二宮: 2杯目はそば焼酎「雲海」の新しい飲み方であるソーダ割りでどうぞ。
八木沼: ありがとうございます。シュワシュワと炭酸がはじけるので、口当たりがさわやかです。女性にも飲みやすいですし、爽やかな喉越しがまたいいです。

 お酒はすべていい思い出

二宮: 3年前にご結婚されましたが、ご主人と一緒に晩酌をする機会は?
八木沼: 主人はお酒があまり強くないので、一緒に飲むと、だいたい先に床に寝てしまいます(笑)。だから、隣でひとりで飲むことも多いですね。外食をした時も、主人は1杯だけ付き合ってくれる感じでしょうか。

二宮: となるとお酒の話題では、夫婦であまり盛り上がれませんね。
八木沼: ただ、出会いもお酒の席だったので、その意味ではお酒が人間関係を豊かにしてくれた部分は大きいですね。いろいろな仲間と飲んだお酒はすべていい思い出になっていますし、お酒の場で発展していった仕事の話もありますから。

二宮: 確かに「お酒は人生の潤滑油」とも言われますからね。
八木沼: だから、主人も外では付き合いで結構、飲むことは多いみたいです。話を聞いて「そんなに飲めるんだ」ということもしばしば。その分、家では飲まないようにしているのだと思います。

二宮: フィギュアスケートのシーズンもスタートして、男女ともに日本勢の活躍が目立っています。グランプリシリーズの中国杯で町田樹選手、フランス杯で無良崇人選手が優勝するなど新たな選手も台頭しています。
八木沼: 男女ともにいい選手がそろって層が厚くなっていますよね。小さい頃から苦労しながらも、周りのサポートを受けて頑張ってきた選手が残っている。国内でも実力が拮抗した状態で争っているから自然と切磋琢磨することによって、海外でも高いレベルの戦いができています。

二宮: 浅田真央選手は滑りの基礎でもあるスケーティングの部分から見直しを図り、試行錯誤の時期が続いていましたが、先の中国杯では優勝しました。復調の兆しとみていいでしょうか。
八木沼: ジャンプ、スピン、ステップ、そして演技構成点など、すべての要素を確実に決めて、さらに出来栄え点でもプラスをとっていくことが今シーズンのひとつの目標にもなっていると思います。プログラム全体の土台をしっかり作ることでどんな場面でも点数を獲得できる。これも来季のソチ五輪へと繋がっていくのではないでしょうか。

二宮: 周囲は毎年、結果を求めますが、バンクーバー五輪が終わって課題を克服しながら、またソチを目指す作業は並大抵のことではないと感じます。
八木沼: そうですね。浅田選手もバンクーバーでキム・ヨナ選手と戦ったからこそ気づいたことがあったはずです。きっと“私はこうなりたい”という目標像が見えたのではないでしょうか。だからこそ、佐藤信夫先生の指導を受けて、一からスケーティングを直していく決意に至ったのだと思います。一からやり直すと口で言うのは簡単ですが、実際にはすごく時間がかかる作業です。スケートを始めて15年以上やってきたことを変えるわけですから、1シーズンを棒に振ってしまうことだってあります。その決断と努力は本当に素晴らしいと感じますね。

 ペアならではの難しさ

二宮: 次回のソチ五輪のフィギュアスケートでは団体戦も採用されます。こちらも日本勢の活躍が楽しみですね。
八木沼: ファンとしては楽しみですし、金メダルの期待は高いですが、選手の立場からすると調整が難しくなります。個人の前に団体戦が入る日程になるので、五輪期間中、まずは団体戦に向けての調整、そしてその後の個人での戦いに備える。これはピークの作り方が難しくなりそうです。団体と個人で代表選手を入れ替えることは認められませんから、個人でエントリーする選手が団体も滑らなくてはいけません。誰がショートプログラムを滑り、誰がフリーに回るのかといった戦略も含めて、選手は大変になりますね。

