安倍前首相の突然の辞任に続いて、民主党の小沢代表が辞意を表明した。「民主党はまだ力不足。次の選挙で勝つのは難しい」と大批判したが、小沢氏はわずか2日で翻意した。
 与野党激突と言われる中、党首会談の場では自民・民主の「大連立」というウルトラCが協議されていた。
 厳しい権力闘争を繰り広げる政治家たちの言動から、リーダーたる人間の資質について考えた。(今回はVol.7)
二宮: そんな時代にはなってほしくないが、もしリーダーが「俺は戦争する」と決断したら、国民は戦争に駆り出される。それも、ある意味、その時代に生きた国民の運命ですが、悪いけれども、加藤さんや安倍さんと一緒に私は戦争したくない。きっと負けるから(笑)。

木村: 確かに、良し悪しは別にして、リーダーにはエネルギーが必要だと思います。しかも内側に秘めたエネルギーじゃなくて、外から見てもわかるようなエネルギーを持っていないと、他人を引っ張っていくことはできない。
 でも、安倍首相にそのエネルギーを感じたかというと、残念ながら、感じなかったように思う。「本宮世代」の人間としてはあまりに物足りない。『硬派銀次郎』にしても、『男一匹ガキ大将』にしても、本宮さんの作品の主人公にはエネルギーがある(笑)。

伊藤: 安倍さんのことを語るには、与党の一員としては、まず最初にお詫びしたい。そのうえで、ぜひわかってほしいことは、1年で判断するのはちょっと酷だったということです。小泉さんだって、1年目はボロボロに批判されていたんですから。

木村: でも、小泉さんは言われても辞めなかったじゃないですか。

伊藤: 確かに小泉さんは、そこから道を開きました。意志あるところに自分の道と運を開いたと思います。しかし、安倍さんは参議院選挙での負け方がきつかった。

本宮: ボロ負けした原因は何ですか。

伊藤: 国民との信頼関係を作ることに失敗したということだと思います。まず年金問題です。初動の対応がまずかった。あれほどの問題が起きたのに、「大丈夫だ」と言ってしまった。「あんなにひどい社会保険庁なんだから、きっとほかにも問題があるだろう」とみんなが思っているのに、「大丈夫だ」と簡単に言ってしまったため、逆に多くの国民が不安を感じた。
 そしてもう一つは、「この問題は民主党の菅さん(菅直人民主党代表代行。96年の第一次橋本内閣の厚生大臣)にも責任がある」と発言したことでしょう。あそこで安倍さんの誠実なイメージが傷ついたと思います。

二宮: そう! それです。あれはリーダーが一番やっちゃいけないことです。あのとき僕は、ものすごくガッカリした。安倍首相は国のトップですよ。それを「菅さんも悪い」と責任転嫁した。あれはものすごく情けなかった。「すべての責任は私にある。よって私がすべてを解決する」と最初に言うべきだった。

(続く)

<この原稿は「Financial Japan」2008年1月号に掲載されたものを元に構成しています>
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