本日、選抜高校野球大会の出場32校が決定いたしました。開幕は3月21日。それまでにどんなチームが出場するのか、どんな選手が期待できるのか、しっかりと勉強したいと思っています。
 野球シーズンの到来はもう少し待つとして、今は何といってもバスケットボールが旬です! 中でも今、最も話題となっているのが今シーズン、5年ぶりに日本のコートに復帰した田臥勇太選手です。バスケットを知らなくても、この名前に聞き覚えのある方もたくさんいらっしゃることでしょう。そう、彼こそが日本人初のNBAデビューを果たしたあの田臥選手です。

 彼がNBAのコートに立ったのは今から5年前の2004年11月3日。当時、フェニックス・サンズのPGとして第4Qの途中から出場した田臥選手は、なんと10分間で7得点をマークしたのです! いや、もうあの時は大興奮でした。しかも、田臥選手の身長は173センチ。それでもアメリカンフットボールと並んで日本人選手が不利だと言われているバスケットで世界最高峰の舞台に立つとは……。マイケル・ジョーダンが「世界のバスケ界の神様」なら田臥選手は「日本バスケの神様」と言ってもいいのではないかと個人的には思っています。

 実は先日、その田臥選手を編集長がインタビューしたのですが、光栄にも私も同行させていただきました。イメージ通り……いえ、イメージ以上の“好青年”。真摯な対応にもバスケへの情熱にも、改めて惚れ惚れとしてしまいました(インタビューの内容は2月20日発売『ビッグコミックオリジナル』に掲載されますので、どうぞお楽しみに!)。

 さて、インタビューが終わり、午後からはカメラマンと一緒に練習風景の撮影を行ないました。準備運動が終わり、すぐに練習開始。小学、中学とバスケットを少々かじっていた私は、プロとはどんな練習をしているのか、非常に興味津々でした。ところが、意外にもメニューは中学時代、私がやっていたこととほぼ同じだったのです(もちろん、スピードや精度、フォーメーションの複雑さなどは天と地の差があったのですが)。

「同じことやっているのに、どうしてこんなに差が開くものなんだろう……」
そんなことを思いながら、最初は田臥選手のキレのいい動きなどに驚嘆していた私。ところが、そのうちどんどん息苦しくなってくるではありませんか!
「この体育館は空気が薄いのだろうか……」

 しかし、理由はそうではありませんでした。私は練習を見ているうちに、勝手に中学時代に半ばタイムスリップしていたのです。選手たちの激しい息遣いや苦しい表情を見ていて、むかぁしむかしに同じことをやっていた(何度も言いますが、もちろんレベルは違います)自分と重なり、まるで自分がやっているかのような気持ちになっていたのであります。

 今思い出しても、バスケ部の練習はきつかったです。最もみんなが恐れていたのは3人でドリブルなしでパスでつなぎながらオールコートを走り、シュートしてまたパスをしながら戻ってシュートする「スリーメン」や、3人がクロスしながらパスを出してシュートし、また返ってくる「クリスクロスパス」。このきつさ、バスケット部出身の方なら、理解していただけると思うのですが……。

 小さな村の女子バスケ部は私たちの学年こそ7人いたものの、他は3〜4人。3学年あわせても全員で15人ほどだというのに、学校行事や病欠で練習に出られない子がいたりすると、そりゃもう地獄。すぐに順番が回ってくるのです。

 しかも、それを練習の最後にやるというのですから、きついのなんのって、もう言葉には言い表すことはできません。疲れて両手をヒザに置いて中腰になることも許されず、何度ぶっ倒れそうになったことか。加えて目標の回数に到達するまで一度たりともシュートを外してはいけないのです。一度でも外すと、またゼロからのスタート。

 あぁ〜、思い出しただけでも息が苦しくなってきます! 今では、終電に乗り遅れそうになり、徒歩10分の駅までダッシュ(3度ほど休憩の歩きを入れますが)しただけで、駅に着いた頃には心臓が痛くなるほどしんどいというのに……。当時はいくらきついとわかっていても、朝から授業そっちのけで部活のことを考えていたくらい熱中していました。若さって本当に恐ろしいです、はい。

 さて余談が長くなってしまいましたが、肝心の田臥選手の話に戻らせていただきます。彼はやっぱりすごかったです。インタビューでは「騒ぐのは苦手」と言っていた田臥選手ですが、やはりバスケットになると、情熱が体全体からみなぎっていました。日本のチームであれだけ身長差があるのですから、2メートル以上の大男がゴロゴロいるNBAではもっと際立っていたのでしょう。改めて田臥選手のすごさを実感いたしました。

 全体練習後、個人のシュート練習に入ると、ほとんどの選手がスリーポイントを練習する中、田臥選手は一人、黙々とフリースローの練習をしていました。当然ですが、フリースローは1点しか入りません。しかし、その1点がどれだけ重みがあるものなのか、これまでの経験で身を持って知っているのでしょうね。そんなことを思いながら、田臥選手の偉大さを感じずにはいられませんでした。

(H.S)
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