ソチパラリンピック最終日となった16日(現地時間)、クロスカントリーの男子10キロフリーと女子5キロフリー、アルペンスキーの女子大回転が行なわれた。クロスカントリーでは男子・座位で久保恒造(日立ソリューションズ)が5位、女子・立位では出来島桃子(新発田市役所)が6位、そしてアルペンでは女子・座位で村岡桃佳(正智深谷高)が5位、田中佳子(エイベックス)が7位入賞を果たした。
「ロシアには化け物がいる」とは開幕前に語られた久保の言葉だ。久保は「その化け物たちの間に、どこまで食い込めるか」がメダル獲得の最大のカギを握ると語っていた。そして、最終日を迎えたこの日、最後の種目を終えた新田佳浩(日立ソリューションズ)からは「ロシアがあまりにも強すぎた……」という言葉が聞かれた。想像以上にロシアという壁は厚く、かたかった。それがクロスカントリーおよびバイアスロンの選手たちの共通した感想だったに違いない。最終日のこの日行なわれた男女合わせてクロスカントリーでも、ロシアは6種目のうち4種目で金メダルを獲得した。

 今大会、“世界最強の布陣”と言われた日本のアルペン男子座位は、“表彰台独占”を目標としてきた。結果は、金メダル3つを含めた計5個のメダル獲得という好成績を挙げたものの、“表彰台独占”は実現できなかった。しかし、クロスカントリー・バイアスロンのロシア勢はそれを、男子は5度(クロスカントリー15キロ・座位、バイアスロン12.5キロ・座位、クロスカントリースプリント・立位、バイアスロン15キロ・座位、クロスカントリー10キロフリー・立位)、女子は1度(クロスカントリー5キロフリー・視覚障害)も達成させたのである。

 ロシアは今大会行なわれた5競技すべてにおいてメダルを獲得した。アルペンでは金6、銀6、銅4の計16個。クロスカントリーでは金12、銀9、銅11の計32個。バイアスロンでは金12、銀11、銅7の計30個。そして団体競技であるアイススレッジホッケーと車いすカーリングで銀メダルを獲得。総メダル数は金30、銀28、銅22の計80個にものぼった。2位は金メダルではドイツの9、総数ではウクライナの25。「ロシアがあまりにも強かった」という言葉が出るのも無理はない。

 一方、「金3、銀3、銅5を含む計10個以上のメダル獲得」を目標としていた日本は、金3、銀1、銅2の計6個という結果となった。複数のメダル獲得を狙っていたクロスカントリー・バイアスロンで銅メダル1つに終わったことが、大きく響いたことは否めない。

 しかし、メダルは結果のひとつに過ぎない。今大会、日本選手団が得たものは他にもある。そのひとつはニューカマーたちの奮闘だ。特に女子では10代選手3人が出場した。クロスカントリー・バイアスロンの18歳・阿部友里香(立位)と16歳・江野麻由子(座位・秋田南高)、そしてアルペンの17歳・村岡である。

 阿部はクロスカントリー3種目に出場し、パラリンピックデビューとなった1種目目の15キロで8位入賞を果たした。最終種目の5キロフリーでは、自らが競技を始めたきっかけとなり憧れだった太田渉子(日立ソリューションズ)の10位を上回り9位に入った。4月からは名門、大東文化大学のスキー部に所属する。今後のさらなる成長が楽しみだ。

 アルペンの村岡も3種目に出場し、最終種目の大回転で見事5位入賞を果たした。これまで日本の女子アルペン界を牽引してきたのは、パラリンピックで金2、銀3、銅5の計10個のメダルを獲得した大日方邦子だった。しかし、バンクーバー大会を最後に第一線から退いた。その大日方の穴を埋めるべく台頭してきたのが村岡だった。代表入り1年でのパラリンピック5位入賞は本人のみならず、周囲にとっても大きな収穫となったに違いない。

 江野は本来ならパラリンピックに出場することができなかった選手だ。国際大会での成績が出場条件に満たさなかったからだ。しかし、国際パラリンピック委員会(IPC)からの推薦によって、直前に出場が決定したのだ。日本選手団の最年少として出場した江野は、2種目に出場し、ともに21位。世界との大きな差を痛感したに違いない。だが、彼女にとってはパラリンピックを体験し、肌で世界を感じたことが何よりも大きな財産となるに違いない。4年後、平昌で彼女たちの成長した姿を見られることを期待したい。

 今年4月からパラリンピックの管轄が、厚生労働省からオリンピックと同じ文部科学省へと移管される。今後、パラリンピック競技は2020年東京大会に向けて、普及拡大が進むことは間違いない。これまでスポーツとして扱われることが少なかった障害者スポーツにも目が向けられることだろう。
「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた成功への第一歩をソチパラリンピックでしるしたい」
 壮行会で日本選手団主将の森井大輝(富士通セミコンダクター)がそう語った通り、今大会の選手たちの活躍および奮闘する姿は、今後につながるはずだ。

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