悲願の金メダルを目指す星野ジャパンが苦戦を強いられている。前半の4試合を終え、キューバ、韓国に敗れて2勝2敗。星野仙一監督は「最悪のライン」と現時点の成績を評した。最悪、あと1つ負けて4勝3敗でも決勝トーナメント進出の可能性はあるが、残り3戦は是が非でも勝たなくてはいけない試合になった。
 残り3試合、日本はカナダ、中国、米国と激突する。カナダはここまで1勝3敗とはいえ、敗れたのはキューバ、韓国、米国。しかもスコアはすべて1点差だ。一筋縄でいく相手ではない。地元の中国も、台湾を破る金星をあげた。米国も既に2敗しており、日本戦には必勝を期してMAX159キロの大学生右腕、ストラスバーグをぶつけてくる可能性もある。勝たなければならない戦いではあるが、勝てると保証できる戦いはひとつもない。

 日本代表の4試合を振り返って気になったのは、相手バッターとの勝負が基本的に外角中心となっていることだ。確かに国際大会の審判の傾向は一般的に外に広く、内に厳しい。パワーヒッターの多い世界の打者には外へボールを集めるほうがリスクは少ない。スコアラーの集めた詳細なデータに基づいてのリードであれば、それは間違いではないだろう。

 だが、この4試合をみると、意外と内角のコースをストライクにとってくれる球審は多い。むしろ、外角のきわどいコースをボールと判定されるケースが目立っている。16日の韓国戦では外角のボールを逆らわずにはじき返されたヒットが何本もあった。岩瀬仁紀が最終回に金賢洙に打たれた勝ち越しタイムリーがその典型だ。

 となれば、もう少し内角を有効的に使うことを考えてもいいのではないか。ちなみに4試合で日本投手陣が与えた死球は1つ。逆に日本の野手陣は5死球を受けている。誤解のないようにしておくが、これは相手にぶつけろと言っているわけではない。内角球は一歩、間違えば痛打をくらうもとにもなる。ただ、バッターの腰がひけるような内角のみせ球はあっていい。日本が誇るトップレベルの投手たちであれば、それが可能なはずだ。

 たとえば初勝利をあげた台湾戦、先発の涌井秀章のピッチングは参考になる。涌井は初回、1死2、3塁のピンチを迎えた。その際、台湾の主砲・陳金鋒を追い込んだのは内角のストレートだった。内を意識させた上で、最後は外のスライダーで空振り三振。続く林智勝も内にくいこむシュートで連続三振にしとめた。言うまでもなく、内角に意識がいけば、外のボールにも手が出にくくなる。もう後がない状況だけに、残り3試合、バッテリーには大胆な攻めを期待したい。

 過去のデータからいくと1次リーグの成績とメダルの色は比例しない。銀メダルを獲得した96年のアトランタ五輪、最初の4試合は1勝3敗と不振だった。そこから3連勝で巻き返し、準決勝は1次リーグでコールド負けを喫した米国を下した。五輪ではないが、2006年のWBCでも、日本は韓国に2度敗れ、2次リーグは1勝2敗。最強軍団の米国がコケてくれたおかげで日本は準決勝進出を決めた。そこから世界一の座を射止めたことは周知の通りだ。

 あくまでも星野ジャパンの目標は22日の準決勝、23日の決勝で2つ勝つこと。その2試合にチームのピークがくればいい。これは悲願達成への生みの苦しみである。そう考えたい。
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