23日からオープン戦がスタートし、いよいよ本格的な球春が到来した。この時期のオープン戦は1軍開幕入りのメンバーを見極めるテストといった意味合いが強い。特に1、2軍の間を行き来する若手選手にとっては首脳陣への貴重なアピールの場となる。観客にとっても主力以外の選手をチェックする絶好の機会だろう。1試合まるまる出場できるわけではなく、与えられるャンスが少ない分、一球、ワンプレーに重みと緊張感が走る試合が見られそうだ。
 さて、中田翔(北海道日本ハム)、佐藤由規(東京ヤクルト)をはじめ、注目のルーキーたちが連日、紙面やテレビを賑わせている。当然のことながら、昨年も彼らと同じように騒がれた期待のルーキーがいた。しかし、彼らの中には、その実力を発揮することができず、悔しい思いをした者もいる。なかでも福岡ソフトバンクの左腕・大隣憲司と東京ヤクルトの右腕・増渕竜義は1軍を経験しながらもケガで思うような成績を残すことはできず、期待を裏切った1年となった。それだけに今季にかける思いは強く、首脳陣へのアピールに余念がない。

 大隣は23日の巨人とのオープン戦で先発。レギュラーシーズンでも主力を張る谷佳知、高橋由伸、阿部慎之助らが名を連ねる巨人打線相手に、5回を投げて3安打無失点。強気の内角攻めが光る好投を披露した。

 それでも「内容は結果オーライなものばかり」と不満の表情を見せた大隣。“自分の実力はこんなものじゃない”という首脳陣へのアピールともとれるコメントだ。そんな強気な姿勢からは調子のよさが垣間見える。

 昨年は故障で果たせなかった開幕ローテに1歩近づいた大隣。次回登板予定の3月2日は再び巨人が相手だ。開幕に向けて主力選手は徐々に調子を上げ、バットも振れてくる。大隣の勝負はこれからだ。

 一方、17日、サムスン(韓国)との練習試合で先発した増渕は2回を6人でピシャリと抑えるパーフェクトピッチングを見せた。高校時代はMAX149キロの速球が自慢の投手だったが、この試合では変化球などで三振を奪うなど、制球力のよさが目立った。

 続く23日のSKワイバーンズ(韓国)との練習試合では3番手として5回から登板。5回こそ四球で出したランナーを送りバント、内野ゴロで3塁に進めると、同点タイムリーを打たれたが、その後の2イニングは無失点に抑えた。

 現在、石川雅規、ダニエル・リオス、館山昌平が先発ローテ入りが確実視されているヤクルト。残るは先発枠は3つで、増渕のほかに加藤幹典、佐藤由、村中恭兵、高井雄平、松岡健一らが候補として浮上している。激しい競争が続くが、増渕にも可能性は十分にある。

 増渕は新人王の権利を残している。それだけに開幕1軍入りを果たし、新しい神宮のマウンドに立ちたい気持ちは十分にあるはずだ。今後、オープン戦で他球団の主力相手にどんなピッチングを見せられるのかがローテ入りのカギとなる。さらなる首脳陣への猛アピールが不可欠だ。

 2年目の飛躍を誓い、今、開幕ローテーション入りを狙う大隣と増渕。果たして2人はどのような開幕を迎えるのか。オープン戦での2人のピッチングに注目したい。