6日、日本学生陸上競技対校選手権大会2日目が埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われ、男子100メートル決勝は山縣亮太(慶應義塾大)が10秒20で優勝した。決勝に進んでいた400メートルリレーでは第2走者で出場し、5位だった。男子200メートル予選第4組に登場した桐生祥秀(東洋大)は20秒60で同組トップ。順当に準決勝進出を決めた。女子100メートル決勝は藤森安奈(青山学院大)が11秒86で制した。藤森は400メートルリレーでもアンカーとして、青学大の初優勝に貢献した。
(写真:同学年のライバル九鬼<左>に先着し、初優勝した山縣)
 男子100メートルは準決勝の快走から“日本人初の9秒台”への期待は高まっていた。追い風はわずかに0.1メートルという中での10秒14の好記録。「思ったよりいいタイムが出た」と本人も手応えを掴んでいた。最後は流してのタイムだっただけに、条件さえ整えば不可能ではないことに感じられた。

 そして迎えた決勝。隣のレーンには昨年王者の九鬼巧(早稲田大)がいた。九鬼は同学年。高校時代にはインターハイを2度制している。山縣が出場した3年時の決勝では、九鬼を意識するあまり硬くなり、自分の思うようなレースができぬまま敗れた。その反省もあって、「彼を意識しないようにしていた」と臨んだ。

 一瞬の静寂から、号砲が鳴らされると、勢いよく飛び出す。中盤からの加速で一気に抜け出すと、ぐんぐんとリードを広げ、そのまま逃げ切った。過去2年はケガに泣いたインカレで、ついに初優勝を果たした。山縣も「4年目にして、しっかりとタイトルをとれたのはうれしく思います」と素直に喜んだ。

 しかし、記録に関しては「まだまだ不満が残りますね」と納得はしていない。向い風0.4メートルと、風は味方しなかったこともあったが「そういうところでタイムを出せる選手が世界で活躍できる」と自らに言い訳は許さなかった。

 また何かと比較される桐生が100メートルを回避し、不在だった。山縣も200メートルの出場を見送ったため、今大会での直接対決は見られなかった。それでもライバルを強く意識しているようで「彼だったらもっと速いんじゃないかと思う。まだ喜んではいられない」と語る。

 とはいえタイトル以外にも収穫はあったようだ。山縣は腰のケガの影響による調整不足から春先は結果を残せなかったが、快方に向かってきている様子。「自己ベストを狙えるところまで調子は上がっている」と、2年前に出した10秒07の更新も見えてきている。スタートブロックから立ち上がる際にあった腰の痛みも消え、「気にせずスタートを切れるようになったのは大きい」と口にし、中盤からの二次加速も「もうひと伸びできるようになってきている」と手応えを感じている。

 残り1カ月を切ったアジア大会に対しては、「一皮むけた走りをしたい」と自己ベスト(10秒07)更新と金メダル獲得を目指す。残り時間は決して多くはないが「硬くなりさえしなければ、それなりの結果はついてくる」と自信をのぞかせた。

 4時間後に行われた400メートルリレー決勝では、雨の中で第2走を務めたが、慶大は5位だった。山縣は明日の1600メートルリレーにも出場する予定。最後のインカレで有終の美を飾れるのか。

 一方の桐生は、この日、男子200メートル予選に出場した。前を走る3組までは追い風だったのにも関わらず、桐生の4組は風速1.0メートル逆風が吹いた。「向かい風に対応しきれなかったです。疲れたというか、あまり伸びなかった」と、後半の加速を妨げられた。
(写真:ゴールまでスピードを緩めることなく記録を狙いに行った)

 最後まで流すことなくフィニッシュし、記録は20秒60。4組1位に入り、予選はクリアしたものの、本人は不満げ。「全然納得している部分はない」と語った。久々の200メートルを走り、全体トップの20秒60のタイムで予選通過にも「60は情けない。ちょっとショックです」と悔しさを滲ませた。桐生は大前祐介の持つ日本ジュニア(20歳未満)の記録の更新を照準に置いていたのだ。

 普段は自分らしい走りを追及する桐生だが、今回の200メートルは「珍しくタイムも狙っている」という。明日は準決勝、決勝が行われる。準決勝では日本選手権王者の原翔太(上武大)と同組となった。「明日もタイム重視でいきたい」と桐生。初の日本インカレで、ジュニア記録更新とタイトル獲得を狙う。

(文・写真/杉浦泰介)