塁し、クリーンアップに回ると日本としても厄介だろう。

「左に優れたピッチャーがたくさんいる」と指揮官は日本投手陣の印象を明かす。8日の侍ジャパンの先発は左腕の能見。「たくさん点を獲るのは簡単ではない。投手陣が失点を少なくすることが大事。まず守りで全力を尽くしたい」と、本調子とは言えない日本の打線を抑えることが初戦突破の条件と謝監督は考えている。

日本(2次ラウンド進出=3大会連続3回目)

 山本浩二監督は「今、状態が一番いい」と初戦を能見に託す。初代表となる阪神のエースは合宿期間中から好調を維持。WBC使用球にも順応してストレート、変化球ともにキレがある。大事な一戦の先発を任せるにはふさわしいピッチャーだろう。

 投手陣は大崩れしない計算ができるだけに、問題は攻撃だ。王建民はヤンキースで2年連続19勝をあげた全盛期ほどではないとはいえ、「シンカー系、動くボールを多投する」と山本監督は警戒を強める。

 1次ラウンドでは長野久義(打率.200)、阿部慎之助(同.000)、坂本勇人(同.083)、稲葉篤紀(同.111)と主力打者が不振で打線の迫力を欠いた。指揮官は長野、坂本、稲葉について「状態は良くない」と率直に認めた上で、「球場がかわったせいか、皆、いい振りをしていた。昨日までのことは忘れて明日から戦う」と心機一転を強調する。

 この日の練習では内川聖一がライトに、井端弘和がセカンドを守る場面が見られた。山本監督はオーダーに関して「状態のいい選手を起用したい」と述べるにとどめたが、好調な井端をスタメンに入れる可能性も十分に考えられる。
 
 安心材料は腰の違和感を訴えて前日のキューバ戦を欠場した内川が通常通り練習を行い、スタメン復帰できそうなことだ。1次ラウンドは初戦のブラジル戦、2戦目の中国戦ともに3番に座り、7打数3安打と当たっている。前回大会も活躍したポイントゲッターは「相手のピッチャーには実際に見た感じで対応する」と初顔合わせでも苦にしない。山本監督は「今日の動きを見れば何の問題もない」と信頼を寄せている。

 連覇した前回、前々回とも2次ラウンドでは崖っぷちのところまで追い詰められた。「相手は強豪になる。いよいよ明日からが勝負」と指揮官も気を引き締め直す。
「ともにアメリカへ!」
 当面の目標に掲げた決勝ラウンド行きへ侍ジャパンの真価が問われる。

オランダ(2次ラウンド進出=2大会連続2回目、過去のWBCでの対戦=なし)

 前回大会では1次ラウンドで優勝候補の一角、ドミニカ共和国を2度破るジャイアントキリングで話題をさらった。カリブ海にあるオランダ領の離島出身の選手が多く、体格の大きさとパワーの強さが目立つ。

 打線は4番がウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト)、5番がアンドリュー・ジョーンズ(東北楽天)と日本球界での助っ人がクリーンアップを形成する。特にバレンティンはセ・リーグで2年連続の本塁打王。変化球への脆さも年々改善されており、もし対戦する際は要注意のバッターだ。

 その脇を固めるのはメジャーリーグの若手有望株。アンドレルトン・シモンズ、ジョナサン・スコープの二遊間、20歳のクサンダー・ボーハールツら今後、スターになりうる素材が大会でのアピールを狙っている。ただ、1次ラウンドではチーム打率が.216と打線爆発とまではいかなかった。千葉ロッテ、ヤクルトでも活躍したヘンスリー・ミューレンス監督は「練習では広くフィールドを使おうと言っている。ランナーがスコアリングポジションにいるときは右へ打ち、バントもしっかりするなど基本的なところを決めていきたい」と日本で培った“つなぎの野球”を徹底する方針だ。

 一方で弱点とみられていた投手陣は1次ラウンドで、その評価を覆した。初戦の韓国戦で先発したディエゴマー・マークウェルは3大会連続の代表入り。4回を無失点と好投して勝利に導いた。オーストラリア戦でも先発のロビー・コルデマンスが5回無失点。リードを奪えば、216センチの長身右腕ルーク・ファンミルが高さを生かしたピッチングで試合を締めくくる。

 初戦で対戦するキューバとは大会前にも試合を行い、5−0と完封勝ちを収めた。ミューレンス監督は「パワフルなバッターが多いので、ピッチャーは失投をなくすることに尽きる」と投手力で“赤い軍団”を食い止めるつもりだ。

 ひとつ指揮官が心配しているのは多くの選手にとって初体験となる東京ドームの試合環境だ。1次ラウンドでは守備は2失策とまずまずだったが、「人工芝は経験がない選手が多く心配」と明かす。また白い天井も打球が重なりやすく、フライがあがった際の対応にも不安を口にした。

「初戦は勝ちたいが、キューバが相手なので、もし負けても恐れることはない。忍耐強くいきたい」
 ニューレンス監督にもなじみのある東京で、旋風を巻き起こそうと意気込んでいる。

キューバ(3大会連続3回目、過去のWBCでの対戦=3勝1敗)

 前夜、日本を破って1位通過したキューバは、練習時間に現れたのは投手陣のみ。外野をランニングするなど軽めの調整で、野手陣のバッティング練習は行われなかった。ビクトル・メサ監督も予定されていた会見をキャンセル。前回大会は2次ラウンド敗退を喫しており、休養をとって決戦に挑む構えだ。