通常国会が21日に閉幕し、現在は地元に戻って県内をまわる日々が続いています。ちょうど1年前も、選挙に向けて同じように愛媛を走りまわっていました。その時の気持ちを改めて思い出しています。
 議員に選んでいただいて、東京と愛媛を往復する生活を続けていると、ふるさとの現状がより見えてくることがあります。1番感じるのは、地方に元気がなくなっていること。街中を歩いてみるとわかりますが、都市部は人の多さはもちろん、街全体に活気があります。ところが地元に帰ると、どことなくみなさんの顔が暗く感じます。

 お話をうかがうと、若者から高齢者まで共通して言われることは「ガソリン代の高騰」。暫定税率の復活により、現在、県内のガソリン価格は170円台の後半(1リットルあたり)にまで上昇しています。地方で生活する人々にとって、自家用車は必需品です。愛媛では暫定税率がなくなれば、一世帯あたりで56,000円も負担が軽くなるとの試算があります。ただでさえ、原油高でガソリン代が高くなっている中、1リットルあたり25円の税金が家計を圧迫していることは間違いありません。

 原油高の影響は大事な産業である農林水産業にも打撃を与えています。愛媛といえばみかん。ところが、最近はハウスみかんを栽培する農家がどんどん少なくなっています。ハウス内の暖房に使う重油の価格があがり、どんなにみかんを育てても赤字になってしまうからです。

 漁業でも先日、イカ釣り漁船が全国で2日間の休漁を行ったように、一斉に漁を取りやめる事態が起こっています。「天気は晴れていても心は曇っている」。漁業関係者の方はそんなことも話していました。このように燃料費の高騰は逼迫した状況になっています。

 農業や漁業の窮状は日本人の食卓の変化ともリンクしています。外国産への依存度はますます高まり、日本の食料自給率(カロリーベース、平成18年度)はついに40%を割りました、海の幸、山の幸が豊富な愛媛県でも食料自給率は37%と全国平均を下回っています。地元で採れた農産物や魚を買わず、安い輸入品を購入する→地元産業は赤字になり、それが価格にはね返る→ますます輸入食材を購入する流れが強まる。この悪循環にはどこかで歯止めをかけなくてはいけません

 そこで大切なのは、“地産地消”という考え方です。近年、フードマイレージという概念が広まりつつあります。これは食材の輸送距離をあらわしたもので、日本は世界で群を抜いて数値が高いといわれています。現在、スーパーやレストランでは原材料名や産地を表記することは当たり前になってきました。それと並んで、このフードマイレージを明記することも“地産地消”の意識を高める1つの手段でしょう。この食材が手元に届くまで、どのくらいのコストと環境に負荷がかかっているかを知れば、国産品にもっと目を向ける人が増えるかもしれません。

 何より“地産地消”を最も実践できる場は学校給食です。平成17年度の時点で、全国の学校給食で地元の食材を使っている割合は22%(食材ベース)しかありません。文部科学省ではこれを平成22年度までに30%に引き上げることを目標としています。愛媛でも地元の食材を学校給食に取り入れようとの動きは活発になってきました。中山の栗を使った栗ごはん、魚は宇和島で捕れた養殖のタイ、つけ合わせのしいたけは内子産、デザートは吉田のみかん……。愛媛なら充分“地産地消”の学校給食が可能です。

 地元の食材を使うことで、給食費のアップは避けられないかもしれません。しかし、外国産と比べれば、国内産は安全性の保証があります。食事を通じて子どもたちに地場産業を理解してもらうことも大切な教育です。まさに文科省が進めている“食育”につながります。今年度、食育プランに使われる予算として4億5千万円が計上されていますが、そういった“地産地消”の給食を財政支援することも1つの施策でしょう。

「農林水産業はもうからないよ」
 農家や漁師の方からはそんな自虐的な言葉を耳にします。地方に行けば、離農した人たちの田畑が荒れ放題になっている光景も目にします。それでもビジネスとして、なんとか農業を成り立たせようと頑張っている人がいることもまた事実です。

 愛媛でも苗の生産販売で成功を収めている会社があります。無農薬で高品質の苗や接木によってオリジナルの苗を栽培し、売上実績は年間で1,900万本にのぼります。先日、会社を訪問させていただく機会がありましたが、若い社員が多いことにビックリしました。パソコンを駆使して生産管理を行ったり、ネット上で注文を受け付けたり、社内はまるでIT企業のようです。一方、隣接された作業場では、地元のおばさんたちが苗づくりに汗を流していました。

 この会社がなければ、若者が定着することも、地元の雇用が生まれることもなかったでしょう。農林水産業が元気になれば、地方も元気になる。その思いを改めて強くしました。各地で少しずつ始まっている新たな試みをいかに大きく育てていくか、ここで政治のサポートが問われるのだと思います。

 ドイツやイギリスなどをみると、かつて食料自給率は決して高くありませんでした。しかし、国がしっかりとした農業政策をとることで、現在では70%を超える高い水準に上昇しています。国土面積の問題もあり、欧米と同じやり方は難しいかもしれませんが、日本も政府が本気になれば、自給率はアップできるはずです。

 生活の基本は“衣食住”といわれますが、衣や住はなくなっても何とか生きることができます。でも、食だけは、なくなれば生きていくことができません。その意味で、第1次産業は“命の産業”です。今後、世界の人口はますます増加し、さらなる食料危機が予想されます。安全、安心な生活はまずは食の安定から。地方出身議員として、農林水産業の再生にも力を注いでいくつもりです。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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 当HP編集長・二宮清純の携帯サイト「二宮清純.com」では友近議員の現役時代から随時、コラムを配信していました。こちらはサッカーの話題を中心に自らの思いを熱く綴ったスポーツコラムになっています。友近聡朗「Road to the Future」。あわせてお楽しみください。
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