障害者スポーツの電動車椅子サッカーW杯の記念すべき第1回が10月9日から13日という日程で東京都江東区のBumB東京スポーツセンター文化館で開催されている。ホスト国の日本をはじめ、米国、フランスなど7カ国170人が参加。頂点を目指し、熱い戦いを繰り広げている。
(写真:日本対イングランド、キックオフ直前の様子)
 電動車椅子サッカーは1チーム4人、サッカーボールの1.5倍の大きさのボールを使う。会場はバスケットボールと同じ広さの室内コートで、試合時間は前後半20分ハーフの40分。今までは各国がそれぞれのルールでプレーしていたが、今大会に合わせて車椅子の速度やボールの大きさを統一した。

 選手はジョイスティック型のコントローラーで電動車椅子を操作し、車体の足元に装着した金属製のフットガードにボールを当ててプレーする。フットガードは金属製のため、ボールが弾んでしまう面はあるが、ダイナミックなプレーにはそれを忘れさせる魅力がある。車体を大きく旋回させて放つシュートや、車体同士が激しくぶつかりあうシーンなど迫力十分だ。

米国に完敗も、決勝Tの雪辱誓う

 日本代表は東京、神奈川、奈良、愛知のチームから選ばれた20歳から36歳までの8人。優勝候補のフランスに次いで、選手の平均プレー歴が長く、今大会は上位進出が期待されている。

 10月10日、大会の2日目が行われ、日本は予選リーグの2試合を戦った。最初の対戦相手は2試合を終えて1分1敗のイングランド。
 この試合、9日(大会1日目)にベルギーを3−0で、デンマークを4−0で破って2連勝の日本の攻撃力が爆発した。前半16分、プレー歴10年の田中雅人のゴールで先制すると、同じくプレー歴10年の北沢洋平が2点を追加して、前半だけで3点のリード。後半にも田中が駄目を押して、4−0で快勝した。当たりの強いイングランドに対して、GK野田拓郎を中心とする守備面の奮闘も光った。

 試合後、2ゴールを挙げて勝利の立役者となった田中は「(ゴールの瞬間は)すごく嬉しかった。味方がいいパスを出してくれたおかげで決めることができた。みんなの得点だと思っている。僕は点を獲ることが好きで、シュート練習を重点的でやっていたので、それを生かせてよかった」と喜びを爆発させていた。

 続く対戦相手は、日本と同じく3連勝の米国。直前の試合で優勝候補のフランスがイングランドと引き分けて通算成績が3勝1分となったため、この試合を制したチームが予選リーグ首位に躍り出る。予選リーグの成績は13日の準決勝の組み合わせに関係する。日本にとって負けられない試合だ。

(写真:試合後、互いを称えあう日本と米国の選手たち) その重要な一戦で日本は後手に回った。開始して1分も経たないうちにシュートを放つなど、まずまずの立ち上がりだったが、チャンスを生かせない。逆に、前半8分、米国に豪快なシュートを決められて、失点した。

 1点ビハインドの日本は後半からコーチ兼選手の高橋やイングランド戦で2ゴールの田中らを投入して反撃に出るが、米国の堅い守りを崩せない。後半ロスタイムには、ゴール前のこぼれ球を押し込まれて、0−2の完敗を喫した。

 痛恨の敗戦をうけて、重松弘昭日本代表監督は「やっぱり悔しいですね。その一言しかない」と苦虫を噛み潰したような表情だった。応援にかけつけた元サッカー日本代表監督でチームアドバイザーの岡田武史氏も「昨日は素晴らしい試合にしてくれて期待していただけに残念。このチームはうまくいっている時はいいけれど、先に点をとられたら、ショックを受けてしまう。1点差で負けているのだから、本当に勝ちたかったら、もっと必死にならないと。セオリーを破って、前線に残って点を獲ろうとする奴がいてもいい」と厳しく指摘していた。

 もちろん、日本の敗退が決まったわけではない。4試合を終えて、3勝1敗で決勝トーナメント進出圏内の3位。12日には優勝候補のフランスとの対戦が控える。決勝トーナメントに進めば、米国と再戦する可能性は高い。

(写真:記者の質問に答える岡田アドバイザー)「サポーターは素晴らしい応援をしてくれている。これ以上無様な姿は見せられない。米国と再び対戦できる機会はあると思うので、選手たちがリベンジしてくれると期待している」(重松監督)「悔しいけれど、(日本の悪いところが)準決勝や決勝で出なくてよかったのかなとも思っています」(岡田アドバイザー)。車椅子に乗ったサムライたちの戦いはまだこれからだ。


生き生きとした表情でコートをかけまわる選手たち

 この大会では選手の生き生きとした表情が目についた。ゴールを決めてガッツポーズをとる選手がいれば、得点者を笑顔で祝福する選手もいる。敗戦の際には、肩を落として悔しがる。コーチが声を張り上げて、必死に選手に指示を出す場面も見られた。プレーヤーたちの熱は観戦者にも伝わってくるようだった。

 前後半ハーフで20分間という時間は観戦にちょうどいい。観客席とコートの距離が近いこともあって、臨場感も抜群。手に汗握る時間はあっという間に過ぎ去る。大会は、12日の予選リーグ最終日と13日の決勝トーナメントがまだ残っている。皆さんも一度、足を運んでみてはいかがだろうか。
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