ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズHCが体調不良のため、16日に行われた11月のニュージーランド代表戦(2日)と欧州遠征(3日〜25日)に臨む代表メンバー発表会見を欠席した。代理で会見に出席した岩渕健輔代表GMによると、15日に頭痛を訴えたため病院に行き、診断の結果、軽い脳梗塞の兆候が見られたという。現在は大事をとって入院し、検査を行っている。岩渕GMは「どのくらいの入院になるか分からないが、現段階ではニュージーランド戦も含めて前向きに考えている」と語り、27日に都内で始まる直前合宿からの代表スケジュールは予定通りジョーンズHCが指揮を執る方向で進める。
(写真:欧州遠征に合わせた新しい英字ロゴ入りのユニホームも披露されたが、指揮官は不在だった)
 会見の冒頭、日本ラグビー協会の広報担当者からジョーンズHCの欠席が伝えられると、報道陣から一斉に「えっ!?」と驚きの声が上がった。岩渕GMからは「世界王者のニュージーランド代表相手に勝利を収め、昨年のヨーロッパ遠征でのアウェー初勝利、今年6月のウェールズ代表撃破に続いて、日本代表として新たな歴史をつくっていきます」との指揮官のコメントが紹介されたものの、その後の質疑応答は、まずジョーンズHCの病状に関する質問が集中した。

 それによると、ジョーンズHCは前日まで国内の合宿地をチェックするために地方出張しており、そこでもギリギリまで今回発表された代表メンバー選考を行っていた。帰京後、代表スタッフと打ち合わせを実施していた際に「調子が悪い」と語り、タクシーを呼び、スタッフとともに病院に向かったという。岩渕GMは入院後のジョーンズHCとは「直接、会話はしていない」とした上で、「ご家族経由では話ができている」とコミュニケーションには問題がない状態であることを明かした。

 就任2年目のジョーンズHCが、今回のオールブラックス戦にかける意気込みは強いものがあった。「スキル、フィジカル、タクティクス(戦術)ともに一貫性があり、世界一」と相手の強さを認めつつも、「勝ちに行くことが目標」と夏からの代表合宿ではオールブラックス戦を念頭に置いたトレーニングを重ねてきた。

 今回、発表された32名のスコッドは35歳のLO大野均(東芝)らベテランから大学生のWTB藤田慶和(早大)、WTB福岡堅樹(筑波大)といった若手も揃う。ジョーンズHCが「現時点でのベストメンバー」と胸を張る陣容だ。2015年のイングランドW杯アジア予選を来年に控え、このオールブラックス戦と欧州遠征を経て、エディージャパンはチームを完成形へ近づける作業へ入っていく。

 そんな重要な時期だけに指揮官の体調不良は心配だ。協会では「まだ検査結果が出ていない。結果が出てから、どうするか考えたい」(岩渕GM)と、現時点でHC代行を置くといった措置は考えていない。ただ、オールブラックス戦後の欧州遠征は2年後のイングランドW杯も視野に入れ、岩渕GM曰く「W杯の予選プールよりもタイトな日程」が組まれている。オールブラックス戦の翌朝には日本を発ち、英国内で場所を変えてスコットランド代表(9日)、イングランドの強豪クラブのグロスター(12日)、ロシア代表(15日)と対戦する。その後はスペインに移動し、同国代表とも23日に試合を実施する。ハードスケジュールだけに病状によっては無理は禁物だ。

 半月後に迫った王国との対決を前に「これまで取り組んできたフィットネス、セットプレー、アタックの強化で、以前、ジョーンズから話があった“4トライを獲る”ことをターゲットにしていきたい」と目標を岩渕GMは語った。そして「一緒にやってきて、ようやくニュージランドと戦える。一緒に戦いたい」と指揮官の早期回復を願っている。ジョーンズHC就任後、ジャパンは着実にレベルを高めてきた。その絶好の腕試しの舞台で、名将の笑顔が見られることを祈りたい。