決定力不足が指摘されるサッカー日本代表にとっては、喉から手が出るほど欲しい逸材だろう。J1リーグの昨季の得点王ジュニーニョ(川崎フロンターレ)が先頃、日本国籍を取得する意思を表明した。ジュニーニョの代理人によれば「すでに帰化に必要な書類を弁護士に提出している」とのこと。

 ストライカーとしてのジュニーニョの能力は傑出している。スピード、テクニック、シュートの精度のどれをとっても一級品。現在のJリーグにおける「最も危険なプレーヤー」といっていい。岡田武史代表監督も「(帰化の件は)昨年から聞いていた。僕としては、いろんな可能性が増えることはありがたい」と歓迎の意向を示している。

 FIFA(国際サッカー連盟)の規約ではユースからA代表まで、あらゆるカテゴリーの代表チームの公式戦に一度でも出場した選手は、仮に他国に帰化したとしても、その国の代表チームでプレーすることはできない。ジュニーニョの場合、過去にU‐20のブラジル代表メンバーに選ばれたことがあるが、親善試合だったため、これはクリアできる見通し。ブラジルから日本に帰化した例としては、古くはネルソン吉村、ラモス瑠偉、最近では三都主アレサンドロ、田中マルクス闘莉王などが知られている。

 誤解なきよう申し上げるが、私は外国人が日の丸を背負うための帰化を非とするものではない。ラモスらが果たした日本サッカーへの貢献は大変なものがある。日本のサッカーを語るうえで、とりわけブラジルからの帰化選手を抜きにすることはできない。

 しかし、いつまでも“帰化頼み”でいいのだろうか。確かにジュニーニョが加われば、一時的に代表の決定力不足は解消されるかもしれない。他国にとっては脅威だろう。だが、それではこの国のサッカーが抱える問題は永遠に改善されない。日本協会の代表に対する哲学が問われている。

(この原稿は『週刊ダイヤモンド』08年4月5日号に掲載されました)

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