二宮: 団体戦のポイントとなるペアでは、昨季の世界選手権で銅メダルを獲得した高橋成美、マービン・トラン(カナダ)組の扱いが議論になっていますね。もちろん国籍が異なるペアでは日本代表では出られない。「トラン選手を帰化させては」という声が挙がる一方で、「五輪のメダル目的で国籍を変えるのはいかがなものか」という反対意見もあります。
八木沼: 実は日本のフィギュアスケート界で一番、環境を整えるのが難しいのがペアなんです。シングルやアイスダンスと比べると、指導者も少ない。日本ではシングル選手を目指すスケーターが主ですから、ペアに取り組む選手は、どうしても海外で相手を探すことになります。日本人同士でペアが組めれば理想ですが、そのためには指導体制や練習環境の整備などやらなくてはいけないことがたくさんある。ここは帰化の話とは別に、段階を踏んで取り組んでほしい課題だと感じます。

二宮: 目先の結果のみならず、将来を見据えたプランを描くことが大切だと?
八木沼: それにアイスダンスもそうですが、男女で組む種目は、お互いの相性が最も問われる種目です。単に男子と女子の素質のある選手が組めば、いいペアになるとは限りません。スケーティングやお互いの考え方などが一致しないと本当に息の合った演技はできない。ある程度のレベル同士になると、手を握って一滑りしただけで合うか合わないか分かるといいますから。

二宮: 手を握っただけで!? それはすごい。
八木沼: たとえば一緒に手をつないで滑ってみて、お互いのスケーティングが合っていないなと感じたとします。でも、やってみないと分からないことも多い。最初に違和感があっても続けることで解決策が生まれる場合もある。その見極めとお互いのフィーリングのマッチングが大切になると思います。これはアイスダンスも含め、ペア種目ならではの難しさですね。海外ではインターネットで相手を募集できるサイトもあります。どの国も条件にあったいい相手を探すのは大変そうです。

 一緒に滑って気づいた相手の腰痛

二宮: トップを極めようとすればするほど、微妙な感覚の一致が大事になる。まさに「真実は細部に宿る」ですね。
八木沼: 私もプロになって、昨年まで6年間、アイスショーで大島淳さんとペアを組みました。練習で最初に手を握ると、その日の状態が分かりますね。“今日はあまり体調が良くない”とか、“今日は元気だ”とか。逆に相手も私の状態は分かったはずです。シングルとは違って自分だけの問題でないので、相手の様子も感じながら息を合わせていく。ペアは日々の生活が相手にダイレクトに伝わることで、それが競技にも影響しますから大変ですね。

二宮: プライベートのカップル以上に、いい関係を維持するのは大変そうですね。
八木沼: おかげさまで私たちのペアはショーで好評をいただきました。観た方に話を聞くと、「2人の並んだ雰囲気と滑りが合っていていい」と。そういう目に見えない部分もプロでは特に大切になるのかもしれません。競技会でも海外の選手の中にはプライベートでもペアで、お互いの生活がスケートとともにある組もいます。2人の醸し出す雰囲気が演技にプラスアルファで出てくる場合もあるわけです。ところが、いい演技をしていたペアが息が合わず、精彩を欠いていると感じたら、実はプライベートでの仲が悪くなっていたというケースはよくあります。そういう人間関係がにじみ出てしまうのも、ペア種目の難しさであるかもしれません。

二宮: リフトの時などは相手に身を預けるわけですから、互いに信頼感がないと演技にも支障が出ますよね。
八木沼: お互いの息が合っているのはもちろんのこと、お互いの状態も把握していないといけませんから、日常のカップル以上に相手に精通していないと難しいかもしれません。ある時、大島さんとリハーサルで滑っていて、どうもおかしいなと感じることがありました。でも、彼はもともと調子が悪くても顔にも出さないし、言葉にも出さないタイプでした。でもあまりにもおかしいので思い切って、「もしかしたら腰が悪い?」と聞いてみたんです。そうしたら、しぶしぶ「うん」と認めました。それでディレクターと話をして直前にリフトをやめ、内容を変更したこともありましたね。

二宮: いや〜、経験者しか語れない貴重な話が聞けました。最近は草食系で手もつながないカップルもいるそうですが、もし、そういうペアがいたら絶対に成功できないでしょうね(笑)。
八木沼: 普通のカップルでもどうかと思いますが(笑)、フィギュアスケートの世界ではありえない話ですよ。

 フィギュア選手はアスリートか?

