北京五輪女子マラソン代表最終選考を兼ねた名古屋国際女子マラソンが3月9日、愛知・瑞穂陸上競技場を発着点に行われ、21歳の中村友梨香(天満屋)が初マラソンながら2時間25分51秒で優勝、北京五輪代表の有力候補となった。2位には同じく初マラソンの尾崎好美(第一生命)、3位は加納由理(セカンドウィンドAC)、4位は原裕美子(京セラ)、弘山晴美(資生堂)は9位、アテネ五輪代表の坂本直子(天満屋)は10位だった。
 注目されていた高橋尚子(ファイテン)は9キロ過ぎに先頭集団から遅れて27位でゴール。レース後の会見では、昨年8月に米国で膝の手術を受けていたことを明かした。
(写真:2時間25分51秒で優勝を果たした初マラソンの中村)

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 実力者が集結し、トップが次々と入れ替わる大混戦のレースを制したのは、21歳の新星だった。
残る代表切符は、実質1枚。「記録より勝負」への意識からか、10キロまでの5キロのラップは17分53〜54秒というスローペースで進む。その中で、8年ぶりの名古屋となった注目の高橋は9キロ過ぎにペースダウン、30人近い先頭集団から引き離される苦しい展開となる。

 弘山晴美、平田裕美の資生堂勢が積極的に集団を引っ張り、徐々にペースが上がるが、先頭集団は中間点で17人と、有力と見られたランナーは遅れた高橋以外ほぼ全員含まれていた。
 レースが動いたのは、中間点を過ぎてからだ。まず25キロ過ぎに原裕美子(京セラ)が仕掛けるが、後続を引き離すまでにはいたらず。28キロ過ぎ、アテネ五輪代表の坂本が前に出ると、先頭集団は6人に絞られる。31キロ過ぎの上り坂で、小出義雄監督門下の堀江知佳(アルゼアスリートクラブ)がスパート、一時は単独でトップに立つ。
 しかし、32キロ過ぎ、初マラソンの中村が堀江をかわし一気に引き離す。加納、尾崎らが追うが、中村は35キロまでの5キロを16分半でカバーするなど力強い走りで差を広げるとそのまま逃げ切り、2時間25分51秒で優勝のゴールテープを切った。

(写真:中村選手と天満屋の武富監督)
 レース後、中村は「30キロ過ぎでレースが動くところまでは、何があっても余裕を持って走ろうと思った。坂を上り終わってちょうど堀江さんが前に出て、後ろにもあまりいなかったので、駅伝の10キロと思って切り替えていこう、と。残り5キロで、(2時間)26分を切られるか分からなかったが、とにかくペースを上げていこうと思った。目標だった名古屋のレースを走れて幸せ。優勝できたのはチームのみんなのおかげ。本当に嬉しい」と爽やかな笑顔を見せた。

 天満屋の武富監督は「残り10キロで前に出たときは最後まで持つか不安もあった」と振り返ったが、中村の北京五輪選考レースへの挑戦は2年前から決めていたことを明かし、「この2年、流れの中で走り込みを入れながら練習を積めてきたのが良かったと思う」と語った。
 1月の大阪国際女子マラソンで日本人トップの2位に入ったチームの先輩である森本友(天満屋)がマークした2時間25分34秒にはわずかに及ばなかったものの、実力者たちを抑えての価値ある優勝で、北京五輪代表に大きく前進した。

 高橋、「まだやりたいことがある」

 1年4ヵ月ぶりのレースに注目を集めた高橋は、スローペースの展開ながら10キロ通過を待たずに先頭集団から脱落。観客の大声援を受けながら走り続けたもののペースは上がらず、2時間44分18秒の27位に終わった。
 レース後の会見での第一声は「やっちゃいました(笑)」。「ここまで走れないとは自分でも思っていなかったが、これが今の実力だと思う」と振り返った。昨年8月に右ひざの半月板の手術をしたことを明かし、「その時期に膝にメスを入れることに迷いはあったが、名古屋の舞台に立つために踏み切った。8月からやれることは全力でやってきた。夢をあきらめちゃダメだと自分に何度も言い聞かせてきた。皆さんにも伝えたかったが、できなかったのが残念。逆に『夢に向かって頑張れ』というメッセージをいただきながら走れた」と笑顔を絶やさずに語った。

 北京五輪出場は絶望となったが、引退については否定し、「この場では言えないが、もう少しやりたいことがある。チームQのみんなにも、もう少し一緒にやってほしいと伝えた。まだまだ陸上生活は続けたい」と現役続行への意欲を見せた。

 北京五輪マラソン代表、10日に発表

 北京五輪のマラソン代表は、昨夏の大阪世界選手銅メダルを獲得した土佐礼子(三井住友海上)が内定し、昨年11月の東京国際女子を大会新記録で制したアテネ五輪金メダルの野口みずき(シスメックス)も確定と見られており、今年1月の大阪国際で2時間25分34秒で日本人トップの2位に入った森本友(天満屋)、この日優勝した中村が残り1枠の代表の座を争うと見られる。
 男子は、福岡国際で日本人最高の3位に入った佐藤敦之(同)がほぼ確実と見られ、大阪世界選手権5位の尾方剛(中国電力)、東京で日本人最高の2位に入った藤原新(JR東日本)、びわ湖毎日3位の大崎悟史(NTT西日本)が有力と見られている。
 男女マラソン代表は、10日の日本陸上競技連盟理事会・評議員会で決定する。


2008年名古屋国際女子マラソン
<上位結果>


優勝 中村友梨香(天満屋)2時間25分51秒
2位 尾崎好美(第一生命) 2時間26分19秒
3位 加納由理(セカンドウィンドAC)2時間26分39秒
4位 原裕美子(京セラ) 2時間27分14秒
5位 堀江知佳(アルゼアスリートクラブ) 2時間27分16秒
6位 大島めぐみ(しまむら) 2時間29分03秒
7位 平田裕美(資生堂) 2時間29分23秒
8位 西尾麻耶(九電工) 2時間29分34秒
9位 弘山晴美(資生堂) 2時間29分50秒
10位 坂本直子(天満屋) 2時間30分21秒 

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Qちゃん「負けてサバサバ」の謎
「北京五輪への最後の1枚の出場権をかけた名古屋マラソン。注目の高橋尚子選手は10キロの手前で失速をして、惨敗を喫してしまいました。レース後、明らかになったことがあります。高橋選手が記者会見で自ら答えたのですが……」<続きは携帯で>

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