27日、福田康夫首相は道路特定財源を2009年度から一般財源化することを緊急発表しました。会見で総理は道路関連公益法人や道路整備に関する支出で徹底的にムダを排除する方針も示していました。さすがにガソリン税の暫定税率などの期限切れが目前に迫り、国民の怒りに目を向けざるを得なかったというところでしょう。野党の追及もボディブローのように効いたのだと思っています。
 先日、僕も予算委員会で質問の機会をいただくことができました。取り上げたのはJPO(財団法人駐車場整備推進機構)。国は道路特定財源から995億円をかけて国道の地下に空間をつくり、全国で14箇所の駐車場を整備しています。その管理・運営を委託しているのがJPOです。

 実は、そのひとつが地元・松山市の市役所地下にあります。ある土曜の午後、駐車場の利用状況を見に行ってみました。290台の駐車スペースに止まっていた車はたった10台。管理人の方が事務所でヒマそうに新聞を広げていました。

 こんなガラガラの駐車場でも平日は市役所の利用者が駐車するため、他の13箇所と比べて利用状況は悪くないそうです。利用料は30分で130円(市役所利用者は1時間無料)。30分100円のパーキングも街中にはありますから、決して安いとはいえません。もともと場所は国が保有している国道の地下。民間の駐車場のような土地代はかかりません。建設や運営コストを賄うためとはいえ、そもそも駐車料金が高すぎるのではないでしょうか。

 JPOには02〜06年の5年間で道路特定財源から総額26億6100万円もの大金がつぎこまれています。にもかかわらず、一般会計は赤字で、31億円もの債務を抱えているのです。なぜ、こんなにいい加減な運営ができてしまうのか。JPOの行っている事業を調べてみると、首を傾げたくなるものばかりでした。

 たとえば「ベストパーキング賞」の表彰。JPOはその目的を「駐車場あるいは駐車に関する国民の関心を高め、駐車場の質的向上及び交通円滑化につなげることを目的とし、駐車場及び駐車問題に関する活動を表彰する」とうたっています。第1回の最優秀賞に輝いたのは群馬県高崎市にある駐車場でした。受賞理由の1番にあげられているのは、「壮観な外観デザイン・ランドマーク的存在」だから。これを表彰することに、どんな意味があるでしょうか。

 ここまで3回、ベストパーキング賞の選考が行われ、応募数は第1回から122、88、43と激減しています。JPOが「どんどん募集してほしい」と各地の駐車場に呼びかけを行っているありさまです。過去3回にかかった費用は約1500万円。これだけのお金をつぎこむなら、もっと有効な使い道があったように感じます。

 さらにJPOは海外視察もしていました。あるときはベルギーやポルトガルなどヨーロッパ各地を巡り、かかった費用は1回の視察で391万円。海外の駐車場事情を見てまわって、運営面でどんな改善をしたのでしょう。他にも赤字が続くなか、役員報酬額の上限を引き上げるなど、一般の感覚では考えられない決定がなされていました。

 冬柴鐵三国土交通大臣は「4月末までにJPOを民営化する方向で結論を出す」と答弁しています。それでも、ここまで監督官庁である国交省がJPOの杜撰さを見逃してきたのはなぜか。それは“天下り先の確保”としか考えられません。現に全国14箇所の駐車場のうち、11箇所は国交省出身者がトップに座っています。

「暫定税率が廃止され、道路特定財源が一般財源化されれば、必要な道路がつくれなくなる」。そんな声を耳にします。しかし、道路特定財源はこれまで本当に必要な道路のために使われてきたのでしょうか。前々回でも触れたように、職員のレクレーション費や官舎の建設費など、その使い道には「?」がつくものも少なくありません。これでは、“道路不特定財源”です。

 確かに道路整備が必要な場所は全国にたくさんあります。しかし、今のムダ遣い体質を改めないまま、これまでと変わらない金額をつぎ込むことには反対です。暫定税率を撤廃すると2兆6000億円の減収になります。その中で整備を行うことが本当に不可能なのか。じっくり検証してみるべきでしょう。国民のみなさんは税金を支払った上で、日々の生活をやりくりしています。今度は国が知恵を絞る番です。そのアイデアや意見を出すために、僕たち国会議員は仕事をさせてもらっているのではないでしょうか。

 道路特定財源が一般財源化すれば、その地域の事情に応じた柔軟なお金の使い方が可能になります。あるところでは医療へ、またあるところでは教育へ――。もちろん今まで同様、道路へ、という選択肢もあるでしょう。国が使い道を限定するのではなく、各地域で住民の意見を聞いて予算を決める。これこそが地方分権の第一歩だと思います。

 子供たちのサッカーでは、レッドカードやイエローカードのほかに、グリーンカードというものがあります。フェアプレーやマナーのよい行動をみせた子供たちを褒めるために主審が出すカードです。政治の世界では、どうもレッドカードやイエローカードばかりを出しているような印象を受けます。ぜひ、いい政策に対しては、与野党問わずグリーンカードを出せるような実りある国会にしたいものです。そのために、僕もさまざまな提言をしていきます。

友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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※当HP編集長・二宮清純の携帯サイト「二宮清純.com」では友近議員の現役時代から随時、コラムを配信していました。こちらはサッカーの話題を中心に自らの思いを熱く綴ったスポーツコラムになっています。友近聡朗「Road to the Future」。あわせてお楽しみください。
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