二宮: 以前、荒川静香さんをお招きしたときにも話題になったのですが、採点競技はジャッジの印象に左右される部分がある。だからといって、テクニックの部分で採点を厳密にすると、芸術性が軽視されてしまう。美しさや優雅さといった主観と、客観的な基準をいかに両立させるかは永遠の課題です。
八木沼: 選手によって曲も違うし、演技の内容も違う。どちらが優れているか比較が難しいのは事実ですね。ただ、その中でも技術を確実に決めて、最も観る人を魅了して心をグッとつかんだ選手が一番になっていることは確かだと思います。

二宮: 得点を争ったり、タイムを競う選手であれば、何より求められるのはアスリートとしての資質です。しかし、採点競技の選手はアスリートであると同時に、アクターやアクトレスでなくてはならない。この点も採点競技のおもしろさであり、難しさと言えるでしょう。
八木沼: でも私はフィギュアスケートや体操などの選手は、あくまでもアスリートの要素が元になっていると思います。アスリートとしていながら、演者として表現するものと言えばいいのでしょうか。以前、ある大学で講演した際に、学生からこんな質問を受けました。「フィギュアスケートはスポーツではない。五輪競技なのはおかしい」と……。でも実際に会場で競技をみていただければ、ジャンプを着氷した時の大きな音やきしみ、スピードなど、どれだけ戦っている競技なのかということが分かっていただけると思います。

二宮: 誰の目にも勝敗がはっきりと分かるかどうかをスポーツの判断基準にするなら、そういう極論も出るでしょうね。シンクロナイズドスイミングなどでも言えることですが……。
八木沼: その質問を受けて私が感じたことは、満員の観客に囲まれて頭のてっぺんから足のつまさきを何万人もの方たちに観られている中で、ひとりで滑れるかどうか。気持ちのコントロールと自分の持つ技術のしのぎ合いをリンクに出てたったひとりで作り出す。これはおそらく難しいことでしょう。誰もができないことを体で表現し、高い次元で競い合う存在をアスリートと仮定するなら、まさにフィギュアスケートの選手はアスリートです。トップの選手は、ほんのわずかなミスが命取りになる際どい勝負をしています。本番の一瞬のために、長い時間をかけて心も体もトレーニングする。そう考えると、やはり他の競技同様、フィギュアスケートもアスリート同士の魂のぶつかり合いではないかという気がしています。

二宮: 話を伺っている間に、あっという間に時間が経ってしまいました。そば焼酎「雲海」のソーダ割りはいかがでしたか?
八木沼: さっぱりして飲みやすいですね。ロックで飲むのが好きでも、途中でソーダ割りを入れると、また何杯でもいけそうな感じがします(笑)。そば焼酎はクセがないので、どんな飲み方でも合いますね。

二宮: ぜひ、ご主人に勧めてください(笑)。
八木沼: そうですね。おいしかったので、今度、家でも試してみたいと思います。旦那がいるのに、ひとり飲みばかりではやはり寂しいですから(笑)。

(おわり)

<八木沼純子(やぎぬま・じゅんこ)プロフィール>
1973年4月1日、東京都出身。5歳からスケートをはじめ、世界ジュニア選手権で2位に入るなど早くから国際大会で活躍。88年に全日本選手権初出場で2位に入り、最年少の14歳でカルガリー五輪に出場する。93年にはアジアカップ、冬季ユニバーシアードで優勝。94年のNHK杯では3位。95年プロに転向後はプリンスアイスワールドのリーダーとしてアイスショーに出演する傍ら、フィギュアスケートの解説、各種メディアでのスポーツキャスター、 コメンテーターとしても活動している。現在はBSフジ「アスリートの力」(毎月最終金曜日)にレギュラー出演中。
>>公式ブログ

★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

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◎クイズ◎
 今回、八木沼純子さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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