これでは「スポーツ振興くじ」ならぬ「天下り振興くじ」だな。
 01年に鳴り物入りでスタートしたtoto(スポーツ振興くじ)が廃止の危機に立たされている。国民からソッポを向かれてしまっているのだ。


 売り上げを見れば、それは明らか。販売が始まった01年度が604億円、02年度が408億円、03年度が202億円、04年度が155億円、05年度が149億円。減少に歯止めはかからず、06年度は132億円にまで落ち込んだ。

 この結果、日本体育協会への助成金は07年度からゼロになることが明らかになった。他団体への助成金も減少の一途だ。01年には約58億円もあったスポーツ団体への助成金が06年には1億1800万円にまで激減した。07年度はさらに減少し、助成金は1億円前後になる見通し。そのわずかな助成金にしても、受取人が換金しなかった当選金からまかなっているありさまだ。

 これが民間会社なら、とっくに倒産だ。もちろん、役員クラスは給料をもらえる状況にはない。ところがtotoを運営する「スポーツ振興センター」は霞が関の高級官僚の天下り先になっているため、事業を整理しようという話がなかなか出てこない。ちなみに同センターの理事長には1920万円、理事には1500万円の年収が保証されているといわれる。冒頭で私が「天下り振興くじだ!」と批判した理由はここにある。

 さすがに所轄大臣も看過できなかったようで、この2月、国会答弁に立った伊吹文明文部科学大臣は野党議員の質問にこう答えた。
「サッカーくじを野放図にしておいたら、最後は赤字を国民負担で償却しなければならない。(センターに)寄生虫のようにくっついて高い給料をもらっているのは批判から言っても許されない」
 まさかここまで強い口調で答えるとは思わなかったが、「寄生虫」とまで言うんだったら、もう廃止にしてしまってはどうか。助成に回すカネはないのに理事長や理事の給料は減らせないというのは一般世間にはわかりにくい理屈だ。

 くじを買う方も「オレたちが買ったクジの売り上げが役人の給料に消えているんだ」と思うと、次からくじを買う気は起こらなくなるんじゃないかな。totoの販売開始前、旧文部省(現文部科学省)は調査の結果、初年度の売り上げ見通し2000億円と発表した。しかしフタを開けてみると、売り上げは予想額の3分の1以下。totoは最初からつまずいてしまった。

 つまずきの一番の原因は18歳以下の購入を禁じたことだ。「非行の温床になってはならない」という理由だったが、世界でtotoが非行の温床になっている国は一ヵ国もなかった。 にも関わらず“胴元”の「スポーツ振興センター」がPTAなどの批判を恐れて18歳以下を締め出したのは、所轄官庁が文部省(当時)だったせいだろう。

 つまり、文部省が中心となってtotoの内容を決め、売り出したこと自体がそもそもの間違いだったのだ。発表当初は「子供たちの目に触れないように」という理由で目抜き通りに販売所を設けることも制限した。こんなことをするから「どこで売っているのかわからない」「当たっても、どこで換金してもらえるのかわからない」と当初、聞こえてくるのは不満の声ばかりだった。

 断っておくが、私はtotoそのものに反対しているわけではない。この国のスポーツ振興のためにtotoは必要だと思っていたし、今でもそう思っている。しかし、センターがやってきたことはあまりにも一貫性がない。導入当初は「射幸心をあおる」という理由で当選金の上限をおさえていた。ところが売り上げが減少の一途をたどると、最高6億円の「BIG」を発売するありさまだ。

 周知のようにこれはコンピュータがランダムに指定するもので推理のおもしろみもへったくれもない。これこそ「博打(ばくち)」そのものではないか。totoのこれ以上の存続は公的資金、つまり我々の税金の投入を招きかねない。国民の理解を得られるだろうか。
 totoは廃止、センターは解散――これしかあるまい。「国民負担で償却」だけは御免被りたい。

(この原稿は07年5月11・18日合併号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものです)


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