吹き付ける突風、舞い上がる砂埃、それを防ぐものが何もない吹きさらしのグラウンド。そこで選手が夢中になって追いかけるボールはもちろん硬式球……の何倍もの大きさのサッカーボールです。
 我がチームでは昨年の冬からサッカーが大はやりです。
 コーチの練習前の確認事項は、必ずと言っていいほど「サッカーボール持ってきたか?」です。最近では、選手の車の中には常にサッカーボールが常備されています。サッカーボールを忘れたときなど「何してんだお前ら」と、ものすごく不機嫌になります。野球をしに来ているのに……。

 練習が終わった後、コーチの「普通のくつに履き替えて外野に来い!」の一声で、選手はまたグラウンドに飛び出しました。11人来ていた選手を、コーチを含め6人ずつの2チームに分け、次に飛んだ指示は、
「ベンチ持って来い!」
 備え付けのベンチを選手が担いで持ち出しました。ベンチをゴール位置の目印にしようというのです。大の大人がベンチを担ぎ出す姿はまるで盗人。とても悪いことをしているような気がしてきます。

 縦約80メートル、横はどこまでも使っていいという、お互いに体力を消耗するフィールドで20分ハーフの試合が始まりました。走る量は誰にも負けないけれどボールを横にしか動かせない選手、右ふくらはぎを削られ、「担架!」と大騒ぎしながら(担架なんてあるわけない)日頃の恩を仇で返さる選手もいたり、選手のプレーにクビをかしげるオシムもどきがいたりとやりたい放題でしたが、もしかしたら野球よりも楽しんでいるんじゃ……と思うくらいの選手のはしゃぎっぷりでした。
 あとから選手に聞いた、勝敗を分ける最大のポイントは、“FCさいたまのロナウジーニョ”もどきを取るか取らないかという極めて単純なことのようです。実際、ロナウジーニョもどきのいるチームが勝っていました。

 2月末にオープン予定のホームページでは、どこかに「FCさいたま」のページを忍ばせようと思案しているので、ホームページがオープンした際には、是非探してみて下さい!


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広瀬明佳(ひろせ・さやか)
福島県郡山市出身。母がソフトボール、兄が野球をやっていたことから中学・高校時代ソフトボール部に所属。大学時代軟式野球サークル。前職での仕事をきっかけに初めて硬式野球の道へ。現在、埼玉県内の硬式野球クラブチームに所属。チームの紅一点として奮闘中!

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