10日、世界選手権モスクワ大会の日本女子代表選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソンがナゴヤドームを発着点に行われ、木崎良子(ダイハツ)が2時間23分34秒で自己ベストで優勝を果たした。木崎は代表の選考基準である2時間23分59秒もクリアし、世界選手権代表の座を射止めた。注目のアテネ五輪金メダリストの野口みずき(シスメックス)は2時間24分5秒の3位に入った。
 国内の選考会はこれで終了。ここまでで代表内定は木崎のみとなった。残りは4月のボストンとロンドンが対象となり、それを踏まえ、日本陸上連盟の理事会(4月25日)で決定する。
「ここで勝たなきゃ、世界で通用しない」
 その強い意志で42.195キロを駆け抜けた木崎は、見事、アフリカ勢に勝利し、世界選手権への切符を手に入れた。

 序盤、レースを引っ張ったのは野口だ。ペースメーカーと並ぶようにして、小さな体から繰り出す大きなストライドで快調なピッチを刻む。5キロを17分2秒と、1キロ3分20秒台の好ペースで入る。

 4年4カ月ぶりの復活レースとなった昨年以来のマラソン、“完全復活”を誓った今年は出入りの激しい走りだった1年前とは違い、落ち着いていた。10キロ付近の給水地点では、ペースメーカーの小原怜(天満屋)に自身のスペシャルドリンクを渡すなど笑顔を見せる余裕があった。

 15キロ手前でマーガレット・アガイ(ケニア)、ゲネト・ゲタネ(エチオピア)、ベルハネ・ディババ(エチオピア)らアフリカ勢がペースアップして、一時、集団の前に飛び出す。だが、すぐに野口、木崎らがとらえて、10人近い先頭グループが形成される。

 そこから徐々に先頭集団が崩れ始めると、27キロで先頭争いは野口、木崎に加えてアガイ、ゲラネ、ディババの5人となる。30キロ手前ではディババがスパートをかけ、抜け出すが、31キロ地点で野口がディババをつかまえる。32.7キロでは木崎が追いついて、ここで優勝争いは3人に絞られた。

 35.5キロで「足が重くなって、きつかった」という野口が遅れ始めると、そこからは木崎とディババの一騎打ちとなった。

「自信の持てるところでスパートしよう」と冷静に戦局を見極めていた木崎が勝負をかけたのが、40キロの給水地点。これまでの給水でアフリカ勢がもたつていたのを見逃さなかった。「ここで行かないと強くなれない」と、自身を奮い立たせたスパートで、一気に突き放した。優勝タイムは2時間23分34秒。一昨年の横浜国際マラソンで記録した自己ベストを3分近く更新した。

 初出場を果たした昨夏のロンドン五輪では日本人最高の16位。木崎は世界との実力差を痛感した。そんなかでアフリカ勢を倒しての優勝に「今回、ケニア、エチオピア勢と戦って、いいイメージの練習ができた」と喜んだ。世界選手権に向けては「今度こそはメダルに挑戦したい」と抱負を語った。

 3位に入った野口は世界選手権の派遣設定記録の2時間24分は切れなかった。目標としていた“完全復活”の優勝と、代表内定には届かなかった。ただ2時間24分5秒は、これまでの選考レースでは木崎に次ぐ2位の好タイムだ。代表の有力候補にあがったと言っていいだろう。本人もレース後に「完全復活か?」との問いに対して、「ちょっとは戻ってきたかな」と手応えを口にした。 

 上位の成績は以下の通り。

1位 木崎良子(ダイハツ) 2時間23分34秒
2位 ベルハネ・ディババ(エチオピア) 2時間23分51秒
3位 野口みずき(シスメックス) 2時間24分5秒
4位 エレナ・プロコプツカ(ラトビア) 2時間25分46秒
5位 早川英里(TOTO) 2時間26分17秒
6位 メスタウェット・トゥファ(エチオピア) 2時間26分20秒
7位 宮内洋子(京セラ) 2時間27分17秒
8位 ゲネト・ゲタネ(エチオピア) 2時間28分8秒
9位 加藤麻美(パナソニック) 2時間30分26秒
10位 堀江美里(ノーリツ) 2時間30秒52秒